2015年4月22日水曜日

サウス・カロライナ大学:ムソー教授が語る、福島におけるツバメの減少

サウス・カロライナ大学
福島における鳥類の個体数の減少
Dwindling bird populations in Fukushima
投稿:2015414日 更新:2014415
スティーヴン・ポーウェル Steven Powell, 803-777-1923


線量測定
ティム・ムソーと彼の研究チームは、野生の個別対象の放射線量を測定するガンマ放射線感受結晶を使った熱ルミネセンス検出器を用いて、先駆的な調査を実施している。
1年のうちのこの時期は、鳥類が姿を見せ、翼を広げる季節だが、4年前の春到来より少し前の悲惨な日から、日本の福島県は羽のある生きものに信頼できる土地ではなくなった。サウス・カロライナ大学の生物学者、ティム・ムソーらが公表した数件の論文が示すように、その地の鳥類の状況は悪化していく一方である。

2011311日の地震、津波、それにつづく福島第一原子力発電所の核惨事から数カ月後以来、ムソーと彼の共同研究者らは汚染地域における一連の鳥類個体数調査を実施してきた。彼らはこのほど鳥類学ジャーナルに論文*を発表し、57種の鳥類に関する研究に最初の3年間の結果を公表した。

事故の結果、多数の個体群が個体数を減らしていることが判明し、いくつかの種では、劇的な現象にみまわれていた。とりわけ痛烈な打撃を受けた種がツバメ(Hirundo rustica)であり、放射線被曝レベルの個体別測定の結果、被曝線量に比例する形で個体数の著しい減少をこうむったことが認められた。

研究者らはツバメをさらに綿密に観察し、2年間分のデータを分析して、個体数の減少を引き起こしたメカニズムの特定を試みた。しかし、ムソー、彼の博士号取得共同研究者、アンドレア・ボニゾリ=アルクアティ、その他の共同研究者らが先日、サイエンティフィック・レポーツ誌で公開した別の論文*で報告したように、ツバメ雛個体の末梢赤血球を検査した結果、放射線量に正比例する作用の結果としての遺伝子損傷は認めることができなかった。それでもなお、さらに詳細な研究の結果、幼鳥の個体数の減少と割合の低下が共に認められた。

ムソーはこう語る――「災害のあと、あの最初の夏は“最高線量”の地域に入ることがかなわず、次の夏は“中程度の線量”の地域の一部に踏みこむことができただけですので、この研究では、バックグラウンド被曝線量の比較的狭い範囲を扱っていました。したがって、ああいう種類の関連を見出すのに、わたしたちは比較的貧弱な統計検出力しか使えなかったのですし、あれほど少ししかツバメが残っていないという事実とそれを結びつけるとなれば、なおさらのことです。災害の前には、一定の地域に数百羽いたことがわかっているのですが、ほんの2年後には、数十羽が残っているのを見ることができただけです。羽数の減少は、実に劇的でした」。

世界のなかで、フクシマでいま進行している事態をみぬく洞察力をあたえてくれるはずのもうひとつの場所は、ウクライナで1986年、放射性物質の壊滅的な放出が起こった現場、チェルノブイリである。ムソーは、チェルノブイリ+フクシマ研究イニシャティブがカロライナで2000年に設立された時からの主任として、これまで20年間にわたり、野生地帯に生きる動物に対する放射能の影響に関する大規模な研究活動を確立してきた指導者であり、比較を引き出すのに唯一無二の適任者である。

ムソーと彼の長年にわたる共同研究者、CNRS(フランス国立科学研究センター)のアンダース・モラーは鳥類学会誌の別論文*で、フクシマとチェルノブイリにおける鳥類種の反応の異なる様相を論じている。2か所の現場それぞれの放射線による影響の差異は際立っていた。チェルノブイリの変異原性状況において、渡り鳥が周年留鳥に比べて顕著に悪く、その一方、フクシマではその逆が真だった。

ムソーは次のようにいう――

「それによって、わたしたちがたった今、フクシマで見ているものは基本的に――定住動物がそこに長く滞在すればするほど、それだけ大きな影響を受けますので――毒性作用をおよぼしている放射線被曝の直接的な結果によるものであることが示唆されています。チェルノブイリでは多世代を重ねたあと、渡り鳥が一層大きな影響を受けていますが、ひとつの可能性として、これは変異蓄積の違いを反映しています。

「渡りをする鳥類種のDNA修復能力は、少なくとも渡りにつづく短期間、損なわれています。渡り鳥の羽ばたきのあと、運動の影響で酸化ストレスが生じ、抗酸化物質――たとえば、ビタミンE、カロチノイド類――のレベルが正常値より大幅に低くなって、それほど急激な減耗効果をこうむらない留鳥類種に比べて、放射線が渡りをする鳥類種にとって厳しい打撃になるのでしょう」

研究関係者たち、そして鳥類愛好家たち全般にとって、最大の痛恨事であろうことは、フクシマで事態が進行する様相である。これまでの4年間を通して、地域におけるバックグラウンド放射線量が低下傾向にあるにもかかわらず、鳥類に対する事故の有害な影響は拡大傾向にある。


ムソーはいう――「最初の夏には、放射線量と個体数の関係が否定的な形で動き出しましたが、関係の強さは年ごとに増大してきました。そこで、わたしたちは鳥類の個体数と鳥類種の数の両方で実に驚くべき減少を目撃しているのです。ですから、放射線量レベルが下がっているとはいえ、これらの高レベル地域で、生物多様性と個体数の両方が劇的な影響を見せつけているのです」

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