カウンターパンチ
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恐れ知らずの醜聞あさり
1993年創刊
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2018年8月31日
放射能惨事は氷山の一角
ジョン・ラフォージ JOHN LAFORGE
Photo Source Surian Soosay | CC
BY 2.0
世界原子力協会(WNA)は、その目標を「核エネルギーに対する世界の支持を増進する」ことと謳い、ウェブサイトで繰り返し「32か国で16,000炉年の累積稼働実績の全体のなかで、大事故は3件だけである」と主張している。WNAその他、原子力の味方は、1979年のスリーマイル・アイランド(米国)、1986年のチェルノブイリ(ソ連)、2011年のフクシマ(日本)を「深刻な」事故と認めている。だが、これら3件の放射能噴出事故を最悪のものだと主張すれば、ウラニウム採鉱、核反応炉、核兵器、放射性廃棄物が引き起こした一連の驚くべき大規模災害を無視することになる。その他、世界の重大放射能漏出事故のいくつかに鑑みて、核事故のビッグ・スリーは氷山の一角であることがわかる。
1952年12月2日、チョーク・リヴァー(オンタリオ州):このオタワ河畔のカナダ型反応炉は、冷却材喪失、水素爆発、炉心メルトダウン事態に陥り、最初の重大商業用炉災害となって、大気中に100,000キューリーの放射能を放出した。ちなみにスリーマイル・アイランドを比較対象にすれば、放射線監視機器が故障したり、針が振り切れていたりしたものの、こちらの公式政府見解によれば、放出量は約15キューリーだった。
1957年9月11日、ロッキーフラッツ(コロラド州):この冷戦期の工場はデンヴァーから16マイルに位置し、核兵器のプルトニウム起爆物を製造していた。同工場は、米国史上で2番目に大規模な産業火災といわれることになる事態に陥り、人間が吸引可能なプルトニウム239およびプルトニウム240の粉体13.6ないし20キログラムに着火した。プルトニウム捕捉用の濾過装置が破壊され、プルトニウムが排気筒から放出され、デンヴァーの各所を汚染した。風下住民に対する警告・保護措置は、なんら実施されなかった。
1957年10月7日、ウィンズケール/セラフィールド(英国):数多くあるうち最悪の火災が核反応炉1基を溶解してしまい、ウラニウム3トンに着火して、イングランドとヨーロッパ北部の各地に放射性核種を拡散した。同所は大急ぎでセラフィールドと改名された。1981年にもう1件の大規模な放射能漏れを起こし、白血病の罹患率が全国平均の3倍に跳ね上がった。
1957年9月29日、クイシトゥイム/チェリャビンスク65(ロシア):高レベル放射性液体70ないし80トンを保管していたタンクが爆発、推定250,000人の身体を汚染し、30の町が恒久的に無人化、ロシア地図から抹消された。クレムリン(およびCIA)によって1989年まで隠蔽されていたが、最終的にロシアがセシウムのような長寿命核種の2000万キューリーが放出されたと公表し、この漏出事故は後に国際原子力事象評価尺度でレベル6の災害であると宣言された。この長期にわたり隠蔽されていた爆発事故は25,900平方キロに達する地域を汚染し、記録史上で第3位、または第4位の過酷な放射能事故になった。
1959年7月12日、サンタ・スサナ(カリフォルニア州シミ・ヴァレー):ロサンジェルスに間近な郊外で実施されていたナトリウム反応炉実験でメルトダウン事故が起こり、エネルギー・環境研究所のアルジュン・マカージャニ所長によれば、「原子力史上第3位にランク付けされる大規模なヨウ素131漏出事故」になった。従業員によれば、「監視機器の針が振り切れた」ので、漏出した放射性物質の量の信頼できる計測値は得られなかった。この事故は20年間にわたり秘密にされていた。
1976年7月16日、チャーチ・ロック(ニューメキシコ州):ウラニウム鉱山廃液352,000立方メートルと固形廃棄物1000トンがナヴァホ・ネイション(準自治領)とリトル・プエルコ川に漏出し、核関連当局者らはそれを「米国市場で最悪の放射能汚染事故」と名指した。リトル・プエルコ川は、コロラド川の支流であるリトル・コロラド川に合流し、最終的にミード湖――ロサンジェルスの飲用水源――に流れ込む。
1993年4月7日、トムクス7(ロシア):ロシア国内外の有識者らによれば、「チェルノブイリ以来、最悪の放射能災害」で、トムスク核兵器コンビナートの放射能廃液タンクが爆発し、その時の風が放射能プルームをエニセイ川とシベリアの11村落の方向に吹流したが、避難はまったく実施されなかった。
1995年12月8日、もんじゅ(日本):このナトリウム冷却「増殖炉」が火災を起こし、大量のナトリウム冷却材を太平洋[ママ*]に漏出した。液体ナトリウム冷却材は、空気と接触すると発火し、水と接触すると爆発する。商業モデルを開発する経費が膨大な事業は失敗した。日本のもんじゅ実験は、偽りの起動、事故、隠蔽の24年間の果て、2018年に中止された。
*[訳注]「日本海」とすべきだが、そもそもプルームはともかく、ナトリウムが外部に放出されなかったはずである。
1999年9月30日、東海村(日本):ウラニウム「臨界」、つまり無制御な核連鎖反応が「中性子バースト*」を起こし、作業員3名**を死亡させ、中性子放射線に工場周辺の人口稠密な市街地を貫通させた。
* 爆発的な放射現象。
** 放射線医学総合研究所に搬送された被曝者は3名だったが、死亡者は2名だったはず。
軽視できないことに、故意による汚染もおびただしくある。核爆弾実験、その他の核兵器開発のために、プルトニウム5トンが地球全体にばらまかれた。ワシントン州のハンフォード核反応炉複合施設で放射性液体8億立方メートルが地中に注入され、アイダホ国立研究所で放射能70,000キューリーを抱える放射性廃液6000万立方メートルがアイダホ州のスネーク川帯水層に直に注入された。
出処:
Nuclear
Roulette: The Truth About the Most Dangerous Energy Source on Earth, by Gar
Smith (Chelsea Green, 2012)
Mad
Science: The Nuclear Power Experiment, by Joseph Mangano (OR
Books 2012)
In
Mortal Hands: A Cautionary History of the Nuclear Age, by Stephanie
Cooke (Bloomsbury, 2009)
Criticality Accident at Tokai-mura, by Jinzaburo Takagi (Citizens’
Nuclear Information Center, 2000)
Nuclear
Wastelands: A Global Guide to Nuclear Weapons Production & Its Health &
Environmental Effects, by Arjun Makhijani, et al (MIT Press, 1995)
The
Nuclear Power Deception, by Arjun Makhijani & Scott Saleska (Apex
Press, 1999)
Nuclear
Madness, Revised, by Helen Caldicot (Norton, 1995).
Multiple
Exposures: Chronicles of the Radiation Age, by Catherine
Caufield (Harper & Row, 1989).
Greenpeace
Book of the Nuclear Age, by John May (Pantheon, 1989).
Deadly
Defense: Military Radioactive Landfills, edited by Dana Coyle, et al
(Radioactive Waste Campaign 1988)
No
Nukes, by Anna Gyorgy (South End Press, 1979).
More articles by:JOHN LAFORGE
ジョン・ラフォージは、ウィスコンシン州の平和・環境正義団体、ニュークウォッチの共同代表、同団体のニュースレターの編集者。
【クレジット】
CounterPunch, “The Tip of the Radiation Disaster Iceberg,” by John
LaForge, posted on August 31, 2018 at https://www.counterpunch.org/2018/08/31/the-tip-of-the-radiation-disaster-iceberg/.
【ジョン・ラフォージ記事】
2018年8月10日金曜日
アメリカの原爆による1945年のヒロシマとナガサキの破壊について、通俗的な説明は、マイク・ハシモトが2016年にダラス・モーニング・ニュースに書いたような、「さもなくば、何万人ものアメリカ人が死んだだろうが、同じようにもっと多くの日本人が死んだだろう」という嘘だが「最も偉大な世代」のストーリーにいまだにこだわっている。
2018年7月24日火曜日
福島第一原子力発電所の核反応炉3基のメルトダウン事故による放射能の環境放出量は1986年のチェルノブイリ破局事故によるそれを凌駕しているので、われわれはフクシマ核惨事を史上「第二に過酷」な核災害と呼ぶのをやめたほうがよい。『世界原子力産業現状報告2013年版』によれば、フクシマの大気中放出総量はチェルノブイリのそれの5.6倍ないし9.1倍になると見積もられている。同報告のフクシマの部を執筆した細川孔明教授は当時、ロンドンのチャンネル4ニュースで、「ほとんど毎日のように、新たな事態が勃発していまして、ここ数か月のうちに、あるいは数年のうちに、彼らが状況を制御できるようになることを示す兆候はありません」と語っていた。
2014年11月23日日曜日
放射線基準を緩和する。自己責任に上限を設ける。改良に代えて、原子炉プロパガンダ。期限切れを超えて古い原子炉を動かす。設計仕様を超えてエンジンを回転させる。…われわれはメルトダウンを切望してやまないと思えるだろう。環境保護局は重大漏出事故後の放射線被曝限度の引き上げを勧告した。ガタのきた原子炉をただちに停止するよりも、人間の被曝量拡大を許容して、業界を十把一絡げに救おうというのだ。
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