国家権力による弾圧に対しては、 犠牲者の思想的信条、 政治的見解の如何を問わず、 これを救援する。
二〇一一年三月一一日の東日本大震災五周年を控えて、海外メディアのフクシマ五周年企画記事がネットを賑わしている。筆者が二月下旬に日本語訳して、ブログにフクシマ五周年シリーズとして掲載した記事だけでも、ヴォイス・オブ・アメリカ「問題山積のフクシマ」、サイエンティフィック・アメリカン誌「五年目のフクシマ、いまも放射能漏れ」、エコロジスト誌「馬鹿に付ける薬はない~騙されっぱなしの日本国民」、グリーンピース・インターナショナル「五年後のフクシマ危機は収束からほど遠い」、カウンターパンチ誌「フクシマ5周年目の末期的な危機」と目白押しである。
翻って、肝心の日本ではどうだろうか?
内閣は三月一日午後二時四〇分、東京の国立劇場に天皇・皇后の臨席を仰ぎ、各会代表を招いて、東日本大震災五周年追悼式を開催するという。「国民の皆様へ」と標題された安倍晋三内閣総理大臣の談話は「この震災により犠牲となられた全ての方々に対し哀悼の意を表すべく、追悼式当日の午後二時四六分を期して式場において一分間の黙とうを捧げ、御冥福をお祈りすることとしております。国民の皆様におかれましても、これに合わせて、それぞれの場所において黙とうを捧げられますよう、お願いいたします」と呼びかけるが、東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故とその犠牲者や被害者には一言も触れていない。
東京オリンピック大会を四年後に控えて、安倍内閣はフクシマ核惨事を一切無視するつもりなのだろう。遠藤利明オリンピック担当大臣は昨年七月、日本記者クラブの記者会見で東京五輪・パラリンピックの選手村で使う食材に福島県産品を導入したいとの考えを表明している。パンツ窃盗事件で世を騒がしている高木毅大臣が率いる復興庁は、浪江町が請戸漁港に整備する水産業共同利用施設の工事費一億七〇〇〇万円、南相馬市新田川の鮭孵化施設の復旧整備事業に三〇〇〇万円の予算を割り当てた。
そして、核事故被曝心地の福島県では二月一五日、福島市内のホテルで第二二回「県民健康調査」検討委員会[参照:OurPlanetTV.org]が開かれた。焦点は、もちろん原発事故時に一八歳以下だった県内の子どもたちの甲状腺検査データ。
二〇一三年に終了した一巡目の先行調査で受診した三〇万人あまりのうち、穿刺細胞診で一一六人が甲状腺癌またはその疑い例と診断され、そのうち一〇〇人が手術で確定し、一人が良性腫瘍と判断された。
二〇一四年にはじまった二巡目の本格調査では、昨年一二月までに受診した二四万人足らずのうち、五一人が悪性または疑い例と診断され、手術で一六人の甲状腺癌が確定した。一巡目と二巡目を合わせた現在の悪性または疑い例は一六六人、そのうち手術による確定例は一一六人になった。
検討委員会が以上のデータを受けて、小児甲状腺癌の発症数が通常より「数十倍のオーダーで多い」とする中間とりまとめを了承したものの、星北斗座長は相変わらず、これは高精度の超音波装置を用いて一斉検査したスクリーニング効果の結果であり、「放射線の影響とは考えにくい」とする結論を繰り返した。しかし、二巡目で悪性またはその疑い例とされた五一人のうち、二五人が一巡目でまったく所見のないA1と判定されており、これでは、「高精度の検査」というものの、高率で見落とされていたことになる。
検討委員会が会を重ねるごとに、矛盾のほころびが大きくなる。今回の会合では、清水一雄教授、高村昇教授、放医研の明石真言理事、放影研の児玉和紀教授など、主だった「有識者」らが軒並みに欠席していた。福島県立医科大学の非常勤副学長、山下俊一、同大学県民健康センター甲状腺検査責任者、鈴木眞一両教授は、姿を消して久しい。
山下、鈴木両氏は国内で沈黙しているが、一月に相次いでロンドンの「臨床腫瘍学誌」で論文を発表し、山下氏は「心理学的影響が重大」、鈴木氏は「事故の影響とは考えにくい」と唱えている。山下氏はまた、福島県立医科大学の内部組織「甲状腺検査専門委員会」の座長を務めており、この秘密会が福島の子どもたちの甲状腺手術例を実質的に検討する場になっている。
フクシマ五周年目の光景…それは世界の目に「騙されっぱなしの日本国民」と映ってもおかしくない茶番の舞台である。
(井上利男:#原発いらない金曜日!JR郡山駅西口ひろばフリートーク集会世話人。ブログ「原子力発電・原爆の子」、ツイッター@yuima21c)
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