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核の最後の頼みの綱か? ニューヨーク州のクオモ知事が老朽化反応炉の救済に突き進んでいる
2016年9月2日
ニューヨーク州の“リベラル派”、アンドリュー・クオモ知事は、少なくとも4基の危険なまでに老朽化した核反応炉の稼働を継続するために110億ドル相当の複雑な裏口緊急援助計画を強行採択しようとしている。
大方の安全エネルギー推進派にとって、この動きはショッキングな知らせである。その結果は、とんでもない影響を核発電とわが国の今後のエネルギー供給にもたらすだろう。
マンハッタンから60キロ北方、インディアン・ポイントのエンタージー社所有の核反応炉2基について、クオモ知事は長年にわたり閉鎖に向けて働きかける表向きの動きを見せていた。知事とニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン司法長官は法廷でエンタージー社と争い、操業停止をめざしていた。両人は、ニューヨーク市とこれほど間近な核反応炉はあまりにも危険であり、大事故となれば、避難できないと警告している。1970年代に開設された操業中の核反応炉2基から80キロ圏内に1000万人あまりが住んでいる。
エンタージー社は目下、2基の核反応炉、2号炉と3号炉の期限切れになった創業免許の期間延長求めて原子力規制委員会に働きかけている。(インディアン・ポイント1号炉は、緊急炉心冷却装置が備わっておらず、1974年10月に閉鎖された)
クオモは今でもインディアン・ポイント2号炉と3号炉を閉鎖したいと言っている。これら2基の反応炉はたいがいの老朽化反応炉と同じく、漏出、機械の故障、構造崩壊、計画外の停止で不断に悩まされてきた。インディアン・ポイントの炉心構造内部の重要なボルトに重大な問題があることと、トリチウムが環境に広く漏れ出していることが最近になって暴露され、世論の反対が高まっている。
インディアン・ポイント閉鎖を求めて戦う全国団体と地域グループには、リヴァーキーパーズ、クリーンウォーター、インディアン・ポイント安全エネルギー連合、核情報&資料サービス、ビヨンド・ニュークリア、地球の友、その他数多くある。
しかし、クオモはいま、州内北部の核反応炉4基の操業をつづけさせるために、まず手始めに公金70億ドルあまりを割り当てたがっている。1基はロチェスター均衡のギンナ反応炉、残り3基――フィッツパトリック反応炉、ナインマイル・ポイント1号炉、ナインマイル・ポイント2号炉――はオンタリオ湖畔の同一施設に所在している。フィッツパトリック反応炉はエンタージーの所有である。残り3基は、米国最大の核発電所所有・操業企業、エクセロンの所有。
これら4基の反応炉はすべて、さまざまに劣化が進行した段階にあり、恒久的な閉鎖が予定されていた。どれひとつとして、公的助成がなければ、急速に発電単価が下落している天然ガス火力や風力・ソーラー発電と競争できない。
エンタージーは昨年秋、同社は経済的要因によってフィッツパトリック反応炉を2017年1月に閉鎖することを余儀なくされると発表していた。エクセロンはニューヨーク州公益事業委員会に対し、同社もおそらく来年、ナインマイル1号炉とギアナ反応炉をやはり閉鎖するだろうと陳述していた。
環境保護派はこうした発表を歓迎した。老朽化しつつある米国の反応炉の群には約100基あり、ピーク時の約130基から減少しており、1974年にリチャード・ニクソンが予言した1,000基に900基少ない。その多くは、ギアナと同じく、優に40年を超えて老朽化している。多くは様々な放射性物質を漏出しており、その最も一般的なのが、インディアン・ポイントのようにトリチウムである。最近、フィッツパトリックにおける大規模な漏出もまた暴露されている。インディアン・ポイントのボルト欠損やオハイオ州デイヴィスべッセの崩れかけた遮蔽建屋など、構造的な問題も頻発している。
それでもなお、12年計画一括提案は表向きクリーン・エネルギー推進を謳っているものの、クオモの公益事業委員会は州内北部の反応炉の稼働継続をねらった巨額助成計画を採択した。
政策の秘密項目は、エンタージーからエクセロンへのフィッツパトリックの移管だった。公的部門から核産業への譲渡は今後10年以上にわたり拡大するだろう。皮肉なことに、一定の環境のもとで、譲渡はインディアン・ポイント反応炉2基を引き続き稼働させるために使われるだろう。
クオモは、失業が蔓延している不景気な地域で2,000人分ばかりの反応炉雇用を「確保」した。だが、スタンフォード大学の経済学者、マーク・ジェイコブソンは、反応炉の稼働継続を図るために巨額資金を風力・ソーラー発電の推進とエネル―ギー効率の改善に使っていれば州内全域で数万人分の雇用を生み出せることができたことを示した。このような電力源は、老朽化反応炉がもたらす長期的な安全・生態系・公衆衛生問題をもたらすことなく、はるかに大量の電力を安い電気料金でニューヨーク州に供給することができただろう。
クオモはまた、反応炉の稼働延長は炭素を排出しないと主張する気候専門家、ジェイムズ・ハンソンを引き合いに出した。だが、核推進派は反応炉4基が排出する膨大な量の熱水と蒸気を無視している。
米国の反応炉のそれぞれが、毎日300万ないし4700万立方メートルの熱水と蒸気を環境に放出しており、地球温暖化の主要因になっている。カリフォルニア州のディアブロ・キャニオン核反応炉2基が排出する熱水の推定量は、1日あたり950万立方メートルである。米国の反応炉は生成されるエネルギーの約3分の1を使用可能な電力として送電線に送り込んでいるだけである。そのうちの約10パーセントは送電ロスとして失われる。
全米の核事業者は、ニューヨーク州が提案している助成金が、崩れかけて金食い虫になっている反応炉の稼働に踏み込み、継続させる諸州の先例になるかどうか、注目している。エクセロンはイリノイ州で巨額の争いに負けた。環境保護派、消費者運動、さらには競合事業者でさえも、トレド近郊のデイヴィス・べッセ反応炉をめぐるファーストエナージーの巨額緊急援助要求と争っている。
業界は21世紀の変わり目に、「自由経済市場」で反応炉の実績はよくなると言い立て、規制緩和を要求して戦った。だが、その過程で、業界は大幅に非効率な技術のおかげで不公正にこうむったと主張する「稼働停止コスト」を埋め合わせるために約1000億ドルと補助金を要求した(そして、獲得した)。
巨額の現金を注入したあとでさえ、反応炉が立ちいかなくなっているいま、業界は別枠の助成金を要求している。
その一方、前向きの兆候もある。カリフォルニア州では、州政府、パシフィック・ガス&エレクトリック、施設労働組合、主だった環境保護運動団体が転換政策に合意して、大型反応炉2基の免許が切れる約9年以内にそれらを閉鎖することになった。その間に事業者は、炭素を排出しない風力・ソーラー発電にほぼ完全に転換し、大人数の施設労働者の「再雇用と再訓練」を実施する。
カリフォルニア州の反核グループは、ディアブロの稼働期間が9年残っているのは長すぎると心配している。2基の反応炉は地震断層の上または近くに据えられており、フクシマが破壊原因になった地震の震源地から離れている距離の半分、70キロしかサンアンドレアス断層から離れていない。
だが、この方針は、反応炉による電力の全部を再生可能エネルギーで代替できると核事業者が認めた最初の例になる。これはまた、施設の労働者にとっても、反応炉が閉鎖されるとき、実質的な免税基盤を失うことになる近隣地域社会にとっても、転換を許せることになる最初の大規模な段階的撤退の例になる。
このような展開が背景としてある状況で、ニューヨーク州の戦いは核発電の最後の戦いの重大な転換点になるかもしれない。
クオモの補助金に対するニューヨーク州の反核グループの反対運動は熾烈であってきた。闘争はまずパブリック・コメントの形で公益事業委員会に向けられ、次いで裁判闘争に移った。反対派は州内のソーラー産業の拡大著しい成功で勢いづいている。ソーラー社会化テクノロジーに結びついた関心が高まるにつれ、このような類いの救済措置に対する反対は高まっている。
ニューヨーク州における核発電をめぐる争いがどのように収束するか、不明瞭である。核情報・資料センターのティム・ジャドソンは、「戦いは収束からほど遠い」と請け合っている。
Harvey Wasserman
ハーヴェイ・ワッサーマンは世界的な「ノー・ニュークス」運動の共同創始者であり、1967年以来、プログレッシヴに寄稿。“Solartopia! Our Green-Powered Earth”著者であり、www.nukefree.orgの編集者。
【クレジット】
The Progressive, “Nuclear’s
Last Stand? New York’s Cuomo Rushes in to Save Dying Plants,” by Harvey Wasserman, posted on September 2,
2016 at;
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