2013年11月7日木曜日

BBC: フクシマ原発で危険な作業が着手へ~4号炉プールの核燃料の取り出し



2013116

デイヴィッド・シュックマン、科学エディタ
Article written by David Shukman Science editor
フクシマ原発で危険な作業が着手へ
Fukushima nuclear plant set for risky operation
津波のあと、激しく損傷した建屋から1000体以上の燃料棒集合体を移す必要がある。

危険をはらみ細心の慎重さを要する作業が、フクシマ原発で始められようとしている。
技術者たちは、大破した原子炉建屋のひとつから1000体以上ある燃料棒集合体の最初のものを抜き取る準備をしている。
これは、現場を安定させる長い道程の、不可欠だが、危険な段階であると見られている。
目下、燃料棒は4号炉建屋の貯蔵プールに不安定な状態のままで置かれている。
この建屋は、20113月、東北大地震・津波につづく爆発でひどく破損している。
安全な燃料棒の移動は優先度が高いが、建屋を補修し、計画を練るのに何か月もかけて、はじめて可能になった。
ある要人は、「非常に困難な作業になるでしょうが、やらなければなりません」と記者に述べた。
燃料棒はウラニウム燃料のペレットを詰めた長さ4メートルの管であり、恐ろしいことに、惨事のさい、一部が損傷した可能性がある。
津波が日本沿岸を襲ったさい、氾濫した海水が原子炉に予備電力を供給するディゼル発電機を水没させた。原子炉3基が部分的メルトダウン状態に陥った。
偶然にも、4号炉は点検中であり、したがって、すべての燃料棒は貯蔵中だった。しかし、隣接する原子炉のメルトダウンによる水素が蓄積し、それが4号炉爆発の原因になったと信じられている。
津波の後の日々、爆発による4号炉貯蔵プールの破損が危惧され、当局はプールを水で満たすための窮余の一策として、ヘリコプタや消防ホースを使った。
核の安全の指針原則は、核燃料を常に水中に保つことである。空気と接触すれば、過熱の恐れがあり、汚染を拡散させる放出の原因になりかねない。
したがって、燃料棒の抜き取りは身を削るような作業になるだろう。
経済産業省の高官は、水を満たしたキャスクに燃料棒22本の束を入れ、それを吊り上げて移すことになると記者に語った。
この作業には、元のクレーンを解体したあと、大破した建屋に設置された新しいクレーンが使われる。
 
安全な燃料棒の移動は優先度が高いが、建屋を補修し、
計画を練るのに何か月もかけて、はじめて可能になった。
束ごとに取り出す一回分の作業に7日から10日はかかると記者は聞いている。
決定的に重大な問題がふたつあり、そのひとつは、燃料棒そのものに漏れを起こしかねない損傷があるか、もうひとつは、燃料棒が空気と接触しないようにキャスクの水密性を保てるかである。
経産省高官は、核燃料からの「放射能漏出」の可能性や核燃料を収容したキャスクの落下した場合などのリスクを認めた。
高官は、負荷を支えるための補助ワイアや電源喪失時に核燃料を保持する仕掛けなど、「対策」が講じられていると話した。

原発保有会社、東電が公表した説明資料は、危険を最小化するために考えられた安全システムを列挙している。


たとえば、燃料プールそのものが補強され、核燃料キャスクの重量が450kgだけであるのに対して、クレーンは1トンの負荷に対応できる。
衝突試験によって、燃料キャスクが落下した場合、変形するとしても、水密性は損なわれないという。
次の段階として、燃料棒は冷却システムを備えた新しい「共同」プールに収納される。
経産省高官によれば、「共同プールは、おそらく10年とか20年といった長期間の使用が計画されており、将来にありうる地震と津波に備えて、補強されることになるでしょう」。
東電の文書によれば、燃料棒は損傷の兆候を調べられることになる。惨事のさいに大量のガレキがプールに落下したので、これは現実のリスクである。
文書は、腐蝕検査の結果、これまでにかすかな兆候が見つかっただけであり、「燃料の信頼性に影響する腐蝕はない」と記す。
だが、作業がはじまって初めて、技術者らが燃料棒を詳しく目視して、その状態を評価する機会がかなえられる。
原子力規制当局の幹部は、「カメラによる点検では、燃料棒は大丈夫に見えますが、損傷されているか、確かなことはわかりません。わかりようもありません」と記者にいった。
事故の時点で、4号炉の燃料棒のすべてがプールに保管されていたので、特に危険だったと彼は語った。
作業が計画通りに進めば、次いで123号炉が投げかける重大な課題が注目されることになる。
経産省高官によれば、最近の調査の結果、それぞれの原子炉でメルトダウンが起こったにもかかわらず、現在の温度が安定していることがわかった。
12号機では、読み取りデータが一次格納容器というものに水の存在を示し、溶けた核燃料棒がこの安全バリアを貫通していないこと示唆している。
3号炉の放射線レバルが高いため、このような検査を実施できないが、原子炉圧力容器のデータを用いて、当局者は一次格納容器にやはり水があると見ている。
その一方で、現場は漏出した放射能汚染水の海への流出に相変わらず悩まされている。
東電が燃料棒移動作業の正確な時期を確認することはないだろうが、これまでの東電による危機対応が国民の怒りを多大に招いていることから、この最近のできごとに求められる慎重さはきわめて重要になる。


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【付録】
フクシマを解体する:
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専門家らは、これは前例のない作業であり、失敗すれば惨事になるという。

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