2013年11月24日日曜日

【アメリカ原発事情】NRCの保安査察:インディアン・ポイント原発はテロ集団の訓練場?


原発でテロ訓練?
NRC
のインディアン・ポイント保安査察
Posted by: roger6t6 | 20131121

ロジャー・ウィザスプーン Roger Witherspoon
原子力規制委員会(NRC)は、インディアン・ポイント原子力発電所の保安体制について、防災訓練の一部を犯罪分子らがみずからのテロ訓練に利用する公算など、重大な欠陥の有無を調査している。
記録によれば、インディアン・ポイントの役員らは内部の保安通信システムが外部の第三者によって妨害されたり遮断されたりする事例を10年以上にわたりおおむね無視してきた。保安通信の意図的な妨害が、10年にもわたるいたずらなのか、それとも個人または集団がインディアン・ポイントの防災訓練をテロ攻撃のさいに混乱を生じさせるみずからの能力を試す機会として利用してきた結果なのか、わかっていない。
しかし、2003年にジェームス・リー・ウィットがニューヨーク州の委託を受けた防災計画の分析において初めて報告して以来、「個人または集団」による意図的な通信妨害が断続的につづき、ついには201211月に防災訓練を中止に追い込むまでになったという事実にNRCが駆り立てられ、調査に乗り出すことになった。
訓練参加者らによれば、じっさい、インディアン・ポイント保安システムへの不法侵入者らは最近では非常に図太くなり、訓練のはじめに保安担当者らが作成する指示を記録したうえで、その記録を何回も繰り返し再生することによって、ネットワークの受信端末を混乱させ、ついには支障が生じた保安ネットワークを使い物にならなくさせるまでになった。また、電子侵入者らは明らかに原発敷地から12マイル以内にいた。
マンハッタンから約25マイル(40km)、ウェストチェスター郡のインディアン・ポイント原発2基の所有会社、エンタジー・ニュークリアに対して、8月に米連邦地裁に申し立てられた訴訟で、2名の元保安担当官――スキップ・トラヴィス警部補およびジェイソン・へトラー警部補――が要点をまとめた最近の陳述は、一連の失態のなかで最も衝撃的になりえた事態をうかがわせるものだった。エンタジーの広報担当者はこの件について論じるのを拒否した。
NRCの公表記録には、ウェスト・ポイントから南に約10マイル(16km)、ハドソン河畔の田園地帯に立地するブキャナン原発の保安業務や訓練になんらかの問題があること示す証拠が見当たらない。インディアン・ポイント23号炉に対するNRC20131月付け評価は、保安を含む全領域で「緑」、つまり最高得点である。(http://www.nrc.gov/NRR/OVERSIGHT/ASSESS/pim_summary.html
NRCは訴訟で浮き彫りになった問題点について書きとめはしても、原発の保安業務に対して繰り言をいうばかりで、ほとんどなんの処置も取っていない。その問題点とは、次のとおり――
Ÿ  l  作業記録と職務適格性報告が改竄され、保安要員が過労であっても、週あたり労働時間限度を超えて作業することが許されてきた。
l  「侵入者」が原発攻撃のさいに採用すると思われる侵入経路を保安要員に教えることによって、実力行使訓練の有効性を損なってきた。
l  周辺探知システムに欠陥があり、「テロリスト」の原発への侵入箇所とサイト内の展開場所を防衛側が知ることが不可能になっていた。20111011日、NRCが査察していた実力行使訓練のあいだ、技術的に盲目状態になっていた結果、「すべての『テロリスト』が首尾よく周辺に侵入し、インディアン・ポイントの内部の攻撃目標を特定し、全面的な炉心メルトダウンを引き起こすことに成功した。訓練のあいだ、どの保安要員もテロリストをひとりも殺せなかった」と訴訟で申し立てられた。
l  NRCが査察した20134月の実力行使訓練では、検知機器の欠陥と内部通信の障害とがあいまって、「テロリスト」の目標到達を許してしまった。ヘトラ―とトラヴィスは、4月の訓練が「現実のテロ攻撃であれば、メルトダウン炉心50マイル(80km)圏内で暮らし、働く人間は死滅していた」と申し立てる。
l  内部通信システムに予備電源が備わっていない。その結果、全電源喪失事態において、保安部隊の通信手段がなくなる。
原子力規制委員会スポークスマン、ニール・シーハン氏はEメール覚え書きで、「NRCは訴訟で提起された課題に気づいております。当局は、当局の管轄にある訴訟事件で申し立てられた施設の安全および保安にかかわる課題のすべてについて評価しております。NRCには、施設所有者の適正な連邦安全・保安要件遵守を確保するための施設監視拡大プログラムが用意されております」と述べた。

9.11テロ攻撃以降、NRCには、公表されているものと、公表できない「防護対策」情報と考えられるものに関して、厳格な規則が備えられてきた。公式9.11報告によれば、インディアン・ポイントは、世界貿易センターのツインタワー上層部が雨や霧に覆われて識別困難であった場合に備えて、代わりの攻撃目標として偵察され、選ばれていた。ツインタワーに引き換え、地域の空港に供されるハドソン川空路は川の水面上たったの500フィート(150m)に設定されている。ハドソン川湾曲部のまんなか、空中に300フィート(90m)以上も突き出ているインディアン・ポイントの双子ドームの場合、悪天候であっても見失うのがむつかしいだろう。

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保安問題、とりわけサイバー保安問題は、NRC当局者が一般人と論じない主題である。それでもシーハン氏は、「わたしは、当局の原子炉監督手順の一部にはサイバー保安査察も含まれているとだけ言及させていただきます。そのような査察を通して、企業の問題に関する要因評価も含め、どのような過去の問題にも、当局が対応することが可能になります」と付言した。
しかし、シーハン氏は、FBI、または他の連邦法執行機関や保安機関がインディアン・ポイントで提起された課題について協議してきたのかという質問に応じられなかった。FBIのスポークスウーマンは、いかなる審査であっても、当局は関与を認めることも否定することもしないといった。
2003年ウィット報告(http://bit.ly/gQjdK3)で公表された通信妨害に関して、一般公衆はなんらかのNRC査察が入ったとは聞いていない。当時、放射線検知班の班長らは25セント硬貨を持ち歩いており、公衆電話を探せば、気づいたことを報告できるので、通信妨害は関係ないとエンタジーが返答し、広く批判を招いた。そのようなローテク巡回業務には、もはやお目にかかることができない。
マンハッタンの電話ボックス
当時のウェストチェスター郡行政官、アンドリュー・スパノ氏は今週のインタビューで、「エンタジーはいつも、まるで会社がやらなければならないものかであるように、これらの訓練を扱ってきました。わたしは、彼らが訓練を真剣に受け取っていたことがあるとは思いません。彼らの最近の設備問題を見ても、驚きません。無能であれ、設備の欠陥であれ、軽視するわけにはいきません」と語った。
アンドリュー・スパノ
最も広範囲にわたって文書化された通信妨害の証拠が、201211月に実施され、NRCの保安評価チームが査察した3日間の訓練を台無しにした。ヘトラ―とトラヴィスは長時間のインタビューで、問題の一部は、エンタジーが「不意打ち攻撃」のシナリオを立案し、NRCは台本の進行通りにチームがどれほど上手に反応しているかを査察しているという事実に潜んでいると回想した。NRCの規則では、攻撃者の侵入箇所、人数、攻撃目標など、台本の予備知識を参加者が与えられていないことになっている。
「訓練は最初から滅茶苦茶でした」とトラヴィスはいった。「操作員らはすべてのできごとの筋書きを持っていて、銃を振り回しつづけたり、台本を飛び越して、「攻撃」が勃発する前に、われわれを防御のために送り込んだりしたのです。われわれは最初から3度もやりなおさなければなりませんでした」
通信妨害がはじまったのは、テロ侵入チームからインディアンポイトを守る試みの4回目のときだった。「だれかが周波数を重ねて訓練巡査部長の声を再生したのです」とトラヴィスはいった。「先刻のわれわれの会話を録音し、われわれの周波数で通信データを再生しました。彼らは訓練を中断し、持ち場に付いているだれかがラジオで物まねをしているのではと考え、ラジオをチェックしました。
「だが、だれかがそうしたチェックのための通信を録音し、再生して、またもやわれわれを妨害しました。その人物は明らかに、われわれの訓練全部をリアルタイムで聞いていて、起こっていることをすべて知っていました。彼らは入力信号を電子識別機器で観察しましたが、特定できませんでした。基地のだれのものでもなかったのです。そこで、われわれは訓練を取りやめました」
信号が妨害されたのは、これが最初ではなかった。頻繁に起こったことなので、エンタジーの保安担当者らはそれに彼ら独自の名前をつけた。「いたずら」である。
問題は、保安チームが用いる時代物の設備に潜んでいる。「わたしは何回も当番で通信妨害に遭遇しました」と、保安歴25年の古強者でインディアン・ポイントの保安班長、トラヴィスは説明した。「システムが妨害されているので、どこそこへ移動しろと誰にもいえません。われわれの操作盤は、ボタンを叩いて、入力信号を打ち消すタイプのものではないのです。われわれの湾岸各局の無線通信システムは、40年前の原発建設時に設置された特注品です。
「その結果、オンエアしているだれもが電波を独占できます。ある個人がマイクをオンにして、テープで固定したままにすれば、バッテリー電源が尽きるまで、周波数を独占できます。割り込めません。相手を遮断できません」
エンタジーは2012年末までに通信機器の一部を更新したとヘトラは口を添えた。「だが相変わらず干渉があり、ある電波周波数が別の周波数に干渉するのです。1000メガヘルツ妨害機――おおっぴらに購入できる機種――があれば、だれでもインディアン・ポイントの保安用周波数をすべて台無しにできます。しかも、現場にいる必要すらないのです」
外部からの通信妨害の問題を、原発のエアリンクス検出システムの機能不全がさらに悪化させていると元保安担当官らはいう。
15分の『起動』時間内に、システムは14回もクラッシュしました」とトラヴィスはいった。「その最初の晩から、欠陥システムでした。天候が荒れ模様になれば、いつもクラッシュします。その意味では、これはノンストップの問題です」
保安担当官2名は彼らの訴訟で、「20122月から20135月までに、エアリンクス・コンピュータがフリーズし、監視カメラがフリーズし、警報装置が境界フェンスの動きを検知せず、警報機が鳴らず、など、エアリンクスの『機能不全総数』が数万回に達した」と陳述した。
フィル・ムシガース
これらが相まって、インディアン・ポイントの保安要員を効率的に「聞かざる、言わざる、見ざる」の三重苦にしている。
双子原子炉の閉鎖をめざす環境団体、リバーキーパーのプログラム・ディレクタ、フィル・ムシガースは、エンタジーがつづけている通信妨害の放任は深刻な問題であり、即座に対処する必要があるという。
「他のいかなる業界でも、重要な基盤の問題がこれと同じようにあれば、施設は閉鎖され、独立機関による検査が実施され、保安体制が有効であると証明されるまで、操業は許されないでしょう。この点で、そこで起こっていることは、笑える状況であるようです」
これほど深刻で、これほど危険でなければ、笑えることだろう。



【ロジャー・ウィザスプーン記事】



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