2016年1月13日水曜日

【海外論調】幼魚が死滅するとき――海水温上昇と漁業資源の減少 @hokaimagazine




Coastal Science and Societies 

環境の変化は多くの魚種にとって、乱獲以上に、生息数に悪影響をもたらす最大の要因になっている。Photo by Rotman/Jeff Rotman Photography/Corbis

有益な魚類が幼魚のうちに死滅するとき
気温の上昇が幼魚の生存率を抑制している。

ブライアン・オーウェンズ Brian Owens
2016112

気候変動が魚を幼いうちに殺害している。世界漁業資源データに対する最近の分析[Changing recruitmentcapacity in global fish stocks]によれば、成魚になるまで生存する魚の比率は過去60年間にわたり、10年間ごとに平均3パーセントの割合で下落している。

生態学博士課程の大学院生、グレッグ・ブリテン(Greg Britten)は39海域における127魚種について、漁業資源量の変化に関する統計をまとめ、幼魚死亡率の増加の要因の大部分が海水温の上昇および植物プランクトン個体数の減少である可能性があると考察した。

この研究は海洋水の温暖化が単なる潜在的な問題ではないことを見せつけている――それが数十年にわたり魚類の個体数に影響をおよぼしているのである。

成魚になるまで生存する魚類の個体数――「漁業資源補充量」――の3パーセントの減少は、検証対象にした魚種のすべてに対する世界平均値である。データをより詳しく掘り下げると、地域ごと、魚種ごとに特有な傾向の統計分布範囲がわかる。

たとえば、北大西洋における漁業資源量は10年間に8または9パーセントの減少を示しており、北太平洋のそれが比較的に安定しているのに比べて激変している。これはおそらく、太平洋における過去数十年間の環境変化の幅が小さく、また大規模な営利漁業の歴史が大西洋に比べて短いからであろう。

ブリテンは、概して植物プランクトン個体数が長期的に最大幅で減少している海域において、漁業資源の補充量が最大幅で減少していることを突き止めた。魚類の幼生にとって、プランクトンが主な餌になるので、これには理があると彼はいう。だが、海水温の上昇のために、低温の深海水に含まれる栄養素が高温の表層水に混じりこみにくくなり、プランクトンの個体数が押し下げられている可能性があるとも彼はいう。

環境要因が魚類の個体数の減少を引き起こした主たる問題ではあるが、大西洋タラのような、いくつかの優良漁獲種にとって、現実には乱獲が、幼魚が成魚に育つまで生存する能力に最大の影響をおよぼしている。

ブリテンは、この研究が地場の魚種個体数における時に気まぐれな短期的な変動の下に長期にわたる持続的な世界規模の減少傾向が隠されていることを示しているので、漁業管理にあたる人たちが将来における資源量管理の方法を決定するに際して、これを活用してほしいと願っている。

カナダ政府海洋水産省がノヴァスコシア州ハリファックスで運営するベッドフォード海洋研究所の漁業学者、ケン・フランク(Ken Frank)は、種々の要因が特定の魚種の資源量に影響をおよぼしている様相のメカニズムに関する詳細な情報がデータに不足しているので、この研究を実地に用いることは難しいだろうという。「これこそ、管理者たちが必要としているものです。メカニズムがわからなくて、どのように改善するのですか」と、彼はいう。

ブリテンは、それでも管理者たちはこの研究の知見を活用する方法を見つけるべきであり、とりわけ環境変化が資源量に影響をおよぼす様相に関する説明を取り入れるべきであるという。「この研究には、管理者たちに有益な情報があります。環境に持続的な傾向が見受けられ、同一海域における21種の個体数が減少しているとすれば、たぶんその傾向を決定のさいに組み込むべきなのでしょう」と彼はいう。

Species: Fish
Scientific Fields: EcologyFisheries

【クレジット】

Brian Owens, “When Good Fish Die Young,” Hakai Magazine, January 12, 2016, accessed January 12, 2016, http://bit.ly/1SeLSzq.


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