2016年5月3日火曜日

フォーブス誌【海外論調】#フクシマ☢#トリチウム:問題を解決するには? 飲んで見せることだ


201651

フクシマのトリチウム問題を解決するには?
飲んで見せることだ

寄稿:ジョン・ボイド John Boyd, CONTRIBUTOR

自己紹介
わたしは数十年来、日本で独立ジャーナリストの仕事をし、いくつかの出版物に寄稿している。電気・電子工学研究所(IEEE)スペクトラム誌を贔屓にしていて、日本、その他の国の科学技術ニュースやイベントを報道している。また、アルジャジーラ英語版オンラインのニュース配信サービスに――捕鯨問題から原子力問題、ビジネス動向を網羅する――特集記事を寄稿している。それにわたしの最初の小説、“Killing Time in Tokyo”[東京の暇つぶし]という標題のサスペンス・スリラーを書き上げたばかりであり、これは間もなくアマゾンのキンドル版で配信される予定である。執筆以外に、ハイキング、読書、飲食、根付コレクション、チェスとリスクで楽しんでいる。長年にわたり、東京の日本外国特派員協会の会員であり、横浜のサンモール・インターナショナル・スクールの理事である。

筆者はフォーブス寄稿者。本稿に表明された見解は筆者に帰属する。

  福島第一核発電所の構内にびっしり並ぶ貯水タンク。Source: Getty.

日本政府、そして福島第一核発電所を運営する東京電力株式会社に迫っている、ちょっとした――あるいはむしろ、ちっぽけな――問題がある。

1,100基を超える大型の鋼鉄製タンクが――トリチウムという低汚染性物質を除いて――濾過済みの水を溢れそうなほど湛えて、施設の構内と敷地外の拡張地を塞いで立ち並んでいる。

その水は、施設の基礎部に流入する大量の地下水、そして溶融したウラニウムの炉心を低温に保つために3基の損傷した反応炉に注入されて、放射性になった大量の汚染水が混ざり合ったものである。この死を招く液体混合物は、基礎部からあふれて、海にこぼれる前にポンプで汲み上げられ、除染されたものであり、その一部が冷却材として再利用されて、反応炉に注入され、残りは貯蔵タンクにポンプで送りこまれる。

この作業は、日々刻々、年々歳々、繰り返されるのであり、これは、末日のシーシュポス、東京電力に神仏が課した抜け目なくも相応しい罰である。その結果、1週間か2週間ごとに、新たに処理済みの水で満杯になったタンクが、まるで異星人世界のキノコの茂みのような、区域を覆っている鋼鉄の森に加わるのである。保管された水の総量は800,000トンを超えており、なおも容赦なく100万トン、あるいはそれ以上の量に向かっていて、終わりは見えない。

その経費は巨額であり、勘定書を摘み上げるのは納税者であり――政府による救済措置を受けて、破産を免れ、10年間の再建過程の途上にある東京電力ではない。

そこで、政府にのしかかる100万トンあまりのジレンマが煮詰まって、選択肢が、①終りが見えず、高額の経費がかかる貯蔵タンクの建造をつづける、②水からトリチウムを除去する方法を見つける、③東京電力に水の海洋放出(投棄)を支持するという三案の選択肢に絞られることになる。

第三案は、その水がトリチウム水になっており、つまり放射性の水になってはいるが、最も簡単であり、最も安上がりな方法である。

背景も考えず、日光浴やバナナを食べることが、楽しく放射能被曝をしている無為な時間でことを思い出すまでは、これは恐ろしい話である。要点をいえば、トリチウムが放射するエネルギーは低くて、線量計で測定できないほどである。トリチウムが発射する(放射線ではなく)粒子は――日本の原子力規制庁の田中俊一委員長が最近、記者会見で述べたように――包装用プラスチックで止めることができる。

投棄処理に反対する環境派は、それは事実だが、肝要な点ではないという。トリチウムの摂取が健康上の懸念事項なのだと彼らは論じる。そして、彼らには、たいがい理論的なものにとどまっているものの、そのような懸念を裏づける専門知識がある。その一方、論争の相手側にも、そのような懸念を嘲笑う専門知識があり、理論を裏付ける確かな証拠を見せてほしいという。

結論をいえば、原子力賛成派には、トリチウムによる健康リスクを最小化する傾向があり、原子力反対派には、そのリスクを誇張していう傾向がある。

論争の俎上に載せられていないものは、その水の海洋放出が、日本に隣接する諸国、日本の東北地方の被災者、地域の漁業、日本の選挙民に与えるネガティヴな心理的影響である。

グリーンピースなどの団体は、そのような懸念と不確実性に鑑み、慎重を期して安全側に立つよう、政府に求めている。グリーンピースは、最善の選択肢は水の保管を継続し、トリチウムを分離するために、あらゆる技術的可能性を探究することだという。

額面どおりに受け取れば、これには理があるように思える。ところが、東京電力の助言役を務める核産業コンサルタント、レイク・バレット氏は、トリチウムの分離方法を創案することは可能かもしれないが、大いに尽力したにもかかわらず、まだ見つかっておらず、いずれにしても、そのような技術の開発と完成には、20億ドルの経費がかかりそうであるという。東京電力と政府が同一の結論に達したのは、驚くことではない。バレット氏は筆者に次のようにいった――

「その金がそっくり、学校や病院、もっとましな使いみちがあるのです。それに、タンクを延々と造りつづきけることはできません」

おまけに、彼はこう付け加えた――

「保管されている水に含まれるトリチウムはレベルが非常に低いので、有意な健康リスクになりません。放射能レベルが、控えめな日本の健康リスク許容限度の範囲内であると認証されるなら、わたしは尻込みせずに、その水を飲み、その水で風呂浴びし、その水で育った魚や貝を食べるでしょう」

さて、一案がある。政府が、選挙民の大部分を反対に回らせないようにしながら、トリチウム水を海洋に排出するとすれば、そうしても、理に適って安全であると国民の過半数を納得させる必要がある。これには、注意深く考えぬかれた手順がいくつか必要になるだろう。

政府は、そのような措置の便益と弊害、決定の理由をわかりやすく説明しなければならないだろう。漁業者に対して排水後にこうむる減収を賠償するメカニズムを確立しなければならない。トリチウム水のレベルが国際的に許容される排水基準を確かに下回っていることを検証するために、ヒステリックでない部類の環境保護主義者を含む、有識者を集めた独立の国際パネルが必要である。パネルの委員たちが好きなときに排水措置を監視できるようにしなければならない。

また、最後のとどめとして、安倍首相、内閣の閣僚たち、東京電力の役員たちが連れ立って、福島第一現場を訪問し、巨大なタンクの前に立ち並んで、各人が一杯ずつのトリチウム水を飲んで見せるべきである。もちろん、これで惑わされる人なんていないが、このような異論の多い決定を下すさいに求められる最低限の道徳的権威を政府に付与するだろう。

【クレジット】

Forbs, “How Can Japan Settle The Issue Of Fukushima Daiichi Tritium? Drink It,” by John Boyd, posted on May 1, 2016 at;

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