2015年4月8日水曜日

ウッズホール海洋学研究所【ニュースリリース】カナダ沿岸で微量のフクシマ放射能を検出


ウッズホール海洋学研究所
Woods Hole Oceanographic Institute


ニュースリリース
ブリティッシュ・コロンビア沿岸で
微量のフクシマ放射能を検出
即時広報版
201546日 メディア広報室 (508) 289-3340 media@whoi.edu
ウッズホール海洋学研究所(WHOI)の科学者たちは、北米の沿岸で採取した海水試料から、2011年の福島第一原子力発電所事故に由来する微量の放射能を初めて検出した。ブリティッシュ・コロンビア州ユークレットにおいて、ユークレット水族館の協力により219日に採取した試料に、人間と海洋生物に対して影響を与える恐れがあると国際的に認められたレベルよりじゅうぶん低い、極微量のセシウム(Cs134および137が含まれていた。
WHOIの科学者たちはこれまで15か月間にわたり、フクシマ由来の放射性核種の痕跡を探して、米国とカナダの西岸およびハワイの60か所以上で市民ボランティアの協力を得て、試料を収集してきた。研究チームは、カリフォルニア州北部の沖合100マイル(150キロ)で採取した試料に検出可能なフクシマ由来の放射能が初めて含まれていたと昨年11月に報告した。しかしながら、一般のみなさんが2013年から試料採取をしてきた海浜や海岸沿いでは、まだ放射能は検出されていなかった。
2011年から太平洋を横断して放射能レベルの測定をしてきたWHOIの海洋化学者、ケン・ビューセラーは、「放射脳が危険になるかもしれず、事故による間違いなく史上最大規模の放射性汚染物質が海中に放出されたあと、わたしたちは注意深く海を監視しなければなりません。しかしながら、ユークレットで検出したレベルは、非常に低いものです」と語った。
WHOIの科学者たちは試料を分析して、人間活動のみに由来する2種類の放射性セシウムを探した。セシウム137は大気圏内核兵器実験の「残存物」であり、その半減期が30年と比較的に長いので、世界の海洋の全域で見つかる。つまり、試料中のセシウム137の半分が崩壊するのに、30年かかる。フクシマの原子炉は空前の量のセシウム137を、同量のセシウム134とともに、海に加えた。セシウム134の半減期は2年なので、海洋中で検出されるセシウム134はすべて最近になって加えられたもの――そして、最近のセシウム134排出源は唯一フクシマだけである。
ユークレット試料には、フクシマ由来であることを告げる兆候、セシウム1341立方メートルあたり1.4ベクレル(Bq/m3)(水1立方メートルあたり、1秒間の崩壊事象の回数)、セシウム1375.8 Bq/m3含まれていた。これらのレベルは昨年の夏、カリフォルニア州北部海岸の160キロ沖合で測定されたものと同じである。セシウム含有量がユークレット試料の倍のレベルである水のなかで、毎日6時間ずつ1年間、泳ぐとしても、被曝する放射線量は、歯科でレントゲン検査を受けるさいのエックス線量の1000分の1以下である。
モニタリング活動
沿岸海域の放射能監視を担当する米国政府機関は存在しないので、ビューセラーは試料を収集するのに、クラウド・ファンディングおよび"Our Radioactive Ocean"[「わたしたちの放射能の海」]の名称で知られる市民科学率先活動に支えられてきた。その結果は、次のウェブサイトで一般に公開されている: OurRadioactiveOcean.org.
「今後、もっと多くの地点で検知可能なレベルのセシウム134が見つかるとわたしたちは予測していますが、海流および沖合と沿岸海域の海水入れ替わりはとても複雑です。海岸に近づくほど、放射能拡散の予測が複雑になりますので、この試料採取ネットワークを維持するためには、一般のみなさんのご支援が必要です」と、ビューセラーは述べた。
ビューセラーのグループと、カナダ、ヴィクトリア大学のジェイ・カレンが率いるInFORMと呼ばれるカナダ資金のプログラムが提携することによって、ブリティッシュ・コロンビア州の海岸沿いに12か所のモニタリング拠点が追加されることになった。さらに、カリフォルニア州ラ・ホヤのスクリップス海洋研究所との共同で近くおこなわれる航海によって、沖合の試料採取海域が新たに10か所加わることになる。また2015年、WHOIの物理海洋学者、アリソン·マクドナルドが率いるアメリカ国立科学財団 出資プロジェクトには、今年5月、ハワイ・アラスカ州アリューシャン列島間を航海する研究船で採取した250点以上の海水試料を分析するための資金が用意されている。
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ウッズホール海洋学研究所は、マサチューセッツ州ケープ・コッドの私立・独立組織であり、海洋調査、エンジニアリング、高等教育に貢献している。米国科学アカデミーの勧告にもとづき、1930年に設立された研究所の主任務は、海洋および海洋と地球全体の相互作用を理解することであり、変わりつつある環境における海洋の役割に関する基本的な理解を伝達することにある。詳しくは次のウェブサイトを参照のこと: www.whoi.edu
ケン・ビューセラー Ken Buesselerは、ウッズホール海洋学研究所(WHOI)の研究主幹であり、海洋における天然および人工の放射性核種の研究を専門にしている。彼の研究には、大気圏内核実験のフォールアウトの研究、黒海に対するチェルノブイリの影響のアセスメント、太平洋における福島第一原子力発電所に由来する放射性核種による汚染の調査がある。ビューセラー博士は、WHOI海洋化学・地球化学部の部長、米国全球海洋フラックス合同研究計画およびデータ管理事務所の執行科学者を務め、また2年間、全米科学財団、化学海洋学計画のプログラム参事の任にあった。彼は2009年、アメリカ地球物理学連合のフェローに選ばれ、2011年、タイムズ高等教育誌によって、2000年~2010年の10年間で最も多く論文が引用された海洋科学者に指名されている。彼は目下、WHOI海洋・環境放射能センターCenter for Marine and Environmental Radioactivity)所長である。詳細は彼の研究室サイトを参照のこと: Café Thorium.
「わたしたちの放射能の海」(ourradioactiveocean.org)のモニタリング活動は、420人以上の個人による献金とスポンサー団体(sponsoring organizations)に支えられている。
初出公開日:201546
海水温の衛星測定(色調で表示)と海流の方向(矢印)がフクシマ由来の放射能が運ばれる場所を示すのに役立つ。大規模な海流が海水を西方向へ太平洋を横断して運ぶ。丸印は海水試料が採取された箇所を示す。白丸は、セシウム134が検出されたかった採取箇所。黄色の丸は低レベルのセシウム134が検出された採取箇所を示す。2015219日、ブリティッシュ・コロンビア州ユークレットの波止場で採取された海水試料から少量のセシウム134が検出された。昨年11月には、沖合で低レベルのものが検出されている。(ウッズホール海洋学研究所)
福島第一原子力発電所を背景に、研究船甲板上に立つWHOIの海洋放射性物質化学者、ケン・ビューセラーは、フクシマ惨事のあと、最初の国際海洋学遠征隊を組織した。彼は、北米西岸沿い各地で海水試料を収集し、彼のWHOI研究室で分析する市民科学試料収集活動、OurRadioactiveOcean.orgを創設した。彼の分析の結果は、OurRadioactiveOcean.orgに掲載され、一般公開されている。(写真提供 Ken Buesseler
【推奨サイト】
Fukushima and Our Radioactive Ocean(フクシマとわたしたちの放射能の海)

ウッズホール海洋学研究所と太平洋水族館の共同制作、米国海洋大気庁の球面上科学(SOS)システムで表現するビデオ。


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