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2013年11月19日
決定的な局面に入ったフクシマ収束作業
11月18日、東京電力福島第1原子力発電所、4号炉建屋内の使用済み核燃料プールから 核燃料棒を取り出す作業で、吊り上げられ、作業員らによって動かされる核燃料キャスク。 |
アントアーヌ・ブルーア
2013年11月18日
日本の損壊した福島第1原子力発電所は、事業者が現場浄化実施計画の最も決定的な段階に踏みこみ、またもや世界の注目を集めることになった。
技術者らは、1500体以上の使用済み核燃料集合体のうち、最初の22体を2011年3月の天災で損傷した原子炉建屋のひとつから抜き取る作業をはじめた。
この作業は、複雑で数十年かかる解体プロセスの厄介だが不可欠な段階であるとみなされている。
無所属の核コンサルタント、マイクル・シュナイダーは、4号炉建屋のプールに不安定な状態で保管されている使用済みウラン燃料の取り出しは喫緊の課題であるという。
「これは、チェルノブイリ事故による放出量の何十倍にもなる量のセシウムの話なのです」とシュナイダーはいう。「大きな危険が、新たな地震、あるいはどのような衝撃によっても、プールが抜けてしまい、(核燃料の)頂部まで水位を保てなくなれば生じます。そうなれば、使用済み核燃料が加熱し、発火しかねません」
他の3基、1、2、3号炉の炉心は、大規模地震と津波が原発を襲ったあと、メルトダウンを起こしてしまった。
当時、4号炉は停止中だったが、水素が隣り合う原子炉から建屋に浸入し、爆発にいたった。
使用済み核燃料棒の建屋からの移動は、数か月もの修復作業と計画立案を経たのち、初めて可能になった。作業員らは大破した建屋を補強し、鉄骨の覆いをかけた。新たな構築物の頂部に巨大なクレーンが設置された。
米国原子力規制委員会の元委員長で東京電力株式会社・原子力改革監視委員会の委員長、デイル・クライン氏は、核燃料の取り出しが現場浄化作業の「一里塚」になるだろうと語った。
「4号炉プールの使用済み核燃料を扱うための新たな燃料取扱機器を建造するにあたり、技術者のみなさんは大いに創造力を発揮しました」とクライン氏はいった。「フクシマ4号炉で使用済み核燃料にかかわる活動で最も印象的だったのは、あの使用済み燃料を安全で安心な形で移動するために、従事者らが示した激務、献身、創造性だったとわたしは考えます」
作業中、吊り上げ装置が貯蔵プール内に降ろされ、高レベル放射性物質を含む燃料の細い数十本も棒を束ねた長さ4.5メートルの集合体を吊り上げ、水を満たしたキャスク内に降ろす。東京電力サイトに作業説明用の広報ビデオがある。
建屋の最上部に設置された遠隔操縦クレーンは――22体もの多数の集合体を収納した――99トンのキャスクをプールから吊り上げ、トレーラーに移す。キャスクは、より安全な近くのプールに搬送される。
福島第1原発の小野明所長は今月はじめ、東京電力は作業が円滑に進むと予想していると語った。「基本的に他の原子力施設の解体で採用されてきたのと同じ段取りを進めるわけです。ですから、その点で、経験済みの仕事に取り組んでいるのです」
防護服とマスクを着用し、一時貯水タンクを視察する原子力規制当局の一行 |
数多いリスク
専門家たちはそれでも、福島第一原発の燃料棒の取り扱いには相当なリスクが付きまとうと警告する。京都精華大学の細川孔明教授は「高レベル放射線が決定的な要素です」という。「作業中、まずいことになっても――あるいは、うまくいっていても――どんな場合でも、燃料の近くに行くことができません」
プール内は水中真空掃除機を用いて清掃されている。だが、ガレキの小片が残っているかもしれず、それが集合体の円滑な除去の支障になるかもしれない。
また、集合体のいくつかが損傷しており、取扱中に放射能が漏れることも多いにありうるという懸念も残る。11月13日、使用済み核燃料集合体の3体が、なんと2011年の災害に前に損傷しており、キャスクを用いてプールから取り出すことができないと発表された。東京電力は「これらの核燃料集合体を共用プールへ運搬する方法を検討中」としている。
だが、細川教授とシュナイダー氏は、作業中にありうる最悪の事態は、キャスクがプールの壁に衝突する場合であり、そうなれば、冷却水喪失を招いてしまう。
だが、細川教授とシュナイダー氏は、作業中にありうる最悪の事態は、キャスクがプールの壁に衝突する場合であり、そうなれば、冷却水喪失を招いてしまう。
東京電力は、2014年末までに作業を完了することを望んでいるとしているが、どのような失策があっても、少なくとも30年はかかるとすでに予想される解体工程に相当な遅れが生じかねないと専門家らは警告する。
将来の課題には、メルトダウンを起こした原子炉3基の形の崩れた炉心を除去するという、もっと複雑な仕事などがある。細川教授は、1、2、3号炉の状況が「完全な五里霧中」にあるという。「燃料棒がどこにあるのか、またどのような状態なのか、なにもわかっていません」と教授はいった。
もうひとつの重大な問題は、福島第1原発で1000基以上のタンクに保管されている大量の放射能汚染水の扱いである。ここ数月来、タンクは何回かの漏出事故を起こしている。
シュナイダー氏は、迫りくる数々の課題に対処するには、実効的な国際支援が緊急に必要であると語った。
「わたしたちは2年半にわたり、東京電力が現場を安定化させる状態にないことをはっきり見てきました」と氏はいう。「状況は悪化しています。東京電力は状況に対処したり、現場を持続的に安定化させる構想を考案したり、開発したりすることができていません」
シュナイダー氏は、現場を安定化する具体的な計画を立案するための国際作業チームの結成を支持すると語った。チームには、核反応物理学、汚染水管理、廃棄物管理など、重要分野の最良の専門家たちが参画することになるだろう。
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