2018年9月24日月曜日

ロシア・インサイダー【海外論調】東方経済フォーラムで間抜けを演じた安倍晋三首相

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実情検分メディア『ロシア・インサイダー

ロシアの東方経済フォーラムで途方もない間抜けを演じた安倍首相

それにしても、彼の対ロシア政策の全体がジョークであり、ロシアの非常にリアルな懸念――日本がロシアに敵対的なアメリカ合衆国の軍事衛星国であること――を無視して、千島列島と引き換えにちっぽけな経済投資の見通しをちらつかせている

凡例:(原注)、[訳注]。太字は、ロシア・インサイダー編集者による。

ギルバート・ドクトロウ Gilbert Doctorow 2018年9月15日
[訳注]ギルバート・ドクトロウは、1967年にハーバード大学(Magna cum laude)を卒業し、博士号を取得。 1975年にコロンビア大学から歴史学優等学位を授与。ドクトロウは研究を終えた後、ソ連と東ヨーロッパに焦点を当てたビジネスキャリアを追求。25年間、米国および欧州の多国籍企業で、マーケティングに携わり、地域の管理責任者として従事。出処:大摩邇(おおまに)ブログ「アメリカを救うために、ネオコンと戦争屋をホワイトハウスから粛清せよ VeteransToday

第4回東方経済フォーラムの全体会議が912日水曜日に開催され、ホスト国のウラジミール・プーチンと北東アジア諸国を率いるお歴々が重要な演説をおこなったが、世界の報道界には半可通の注目を集めただけであり、経済、地政学、防衛の分野の分析に供されるべき数多くの材料のうち、わずかな要素だけが強調される始末だった。

ウラジミール・プーチンが演説でスクリパル神経毒物事件に言及し、英国のテレサ・メイ首相が1週間前に軍参謀本部情報総局(GRU)の工作員と名指したロシア人容疑者らはすでに出頭しており、彼らはごく普通の一般市民であって、犯罪者でないと言明し、用意周到だが、疑問符のつく彼の評言を一部の筋は真に受けた。ソ連の時代からこのかた空前の規模で、フォーラム開催都市から近いロシア極東部で実施され、最初の例として中国軍とモンゴル軍の部隊が参加したヴォストーク(東方)18軍事演習に注目する向きもいた。ロシアがいう参加戦力の数(戦闘員300,000人、航空戦力1,000機、戦車・装甲兵員輸送車36,000両)が誇張されているかどうか、また演習が緊急事態のスケジュールに沿って7,000キロにわたる連邦版図に戦力を展開するロシア軍の能力を真に実証したのかどうかについて、アナリストらに議論の余地はあった。非常に少数のメディア、例えば英紙フィナンシャル・タイムズは、自国のメリットに沿ったフォーラムの経済的意義に注目した。同紙は、ロシア極東部およびロシア連邦全般において中国が進めている投資の背後に潜むリスクを計算する記事を公開した。

筆者の知るかぎり、北東アジアの指導者たち相互間のダイナミクス[拮抗する力関係の動態]を検証した主流メディアはなかった。

フォーラムの公式開幕の前日、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、主賓格、中国の習近平主席と二者会談をおこなった。彼はまた、日本の安倍晋三首相とも会談した。どちらのケースでも、会談後に長文の報道用声明が発行され、それは内容が充実し、時宜にかなったものだった。

さらにもっと興味深かったのは、5か国指導者たちが全体会議の演壇に登場したことだった。ロシア、中国、モンゴルの大統領や主席、日本と韓国の首相が一堂に介して、互いに演説を拝聴し、質問に応じるのを目の当たりにする稀な機会になった。

司会は、ロシアの経済的および政治的のフォーラムの最近の伝統を裏切って、遠慮がちであるか、あるいはクレムリンの権威主義者に楯突くことで欧米の視聴者を面白がらせる意地悪な質問をぶつけるNBCネットワークやブルームバーグの関係者ではなく、ロシアで最高に有能であり、最高の視聴率を稼ぐテレビ・ジャーナリストのひとり、セルゲイ・ブリリョフ(ロシア1)が務めたので、なおさらのこと、質問は時宜にかなうものだった。彼の質問は事前にクレムリンと調整されていたようであり、そのような形式のものとしては、これまでに見てきたものよりも調査が行き届き、真相を明かすものだった。

筆者は以下の文章で、フォーラムの進行のなかで、筆者の同業者の注目から抜け落ちているとおぼしき非常に重要で明白な話題、すなわち安倍晋三と北東アジア領域における日本の政治的位置づけについて、諸国指導者たちの発言と公開の会合がわれわれに告げることに関心を向けることにする。

ロシアの国営テレビ局が、全体会議の演説、フォーラム開催に先立つ二国間会談のあとのウラジミール・プーチンと彼の賓客の記者会見の完全ライブ映像、その他、フォーラム内外の重要なできごとをコメントも付けずに放映して、世界の視聴者に提供したので、筆者は壁にとまったハエのように特権的な見物席の利点を生かして、筆を進める。北米にいる同業者は時差の関係で熟睡していたかも知れないが、当地ヨーロッパでは、極東から放映されるロシアの放送は、朝食時間、またはそれ以後に届いたので、興味を掻き立てる映像やスピーチに活き活きした頭で向き合うことができた。

先ず、指摘しなければならないのは、安倍首相は場違いな人物だったということ…。彼は全体会議の演説を主として、現世代のうちに、彼とウラジミール・プーチンの政権在任中にロシアと平和協定を締結したいと嘆願するために使った。それとは対照的に、他の諸外国指導者たちは皆が皆、ロシアと極東地域において進行中または計画中の大規模な投資活動について活き活きと語った。安倍には諸外国の対ロシア協力に匹敵するものがほとんどなく、その代り、ヴィデオを上映して、ロシアにおける日本の取るに足りない尽力に人間の顔を貼り付けることで埋め合わせをしようとしていた。そのヴィデオは、2年前に二国間関係を新たな水準に導くために安倍が提案し、ロシアが受け入れた150案件の事業のうち、日本がロシアで実施中のさまざまな保健関連と技術関連の事業(交通管理、ゴミ処理)のあらましを短く紹介するものだった。

日本の事業はすべて安上がりである。すべて見た目にまったく控えめであり、ロシアが日本政府の言いなりに平和条約に署名しさえすれば、人民の暮らしを改善するために、日本がロシアに授けることのできる大規模な援助を示唆するものであり、つまり、南千島列島を日本の主権下に返還する条約に署名するだけでよいというのだ。

日本の対ロシア協力事業のヴィデオと謳い文句の効果は、安倍が意図していたらしい効果と完全に逆だった。だが、今日のロシアと日本の相対的な交渉の立場に関して、安倍の全般的に時代遅れな理解と完璧に一致していた。映像の編集方針はすべて一方的、豊かで技術的に優れた日本が、感謝の気持ちを表すロシアに手を差し伸べるというものだった。これは、参加諸国のすべてが相互間の交易と投資によって諸国の開発計画における協力の緊密化を図り、相互に扶助するという、他の国々の指導者たちによるフォーラム演説の全般的な基調とは相反している。

韓国の首相はプレゼンテーションで、同国はウラジオストクに近接した土地(ツヴェズダ)におけるロシア最大の造船コンビナートの建設に参加するとともに、先進的な液化天然ガス輸送船舶の対ロシア主要供給国でありつづけると表明しており、ここにバランスの取れたウィン・ウィン手法を見ることができた。あるいは、北朝鮮との関係が正常化されしだい、鉄道輸送路をシベリア横断鉄道に接続し、さらにはヨーロッパにまで伸ばしたいという韓国の熱意にそれを見た。さらにまた、スエズ運河やアフリカのホーン岬沖合を経由する航路の代替案として、ロシアが開発に熱心な北極海航路の基盤整備における韓国の参加にそれを見た。

モンゴルの大統領は、対ロシア合同エネルギー事業を説明し、ともに既存であるか計画中であるロシアの鉄道と港湾基盤を経由した石炭輸送の計画・願望を語っており、われわれは彼の演説にそれを見た。

安倍晋三の対ロシア政策手法は、1970年代と1980年代を思わせる遺物であって、そのころの日本は活力に満ちたアジアの虎として、世界中の尊敬と羨望を享受しており、アメリカのいたるところで財産を買いあさり、そのころのソ連といえば、没落とまで言わなくとも、深刻な経済停滞に悩み、エネルギー資源の新規買い手と新規投資家を探していた。

中国は今日、40年前に日本が装っていた戦略的提携国の地位を占めている。中国はロシアの主要な融資国、投資国、輸出先国である。中国は先端技術の供給国として、往時と現在の日本ほどには高くランク付けされてはいないかも知れないが、民間航空の分野と同じく、先端技術の分野でもロシアの対等な合弁開発提携国になっているのだ。

中国の貿易と投資の現時点における重要性は、フォーラムの卓越したメッセージのひとつだった。ウラジミール・プーチンは二国間会談のあとの記者会見で、中国との今年の二国間貿易は20%以上も伸びて、1000億ドルを上回るだろうと認めた。さて、この数値1000億は全体会議の演説で、今回は、極東およびバイカル地域に向けた中国・ロシア両国合同投資事業の額面として再登場した。

日本の投資と安倍の協力事業150案件はこの背景事情と対象的に、総額で二桁ばかり低い。このような「ニンジン」が平和条約締結の日本側条件にロシアが同意するための動機づけになるという考えは、まったく非現実的である。

安倍が口にする南千島列島共同管理の甘いささやきは、支配権放棄に対するロシア側の抵抗を意図的に無視している。真の問題は、全体会議の場でウラジミール・プーチンに質問したセルゲイ・ブリリョフによって直截的に提示されたのであり、彼は千島列島が日本に保有されると、米軍基地の新たな配置拠点、とりわけ対弾道ミサイル部隊の駐留拠点になるのかどうかというロシア側の懸念事項について、二国指導者らは議論しなかったのかと問いかけた。プーチンは話しあったと発言したが、この話題は平和条約の締結を危うくする障害として無視することを選ぶ代物なのだ。

プーチンは壇上で、求められてやまない平和条約を実現するための「自発的」な提言と説明しながら、二国が「前提条件を付けず」に今年末までに進んで平和条約に署名することを提案した。そのうえで、両国が友好国になってから、相互信頼を深めつつ、千島列島のような難問に取り組めばよい。この提案に対して、安倍は後に初めて聞いたと弁明し、日本の外交官らは後に実効的でないとして拒否した。

別の言いかたをすれば、ロシアは日本を米国とその国防総省のトロイの木馬と見ているかぎり、譲歩に合意することはない。また、フォーラムでの言動において、安倍はまたもやワシントンにいる彼のご主人さまたちに対する忠誠を見せつけたのであり、それというのも、核の傘に頼るためには、いかなるものであってもロシア人と協定を結ぶことよりも大事なのだからである。演壇に居並ぶ主演者たち、5か国の指導者らのうち、安倍ただひとりが、ドナルド・トランプの名を挙げ、革新的で勇敢な手を北朝鮮に伸ばし、金正恩との首脳会談をおこなったと、鼻につくほどのお世辞を献上した。彼の発言には、韓国の指導者、文在寅が最初に示し、最近になってまたもや示したイニシャティブ、南北朝鮮およびアメリカ・北朝鮮の対談を最終章に導く主導性について、なんの言及もなかった。

日本は、戦略的かつ大規模な地域内経済統合の地図のどこにも見当たらないが、フォーラムで示された姿よりも遥かに深刻な実情に陥っている。他にも地域結合力として、中国が主導する一帯一路構想、そしてユーラシア経済連合がある。安倍晋三が率いる日本は米国の前哨基地にとどまっており、おおむね北東アジアの地政学的ビジネス環境から切り離されている。地域全体を活性化しているダイナミックな動きに乗るチャンスを見逃しているのだ。中国はフォーラムにおいて、2,000人を超えるビジネスマンと政府代表団を擁し、唯一無二の最大プレイヤーだった。フォーラムで実証されたように腑抜けで気が小さい安倍晋三の統率力のもと、彼の国は落日の土地になる運命にある。



原文出処:Gilbert Doctorow



【クレジット】

Russia Insider, “Japan's Abe Made a Mighty Fool of Himself at Russia's Eastern Economic Forum,” by Gilbert Doctorow, posted on September 15, 2018 at https://russia-insider.com/en/japans-abe-made-mighty-fool-himself-russias-eastern-economic-forum/ri24761#.W59pXRRtfJj.twitter, originally published under the title, “Eastern Economic Forum, Vladivostok: focus on Japan,” on September 14, 2018 at Gilbert Doctorow’s own website, https://gilbertdoctorow.com/2018/09/14/eastern-economic-forum-vladivostok-focus-on-japan/.

【関連動画】

首相官邸「ロシア・ウラジオストク 第4回東方経済フォーラム-平成30年9月12日」

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カナダの最高幹部外交官、クリスティア・フリーランドは、「この会合は歴史的な好機になりました」と発言し、次のように述べた――
「これは、ピンクのゲットーを創設するわけではありません。正反対です。世界の女性たちと少女たちの役割と権利の重要性を強調するものです」













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