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国家権力による弾圧に対しては、 犠牲者の思想的信条、 政治的見解の如何を問わず、 これを救援する。
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[注記]紙面画像は編集されています。
郡山通信
東京五輪VSフクシマ
さて、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックの開催まで二年を切り、世の中はいざしらず、ソーシャルメディアの世界は無償ボランティアの動員、サマータイム導入の提案などの話題で賑わっている。福島県在住の反原発論者としては、そもそもの大会招致の段階から腹立たしいかぎり――
安倍晋三首相は二〇一三年九月、IOC総会で福島第一原発の汚染水について質問され、「状況は完全にコントロールされている」と大見得を切った。招致委員会の竹田恒和理事長も、「福島から二五〇キロ離れているので…危険性は東京には全くない」と発言した。
その後も、組織委員会の森喜朗会長が福島県の佐藤雄平知事(当時)の「(福島県浜通りの)国道六号線で聖火リレー、各国選手団合宿の福島県内誘致」といった要望に、「風評被害で福島県に来ないということがあってはならない」と応じたり、オリンピック大臣が「五輪選手村で福島県産食材を使う」と明言したりということが相次いだ。
聖火リレーを国道6号に 投稿者 suisinjya
聖火リレーを国道6号に 投稿者 suisinjya
そして目下、金輪際、看過できない二つの案件が原発マフィアの構成官庁から提案されている――
①原子力規制庁「リアルタイム線量測定システムの配置の見直し」。つまり、学校や公園など、県内約三〇〇〇か所に配置されている空中放射線量モニタリング・ポスト(MP)のうち、帰宅困難区域以外の地域のもの二四〇〇台を撤去したい。
Before
After
ご覧のとおり、福島第一原発の周辺30キロ圏を除いて、まるで放射性物質プルームが通らなかったかのよう。
説明・公聴会(郡山会場)1 【注記】スクリーン上の(富岡会場)表記は検討小委員会事務局のミス!!
IOC総会で安倍首相らが見栄を切った手前もあり、復興五輪の建前もあって、しかも福島県の内堀雅雄知事が「福島復興!」「風評払拭!」を唱えていることもあって、野球・ソフトボール競技の予選が福島市あづま球場で挙行されることになっており、国内外からの県内観光客や福島第一原発の視察や取材が増えることが予想され、形だけでも事故が収束した福島の姿を作りたいのだろう。
MPについては設置当初から、検出・表示される放射線値が市販機器による測定値より二~三割ほど低い、設置場所が清掃容易だったりビルの影だったりしておかしいなどと批判が多々あった。だがそれでも、被曝地戒厳令とでもいうべき締め付けのなか、人びとが沈黙していても、これはフクシマ被曝状況を忘れないための重要な実体物なのだ。これを撤去したいと提案する原子力規制委員会は、原子力推進(または隠蔽)委員会と後ろ指さされてもおかしくないだろう。
はたして、これまで県南の西郷村、会津の喜多方市、奥会津の只見町など、放射線値が比較的低い地域で開かれた説明会でも反対の声が圧倒的で、市町村議会でも反対意見決議が相次いでいると聞く。
筆者の居住地、郡山市でも八月五日に説明会が開かれ、約一〇〇名の参加者は反対一色、激昂する声も上がった。
筆者は「昨年、中央図書館が耐震化工事で閉館中、入り口に設置されていたMPが撤去されたが、どうしたのか」と質問した。答えは「駐車場に移動した」。
もともと、このMPは設置場所がおかしかった。三方を壁に囲まれた庇の下であり、しかも手前間近に金属製ショーケイスがわざわざ建てられていた。当時、文部科学省が所管していた「放射線モニタリング情報」オンライン地図では、不思議なことに、設置箇所が図書館入り口ではなく、隣接する緑豊かな麓山公園との境界に印付けられていた。
後日、隣り合わせた図書館駐車場と麓山地区公共施設駐車場を自転車で回って現場検証してみると、見当たらなかった。地図で確かめ、日を改めて探すと広大な公共駐車場の北西の隅っこ、図書館、中央公民館、公会堂に向かう人びとの目に触れない場所をわざわざ選んで設置されていた。
②経済産業省「多核種除去設備等処理水の取扱い」説明・公聴会が八月三一日に郡山市商工会議所で開催される。これについては、本稿の締切りに間に合わないので、改めて報告したい。
【後記】
報道によれば、原子力規制庁は来年度分の「リアルタイム線量測定システム管理予算」全額5億円余りを例年どおり要求したようである。維持管理費に困っていると説明していたのに、なんという少額❗ ともあれ、福島県内各地の説明会で住民の圧倒的な撤去反対の声に配慮したように思え、とりあえずはグッドニュース。だが、オリンピック・パラリンピック開催は再来年のことであり、もちろんのこと、予断は許されない。
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2018年8月21日火曜日
このフクシマが安全だとする積極的なブランド復活は、今もなお進行中のリスクを思い起こさせる物理的な存在を除去することを含んでいる。中央政府は最近、各地の一般向け放射線モニタリング・ポストの80%を撤去すると発表した。これらの放射線監視装置は外部ガンマ線量を測定するだけであり、これは(2011年3月の爆発で発生したプルームからの放射性降下物として地域を包み込んだ内部被曝性の放射性粒子を原因とする)住民に対する最重要なリスク要因ではなく、また元来、放射線源粒子は地表に存在するので、これらのガンマ線検出器を空中に設置すると読み取り値が低くなると論じることができる。モニタリング・ポストはそれでもなお、リスクが今なお厳然していることを思い出させる具体的で具現的な構造物なのだ。
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