2013年11月25日月曜日

ABC News【海外TV放送】フクシマ:子どもの甲状腺癌の発症急増を巡って

フクシマ:子どもの甲状腺癌の発症急増を巡って


マーク・ウィラシ―:フクシマの母親たちが――なにか見つからなければいいがと願いながら――幼い娘たちや息子たちをひっしと強く抱きしめています。平田病院に来ている子どもたちの何人かは、核惨事が勃発したとき、生まれてすらいませんでしたが、それでも害とは無縁というわけではありません。
0:25
小池トモコ:「情報を持っているのは、行政の人たちだったりするので、ちゃんともっと公表させてほしいな、というのは思います。どうなっているのか、まったくわからない状況、なにがなんだか、わからないようなわたしたちには……ことになっているので、信用できない……」

0:51
ウィラシ―:小池トモコさんは、4歳のサキちゃんと2歳のユウタくんの母親で、ユウタくんはフクシマの原子炉がメルトダウンしたときから、ほんの2週間前に生まれました。
1:00
小池トモコ:「インフルエンザとか、予防接種受けてなかったりしたのですが、かかることなかったのですけど、そういうのに去年かかってしまったりして、抵抗力がちょっとなくなって……将来のことを考えると、なんというか、どうなっちゃうのだろうと不安な気持ちになることは、多くあります」
1:27
ウィラシ―:小池さんは別口の放射能検査にも子どもたちを受けさせにいっていました。小池さんのように、大勢の親たちが甲状腺癌を心配しています。子どもたちが福島県の実施する検査を受けると、所見はありませんでした――が、ここ民間の平田病院で再検査を受けたところ、4歳のサキちゃんの甲状腺に嚢胞(のうほう)が見つかりました。

1:57
小池トモコ:「2個かな、嚢胞が見つかったのですけど、ショックですよね、やっぱり……県の検査がちょっと杜撰といいますか、ちゃんと診てもらえなかったのか、それとも……」
2:16
菅谷昭博士:「福島を見ていると、18歳までですけど、けっこう数が多いのですよね。早く出ています」
2:27
ウィラシ―:菅谷昭博士は、フクシマの放射線と甲状腺癌の関連について、結論を急ぐべきでないとわかっていますが、目の当たりにすることに深く憂慮しています。なんといっても、彼は元甲状腺専門医であり、5年間、甲状腺癌を発症したチェルノブイリの子どもたち数百人を手術してすごしました。

2:48
菅谷昭博士:「現地に行って、ぼくは一人ひとりの子どもたちを診て、その切ない気持ちとか、つらい気持ちを知っているから……」
3:00
菅谷昭博士:(学校の生徒たちに)「福島の原発事故が日本で、ああいう事故が起こってしまったということは、たいへん残念なことで……」
3:07
ウィラシ―:松本市の現市長、菅谷昭博士は、日本の子どもたちが、6000人の子どもたちが甲状腺癌にかかっていることがわかったチェルノブイリと同じ程度に、甲状腺癌の憂き目にあうことはないと信じています。
3:22
菅谷昭博士:(生徒たちに)「いまそこで元気にいた人が、死んでいくんだよね」
3:26
ウィラシ―:しかし、発症率が高くなった明確な証拠があります。2011年の惨事の前には、子どもの甲状腺癌の発症率は百万人に1人か2人でした。現在では、いままでに県の検査を受けた約20万人の子どもたちのうち、18人が甲状腺癌の確定例、25人が悪性疑い例とされています。これは異常に高い発症率です。
(訳注:上記のデータは、2013880日開催の第12回福島県「県民健康管理調査」検討委員会で公表された数値。直近の1111日開催の第13回検討委員会では、手術後に乳頭癌と確定したものが26例、良性と判明したものが1例、悪性疑いが32例と公表された。なお、疑い例とは、細胞診で悪性と診断され、手術を待つ段階のもので、手術の結果、はじめて確定診断となる)
4:01
菅谷昭博士:「福島の先生たちは、こんなに早く出るはずがないから、これは事故と関係ないといわれるけれど、それはもうほんとうに非科学的な……なかなかそれは、ぼくらにとっては、受け入れるような理由じゃないですよね」

4:20
ウィラシ―:他のチェルノブイリ経験者たち、たとえば内科医の鎌田實医師もまた、症例の急増は徹底的に調べ上げられるべきであると信じています。
4:32
鎌田實医師:「福島県の県民健康管理調査の委員会が昨年、甲状腺癌の子どもが何人か出たときに、即座に関係ありませんっていうふうに言い切った。こういうスタイルは、医者としては、あるいは科学者としては正しいスタイルではなくて……関係があるかもしれないといって、だからスピードアップして、質の高い検診をしたほうがいい。すべて、そこが欠けているのですね」

5:15
ウィラシ―:全員が憂慮しているわけではありません。フクシマからはるか遠く離れ、ジェラルディン・トーマス教授はインペリアル・カレッジ・ロンドンの癌分子病理学の専門家です。彼女はまた、1986年にウクライナで起こった核惨事のあと、放射線に被曝した人間の試料を分析するチェルノブイリ細胞バンクの設立に助力しています。
5:39
ジェラルディン・トーマス教授:「フクシマを追っていますと、日本で甲状腺癌がいささかでも増えることはないだろうとわたしは考えていますし、それというのも、フクシマで放出された放射能の量がチェルノブイリのものより、ずっとずっと少なかったという簡単な理由によります。問題を探せば、特に日本人がじっさいになさっているように信じられないほど感度のよい技術を用いるとすれば、なにか見つかるでしょう。その問題の一部なりと見つけると、それを過大に解釈して、不必要に人びとを心配させることのないように気をつけなければなりません」

6:10
ウィラシ―:トーマス教授は、不必要な心配と恐れが親たちを不必要な選択に駆り立てていると信じています。
6:19
ジェラルディン・トーマス教授:フクシマでさえ、一部の女たちは、心配だからという理由で中絶をしました。放射線は将来の子どもになにもしないはずですが、放射線が悪さをするという心配が彼女らをうろたえさせ、だれも知りたくない中絶に追いこんだのです。
6:43
マツモト・メグミ:「なくならないです…わたしが生きているあいだ。この子が生きているあいだにも、なくならない可能性があるから、ずっと心配なのですけど……」


6:55
ウィラシ―:ふたたび民間の平田病院です。もうひとりの母親、マツモト・メグミさんが2歳になる息子、ルイ君を甲状腺検査に連れてきています。
7:05
マツモト・メグミ:「県はまだ、一回も通知が来ていないので、自分でやるしかないということで、ここで検査をしています」
7:15
ウィラシ―:甲状腺癌の重要な点として、早期に診断されれば、ほとんどの場合、首尾よく治療できますので、当局の率直な透明性が重要になります。
7:35
マツモト・メグミ:「なにか信じたいけれど、信じ切れないというのもあるし…この先、どうなるのかなという心配のほうが、ちょっとありますね」
7:49
ウィラシ―:わたしがフクシマについてお伝えしてきた多くの事例でおわかりのように、秘密主義が当局者らのお決まりの姿勢になっています。わたしたちは福島県に、2011年以降の甲状腺癌患者について、年齢構成と詳細な情報の開示を正式に要請しましたが、拒否されました。
8:11
菅谷昭博士:「それ、どうしてかわからないのですけど、伏せちゃっているのですね。データをはっきりやらない(公表しない)から、疑惑を生んで、そうとう高いのじゃないかなと思わせちゃうのは……それでいま、ぼくはそうとう腹が立っちゃうのです。というには、ぼく自身が、たとえば甲状腺のスペシャリストであれば、次にこういうことはどうなっているの、と思うわけですね」
8:41
鎌田實医師:「県民調査の秘密会がいくつかあって、それを暴露されて、いままでの対応は、なんかとても民主主義国家の対応をしていたとは思えないような対応をしてきたと思いますよね」
【ビデオ出処】
オーストラリア放送協会(ABC)海外通信
The Next Wave
放送日:2013115
通信員:マーク・ウィラシー Mark Willacy

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