2015年5月24日日曜日

CBSニュース「フクシマ周辺の鳥たちに迫る災禍」

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マイケル・ケイシー MICHAEL CASEY CBS NEWS April 16, 2015416

フクシマ周辺の鳥たちに迫る災禍

研究員の手のなかで、白色化した羽毛の斑点を調べられているツバメ。T.A. MOUSSEAU

フクシマ惨事*から4年、損壊した原発周辺では鳥類を滅多に見なくなっている。

鳥類学ジャーナル掲載の論文は、鳥類57種の半分が生息数の減少に見舞われていると認めた。サウス・カロライナ大学の生物学者、ティム・ムソーと研究仲間たちは、時間の経過とともに――放射線の脅威が減じても――鳥類の数が減りつづけていることに気づいた。

「鳥類の数が劇的に減少しており、これはあの地の全般的な様相にもとづいているはずです。フクシマのツバメについていえば、わたしたちが研究していた町村の多くで、何千羽とまでいわなくても、何百羽もいました。いまでは数十羽が残っているのを見ることができるだけです。途方もない減りかたです」と、ムソーはCBSニュースに語った。

ツバメだけでなく、ニシオオヨシキリ、ウグイス、ホオジロも見つけるのが極めて難しくなった。

ツバメの羽毛の寄生虫と非対称性の検査。T.A. MOUSSEAU

研究者たちはいまも減少の厳密な理由とフクシマ惨事の果たした役割と突き止めようとしている。日本は2011311日に地震に見舞われ、津波が発生して、福島第一原発の予備発電機を損壊し、チェルノブイリ以来で最悪の核惨事を引き起こした。

ムソーはフクシマにおける初期研究で、核惨事の悪影響が広範な生物種におよび、鳥類、サル、蝶類*、その他の昆虫の遺伝子損傷の原因になったことに気づいた。彼が今月初めにネイチャー誌サイエンティフィック・リポーツに公開した研究論文**では、ツバメ雛の個別検査の結果、放射能による遺伝子損傷を認めることができなかった。それでも、詳細な調査の結果、ツバメの数と雛の割合の両方において、生息数の減少が放射線量と比例していることが実証された。

「わたしたちは惨事後のあの最初の夏、最も線量が高い地域に入ることができず、翌年の夏も中程度の高線量地域の一部に入ることができただけですので、この論文では、比較的に小さな範囲内のバックグラウンド線量を対象に研究できただけです。ですから、この種の関係を検証するには、統計検出力がかなり力不足であり、おまけにツバメがわずかしか残っていないとなれば、なおさらのことです」と、ムソーはいう。

ツバメの体長を測定する研究員のアンドレア・ボニゾリ=アルクアティ。 
T.A. MOUSSEAU

ムソーはまた、フクシマにおける環境への影響を、1986年の最悪な原発事故の現場、チェルノブイリ*のそれと比較するプロジェクトを主導する研究者のひとりである。彼はチェルノブイリ+フクシマ研究イニシャティヴ**の管理者として、両現地における鳥類に対する影響に注目した。

鳥類学ジャーナル今月号掲載の第2の論文において、ムソーと彼の古くからの協力者、フランス国立科学研究センターのアンダース・モラーは、チェルノブイリ周辺では渡り鳥のほうが周年留鳥に比べてひどい状態であることに気づいた。フクシマにおいては、その逆だった。

「フクシマの留鳥種は惨事勃発時、現場にいたのであり、放射能放出にもろに遭遇したのです。渡り鳥は惨事のあとまで現場に登場せず、被曝線量は惨事のあとのレベルに限定されていました。線量レベルが低くなっていたのです」と、ムソーは語った。

チェルノブイリでは、ツバメやサンショクツバメなどの渡り鳥は、生体保護物質――飛翔中に消費されるビタミンEGSHグルタチオン)など――が到着時すでに消耗していたとムソーは信じている。

「渡り鳥は数千マイルの距離をわたって飛来し、生理的なストレスを抱えていたのです。舞い降りたとき、繁殖に必要なエネルギーと相まって、鳥たちは放射能に対して無防備だったのです」と、ムソーは述べた。

ムソーは、フクシマ周辺において、最悪期はまだ到来していないと予測している。

「最初の夏、放射線量と生息数の関係は否定的なままに始まりましたが、年ごとに関係がじっさいに強くなっています。そこでわたしたちは今になって、鳥の数と鳥類種の数の衝撃的な減少を目撃しているのです。だから、放射線レベルが高いこれらの地域では、そのレベルが低下していても、劇的な影響が認められるのです」と、ムソーは述べた。

その理由は放射線による長期的影響に帰せられるとムソーはいう。

彼は寿命の短縮と繁殖力の減衰に触れ、「自然個体群に突然変異効果が出現するまで、数世代の期間が必要です。ある時点で、突然変異の悪影響と生まれて間もない新世代の鳥の渡りが拮抗するでしょう。この均衡点に達するのが何時になるのか、わたしたちはまだ予測できるほどわかっていないのです」と語った。

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本稿は、公益・教育目的により日本語訳・公開するものです。

【関係論文】

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(末尾にT・ムソー関連記事とブログ内【論文】日本語訳稿のリンク集)

【解説記事】

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