@globalhibakusha ニューヨーク・タイムズ「汚染され、忘れられた太平洋の島」~米軍核戦略がエニウエトク環礁の小島に置き去りにしたコンクリート製ドーム
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— inoue toshio 子どもを守れ! (@yuima21c) 2014, 12月 27
The International New York Times |
The Opinion Pages[オピニオン] 特集寄稿記事
放射能で汚染され、忘れられた太平洋の島
マイクル・B・ジェラード MICHAEL B. GERRARD 2014年12月3日
マーシャル諸島エニウエトク環礁の放射能汚染土壌を覆うコンクリート製ドーム。Credit: James P. Blair/National Geographic, via Getty Images |
凡例:(原注)、[訳注]
米国が1946年から1958年のあいだに67回の核兵器実験を実施したマーシャル諸島エニウエトク環礁に飛ぶ定期便はない。わたしが、海水面上昇がマーシャル諸島におよぼす危険を調査するため、2010年に初めて首都のマジュロを訪問したさい、学校を贈呈するためにエニウエトクに飛ぶ高官たちの特別便になんとか搭乗した。そこから小さなボートに乗り、世界がすっかり忘れてしまった核廃棄物処分場を訪問した。
マーシャル諸島は海水面からほんの6フィート[約1.8メートル]の高さしかない。マーシャル諸島、その他の島嶼諸国の存続が、今週、国連気候変動会議出席のためにペルーのリマに集まった代表たちの念頭にあった。
この場所の不運は群を抜いている。まず第二次世界大戦後に実施された核実験による放射能で荒らされ、いま、上昇する海水面に飲み込まれる危機に見舞われている。
ボートがルニットという名の小島に着くと、わたしたちは跳びおり、細いビーチを横切って、なにかの低木の藪を突っ切って歩いた。前方に直径350フィート[100メートル]ほどのコンクリート製ドームが現れた。標識、フェンス、警備員は見かけない。わたしのガイドはドームのゆるい斜面を登り、天辺に立った。わたしは衝動的に彼を追って登った。ガイガーカウンタを持ってくればよかったと思った。
米国は、ハワイとオーストラリアの中ほどに連なる島々、とりわけビキニとエニウエトクの環礁を核実験に使った。どちらもサンゴ礁が途切れ途切れにラグーン[礁湖]を取り巻く環であり、太古の火山の名残である。米国は1970年代にこの国の独立を承諾することを考慮し、やがてそれが実現したが、核実験が残した混乱をどうすべきか考えていた。
ビキニは放射線レベルが高く、移動させられた住民の帰還を許可することは望み薄だった。だが、米軍は、エニウエトクの少なくとも一部の土地を居住可能にするための除染方法を研究した。国防総省は、セシウム137とストロンチウム90で汚染された土壌があまりにも大量に存在するので、もっとも安全な対処法は、放置して、自然減衰に任せることであると結論づけた。どちらの核種も、半減期が約30年である。
だが、炸裂のもうひとつの置き土産がプルトニウム239であり、こちらの半減期は24,000年だ。適正な状態のプルトニウムが必要量あれば、爆弾ができる。これこそは、米国が1億5000万ドル[約180億円]を費やして2012年に完了した事業に参加した理由であり、これで、カザフスタンの旧ソ連時代の核実験場のプルトニウムを保全し、浄化したのである。
米国はエニウエトクで、プルトニウムを含有する土壌を可能なかぎり集め、広島の上空で炸裂した原爆とほぼ同規模の1958年の核爆発で形成されたルニック島の深さ33フィート[10メートル]のクレーターにそれを投棄すると決定した。
作業班は汚染土壌に加えて、1発の爆弾が不発に終わったときの落し物であるプルトニウムの断片を地表から拾い上げ、437枚のプラスチック袋に詰めた。この袋もクレーター行きになり、その後、18インチ[約45センチ]厚のコンクリートで蓋をした。残った放射性廃棄物のほとんどは、プルトニウムの量が手間をかけるには少なすぎて、環境保護局やエニウエトクの避難民の反対を押し切って、ラグーンのなかへブルドーザで押し出して投棄した。アメリカの当局者らはまた、米国内の同じような浄化作業で許されるレベルより遥かに高い線量レベルの放射能を土地に残す方を選んだ。
浄化は1980年に完了し、1946年に爆弾に場所を譲るために追い出されたエニウエトク島民の一部が帰還を許された。だが、環礁の約半分がいまだに居住不可能であり、その残りの大半は作物を育てる地力を失っている。スパム缶[Canned
Spam=ランチョンミートのブランド名]が主食になった。
長期耐用は、ルニット・ドームの設計基準になかった(連邦政府は最近まで、ネヴァダ州のユッカ・マウンテンで少なくとも100万年の安全を考えた使用済み核燃料の深地下埋設処分施設を計画していたが、これとは大違い)。ドームはじっさい、家庭ごみ処分場の米国基準に適合しない。
連邦政府機関、米国学術研究会議の作業部会は1982年、ドームが激しい台風で破損する恐れがあると警告した。だが、エネルギー省が資金を出した2013年の報告は、心配する理由がないとみなした。「コンクリート製ドームが破局的に破壊され、内容物のすべてが瞬時にラグーンに放出されても、地元住民集団が受ける放射線量に有意な変化が生じることには必ずしもならない」とその報告はいう。
その理由とは、報告書によれば、ドーム内の放射能がラグーン堆積物内のそれに比べれば「矮小化」される。したがって、ドームから漏れ出しても、外側のほうが内側より汚いので、脅威が加わることはない。南シナ海で最近見つかったプルトニウム同位体は、2,800マイル[4,500キロ]かなたのマーシャル諸島が出処であると突きとめられた。
昨年の点検によって、ドームが劣化していると判明し、放射性の地下水は潮の満ち干きによって上がり下がりしている。嵐で砂がドームのうえに流される。裂け目に蔓草が育つ。
現状のままであれば、ルニット・ドームは海水面上昇で水没するか、嵐でバラバラに壊れそうであり、放射性の毒物を海に放出し、われらの先進文明がこの小さな島嶼国に置き去りにした遺産をなおひどいものにするだろう。
【筆者】
マイクル・ジェラードMichael B. Gerrardは、コロンビア大学法学院、セービン気候変動法規センターの所長であり、グレゴリー・E・ワニアーとの共著に“Threatened Island Nations: Legal Implications
of Rising Seas and a Changing Climate”[『脅威にさらされた島嶼諸国~海水面上昇と気候変動の法的意味付け』]。
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この特集記事の紙面版は2014年12月4日付けニューヨーク版p.A31に“A Pacific Isle, Radioactive and Forgotten”の見出しで掲載。
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