2016年9月12日月曜日

USニューズ&ワールド・レポート【投書】核ルネッサンス神話~核エネルギーはとっくにゲームオーバー

USニューズ&ワールド・レポート誌オンライン

核ルネッサンス神話

核エネルギーはとっくにゲームオーバー
The game is already over for nuclear energy.


2016718

編集部員 各位

核産業が自暴自棄になる時代は、自暴自棄なレトリックがまかり通ります。ですから、さまざまな事実がルネッサンスのようなものはないと裏付けていますし、業界そのものが神話的な名称をあえて復活させようとすらしていないにもかかわらず、「ルネッサンス」に触手を伸ばすのです。 ["The NewNuclear Renaissance," 6/11/2016]

核発電は高上りになって――天然ガスだけでなく、さらに重要なことに再生可能エネルギーに――市場で歯が立たないものですから、ダイ・ハード(不死身)の核推進派は新しいプロパガンダで古い核反応炉を飾りたてるのです。

ナトリウム冷却、高速、さらに小型化さえ実現したモジュラー型反応炉は、すべてここ数十年来、出回ってきた――そして断られた――設計品なのです。

ナトリウム冷却反応炉は、発火しやすく、爆発や超臨界事故に見舞われやすいです。そのような反応炉の内部で出力が急速に上昇すれば、燃料が蒸発し、炉心をバラバラに吹き飛ぶ恐れがあります。このような机上の設計は「安全に退場」どころか、「あらゆる状況」を想定した検証を受けておらず、そういう厳密な形で試験すれば、メルトダウン必定と判定されることは間違いありません。

みずから生成した放射能のゴミを燃料として消費する反応炉は、想像できるような万能の廃棄物管理策ではありません。廃棄物に含まれている半減期の長いアイソトープを減らすことによって、理論的に廃棄物を「変化」させることはできます。しかし、放射性の核分裂生成物は残り、その一部は半減期が非常に長いのです。これら放射性廃棄物は、やはり数百年にわたる管理が必要です。魔法のように消えてくれません。

小型モジュラー反応炉は大型反応炉に比べて発電容量が小規模であり、規模の経済が投資家に嫌われる要因になることが実証されています。そのキロワットあたり資本コストは、従来型の軽水炉に比べて倍になると見積もられています。

さらに言えば、まだ製図板に載せられたままの域を出ない、いわゆる「新規」設計は、これから何年もそこに載せられたままでしょうし、急激に価格が下落している風力・ソーラー発電が、たちまちのうちに、また広範に推進されると、あっという間に、また遥かに安上がりに答えを出すことができるはずの気候変動対策に遅れをとってしまいます。

わが国では気候変動が政治課題になっていない。たとえば、ジム・インホファ上院議員はキャピトル・ヒルの立法府で右に出るもののない気候変動否定論者である。これはむしろ、業界自体の惨憺たる経済実績の重荷で倒れそうな産業に梃入れしながら、アルゴンヌ国立研究所を衰退から復活させるための見え透いた営みである。

コリー・ブッカー上院議員は、喘息発症率を挙げて、彼が核に頼る動機付けにした。それにしても、核発電所の近隣で暮らす子どもたちの白血病発症率が37パーセント上昇したことを研究が明らかにしているので、とても容認できる選択肢にはならない。ブッカーは、核燃料の流れ、とりわけウラニウム採掘と廃棄物処分が有色人種の低所得地域社会に重荷を押し付けていることにも、やはり憂慮すべきである。

物書きたちは「中国とロシアを相手にした競争」などと、ことさらに言及する。両国ともに核兵器クラブの仲間であり、物書きたちが売り込む「新型」反応炉設計の少なくともひとつは、原子爆弾の主要構成材であるプルトニウムを使いながら製造することは偶然の一致なのだろうか?

米国が中国の後塵を拝している本物の競争は、再生可能エネルギー分野の競争である。公開されたばかりの「世界核産業動向年報:2016年版」(2016 World NuclearIndustry Status Report)によれば、2015年における中国の再生可能エネルギー投資総額は1000億ドルであり、180億ドルだった同国の新規反応炉投資額の5倍以上に達している。

中国においてさえ、核エネルギーの勝負はついており、延長時間はない。「原子力産業は、再生可能エネルギーのコスト低減と中国における核反応炉建設の減速で苦しんでおり、2016年前半期における世界の核反応炉の新規建設着工はゼロ件に落ちこんだ」と年報は伝えている。

エネルギー「イノベーション(刷新)」に割り当てる10億ドルがあるなら、数十年にわたり広大な地域を放射能で汚染することがなく、燃料が無用で、廃棄物を生み出さない電力源、再生可能エネルギーに使わない手はあるだろうか? 再生可能エネルギーこそ、真に「現代的」といえるだろう。

ルネッサンスは中世からいわゆる近代初期に移行する橋になった文化運動だった。核エネルギーと同じく、未来ではなく、過去のものである。

メリーランド州タコマ
ビヨンド・ニュークリア Beyond Nuclear
国際問題専門担当およびメディア・開発部門長
リンダ・ペンツ・ギュンター Linda Pentz Gunter

【クレジット】

US News & World Report, “The Myth of the Nuclear Renaissance,” by Linda Pentz Gunter, posted on September 7, 2016 at;

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