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フクシマ汚染水の管理と失態
2013年8月29日
フクシマ原子炉建屋(右)と汚染水タンク(左)。2013年3月3日撮影(Google Earth) |
2011年12月、日本政府は誇らしげな鳴り物入りで、3月に損傷した福島第1原発の原子炉が「冷温停止」状態にあり、放射性物質の原子炉格納容器からの放出は統御されるにいたったと宣言した。
2013年8月、東京電力の小野 明・執行役員福島第1原子力発電所長は数か月にわたって深刻になってゆく事態の知らせを受けて方針を変え、 同社には放射能汚染水の環境放出を統御できてはいないと認めた。汚染水放出が止まらず、制御も不能であり、日本は今週、この漏出に国際原子力事象評価尺度(International
Nuclear Event Scale)を適用して、(レベル7と格付けされた元来のフクシマ事故とは別個に)レベル3「重大な異常事象」であると宣言するにいたった。
進行する汚染水漏出
事実として、福島第1原発の現場で大量に発生する放射能汚染水を、どの程度まで東京電力が「統御」できるのかは、常に疑問視されていた。損壊した炉心と使用済み核燃料プールに注入された水が原子炉容器と格納容器から未知の経路を通って漏れだし、原子炉建屋やタービン建屋の地下、それに敷地を縦横に配置されたトレンチやトンネルに溜まり、その一部が地下水や潮水から分離されていないことは、2011年3月の事故発生直後から明らかになっていた。進行する大量の放射性物質の海中放出を食い止めるために、数々の一時的な処置が施された。そのうえ、東電は、冷却水に含まれる最も厄介な放射性アイソトープのひとつ、セシウム137を除去し、濃縮するための水処理システムを設置し、冷却用に再利用されない水を貯蔵するために、広大な敷地に一群のタンクを建造した。現状では、このような対策をとっても、機械や装置から放射能汚染水が地下に漏出するのを止めることができない。東京電力は本年8月19日、部分的に浄化された汚染水300トンがタンクから漏れだしたと発表したが、これはこのような一連の漏出のうち、最新のものであり、最も深刻なものである。
放射性物質が敷地の地下の土壌に漏れているのと同時に、内陸の山々から1日あたり1,000トンの地下水が流れこんでいる。毎日400トンの地下水が原子炉建屋とタービン建屋に溜まり、その他は港湾に排出されていると信じられている。これが、原子炉の地下から海中へと放射能汚染が途絶えることなく排出されるメカニズムである。東京電力は、港湾に1日あたり300トン流れこむ地下水が汚染されていると信じている。東京電力は地下水の汲み上げと貯蔵を始めたが、いまのところ、全量のうち、ほんの一部を処置しているにすぎない。
東京電力は、地下水流を汚染区域から迂回させるための恒久凍土層の障壁になるはずの、いわゆる「凍結壁」の構築など、敷地内の安定化を図るために、広範な対策を検討してきた。同社はまた、ついに国際支援を要請した。だが、日本政府が東京電力にしびれを切らし、緊急対策の開発で先導すると発表したのだが、政府がどの程度まで危機対応の責任を想定しているのかは不透明である。
これはなにを意味するのか?
放射能が統御されないまま連日、環境中に放出されているのは、東京電力サイドによるフクシマ現場における安全管理上の失策の一例ではあるが、事故後の数週間にわたって放出した、数百万倍規模の放射能に比較しうる、一般人に対する大規模な健康への脅威にはなっていない。サイト内にある放射能を安全に封じ込めることができないのでは、どれほど状態が危険であっても、日々に出勤しなければならない作業員たちにとって、第一番の最重要な脅威になる。最近になって10人を超える作業員が汚染され、呼吸防護が求められる区域を拡大する結果になったということが、要員らが向き合う危険を浮き彫りにしてしまった。
しかしながら、この状況は、フクシマにおける万事がいまだに危ういかを否応なく想い起こさせ、いまだに炉心と使用済み核燃料プールに残留している放射能の膨大な量を考えれば、なおさら懸念がつのる。たとえば、新たに廃水タンクが漏洩を起こせば、状況は急速に悪化する。また、ジャパン・タイムズ紙が報じるように、新たな地震が起こると、敷地内地下が液状化し、もっと大量の放射能漏出を引き起こす可能性が高まる。フクシマに関するニュースがほとんど報じられない時期にあっても、国際社会は偽りの安心感に誘導されるべきではない。状況は切迫しており、差し迫った対応が求められている。
Posted in: Japan
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Tags: Japan nuclear, nuclear power, nuclear power safety
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筆者:ライマン博士は、1992年にコーネル大学で物理学博士号を取得。プリンストン大学エネルギー・環境研究センターの博士号取得研究科学者、核管理研究所の研究監督兼所長を歴任。2003年、UCS(憂慮する科学者同盟)に加盟。核物質管理研究所の現役メンバーであり、原子力規制委員会の専門家パネルに参画。研究の中心対象は、特に使用済み核燃料再処理および民生用プルトニウムに関連して、核物質管理および原子力発電所運営の安全問題。専門分野:核テロ、原子力の拡散リスク、核兵器政策。
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