2014年12月4日木曜日

【海外ニュース】ギリシャのイスラエル製ドローン購入計画に道徳上のジレンマ

ギリシャのイスラエル製ドローン購入計画に道徳上のジレンマ
ギリシャ警察は国境線を監視し、全国の警察力を増強するために、イスラエルから無人航空機を導入することに熱心だが、ガザや他の場所における戦闘状況で試験されたと考えて、ほぼ間違いのない技術が関わっているという道徳上の疑問がある

2009211日早朝、アフガニスタンのカンダハル空港で発進を控えたヘロンUAV型機。Pierre Gazzola / Flickr
アポストリアス・フォティアディス Apostolis Fotiadis
20141126
3日のイスラエルを訪問するヴァシリス・キキリアス公安相の最重要協議事項は、ギリシャ警察が無人航空機(UAV)、別称ドローンを購入する件になるだろう。
1130日付けヴィマ紙記事によれば、政府はキキリアスのUAVネットワーク構築計画の詳細を詰めているが、その詳細と進展具合を明かしていない。この新たな装備は、国境線を監視し、国内の――テロや重要犯罪に関連する――対象を見張るために使われる。
しかし、反テロ法令の解釈見直しといった陳腐な手法は――ギリシャでも他のヨーロッパ諸国の多くでも――これらの航空機が配備されると、監視対象になるのは誰であり、何人になるのかという疑問を招くことになる。ドローンが2015年中に納入されるのは、ほぼ確実である。
現在の公安大臣がキキリアスであることから、ドローン購入は「キキリアス計画」と呼ばれるようになった。ギリシャ警察のドローン購入案は彼の就任よりずっと前、20111017日から21日にかけてアクティオ空港で欧州対外国境管理協力機関(Frontex)が開催したドローン実演会のさいに浮上している。
実演会に参加した企業(イスラエル航空産業、ロッキード・マーティン、FASTプロテクトAGL-3 コミュニケーションズ、FLIAシステムズ、SCOTTYグループ・オーストリア、ダイアモンド・エアボーン・センシング、国際海事衛星機構、タレス・グループ、エアロヴィジョン、エアロヴァイロンメント、アルタス、ブルーバード)の輸送費、それに購入見込み客であるギリシャや他のヨーロッパ諸国警察の役人に対するプレゼンの費用を欧州機関が肩代わりしていたことが、後に新聞報道で暴露されると、実に大騒ぎになった。
Frontexはその時、参加企業に€10,000ないし€198,000の展示会参加費が支払われたと明かした。Frontex高官らは、安全保障分野の研究開発を促進する動きのなかで経費が肩代わりされたのであり、展示品の販売促進には何も悪いことはないと見ていた。この問題に関して、欧州委員会も同じ立場であることを示した。
アクティオではイスラエル企業は2社、それぞれの航空機を展示した。イスラエル航空産業(IAI)のヘロン型、イスラエル企業「ブルーバード」とギリシャ企業「アルタスLSA」が共同開発した「スパイライト」である。
·カシメリニ紙によれば、ギリシャ当局がドローン調達に関心を示したのは、この時が初めてである。同紙の記事は、展示会が(実際の10月でなく)20122月に開かれたと伝える。たぶんプレゼン参加に関するIAIのプレスリリースのアップロードが遅くなったせいだろう。同紙は、「無人機調達案が企画されたのは、インディグナドス(怒れる者)がシンタグマ広場に集まった時期」――つまり展示会の数か月前――のことだったという。
このイ·カシメリニ紙記事によれば、ギリシャ警察はIAIヘロン型――離着陸に滑走路を使う大型機――に関心があるようだが、ト・ヴィマ紙が報じたモデル(型式名不詳)は「全長1から4メートル、飛行半径30ないし300キロ、時速キロ以上、偵察照度1キロルーメン以上、基地局と特製離陸装置と共に運搬可能」というものである。
この仕様は、ブルーバードのスパイライト型、そして2種類のミニUABブルーバード・モデルの仕様と(同じではないが)よく似ている。ト・ヴィマ紙記事には、アルタスLSAが生産に参加している「空中標的」モデルが発射台から離陸する様子の写真も付されている。同紙オンライン・サイトに数枚の写真が掲載されている空中標的は、地対空および空対空攻撃システムの試験で使用されるが、このシステムは「無人航空機」ではない。
EU文書によれば、アルタスLSAはギリシャ警察の無人航空機導入計画の提携先としても登場する。ギリシャ国会会期中の今年428日と29日、ヨーロッパ法執行技術サービス・ネットワーク(ENLETS)の会合がアテネで開かれた。会議の議事録に、「ENLETS参加者らはギリシャ警察とアルタスLSAによる『国境線監視のための無人航空機の試験プログラム』に関するプレゼンを受けた」とはっきり記されている。
今のところ、機密指定と記されているこのプログラムの存在について、公式説明やメディア報道はない。ギリシャ政府がイスラエル企業からドローンを購入することは、ガザ攻撃作戦で何度も繰り返し試験された技術を用いる装備を獲得するリスクを帯びる。
ギリシャ警察当局者らに提出された説明書2点がこのリスクを提示している。爆撃機として設計されたヘロン改良型、ヘロンTPは、領域内の作戦で一役を担っていた。ブルーバード社製のミニUAVも同様に、同社によれば、すべて「戦闘証明済み」の技術が装備されている。研究者、デイヴィッド・クローニン(David Cronin)によれば、これは、企業が自社の装備品がイスラエル軍のモニタリングおよび爆撃作戦で使われたことを示す表記なのだ。
国連、アムネスティ・インターナショナル、その他の組織の一群が、ガザにおける作戦が戦争犯罪を構成しうると告発したり、もしくは警告したりしていた。ギリシャ政府だけでなく、ヨーロッパの当局者らも同様に道徳問題を関知していない。
プロジェクト完遂に何千万ユーロものコストを要するが、同様な計画に14億ユーロを割り当ててきた新設のヨーロッパ安全保障基金によって共同出資される。EUの境界線の監視は戦略目標であり、EU加盟諸国と共同で推進されている。
【筆者】

アポストリアス・フォティアディスは、ジャーナリストで独立研究者。ヨーロッパ移民政策の軍事化に関する彼の最初の著作は近刊の予定。

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