カウンターパンチ
事実にもとづく実名報道
事実にもとづく実名報道
2016年1月22日
グリーン原子力宣伝屋たちの『フクシマ・モナムール』
フクシマは収束したのだろうか? それとも始まったばかりなのだろうか? 頭をかきむしっても許されるだろう。東北地震と津波が引き起こした核メルトダウンから、早くも5年近く、惑星上屈指の苛酷な放射能の破局的事故は、ほぼ完璧にメディアと人びとの意識から消えていった。情報の虚空のさなか、そのようなできごとの破滅的な歴史は、核の宣伝屋たちが拡散している悪質な神話に呑みこまれてきた。
フクシマ炉心溶融事故の経緯報告改訂版を端折って言えば、次のように進行した。福島第一は、再来しそうもない未曾有の事象の一撃をこうむった。安全装置が作動した。メルトダウンはたちまち収束した。放射能汚染の拡散は抑えこまれ、修復された。危機の結果、死者も病人も出なかった。それ行け、ドンドン!
真っ先に、この否認のウサギの巣穴に頭から跳びこんだ御仁のひとりが、英国はサリー大学の核物理学者、パディ・レーガン教授である――「われわれは55基の発電炉を保有する国の破滅的な地震を目の当たりにし、そのうち3基がそれ以来の問題を抱えているものの、すべての炉が完璧に停止した。これは巨大な地震であって、核施設の復元力と構造安定性を試験したと思えば、地震の作用に非常に立派に耐えたようだ」。
レーガン、その他の原子力熱心党にとって、フクシマ核メルトダウンは教訓話ではなく、原子力の安全性、効率性、耐久性を証明するリアルタイムの実例として役立った。それを『フクシマ・モナムール』、あるいは『博士の異常な愛情、または私は如何にして心配するのを止めて原子力を愛するようになったか』と呼ぼうではないか。
そのような極端な修正主義は、レーガンの同類たち、その他『ビッグ・アトム』のお雇いガンマンの場合、とりわけ連中の金運にとって剣呑な危機的状況を迎えているいま、予想の範囲内のことである。もっとシュールなのは、核産業と一部の著名環境活動家たちのあいだにピッタリ収まった殺し屋であり、この状況はこの秋のパリ気候会議で熱狂状態に達した。嫌われジェイムズ・ハンセンや道化師ジョージ・モンビオトなど、核産業に自由契約で雇われたサクラは、核エネルギーを気候変動の終末的脅威に対する工学的なデウス・エクス・マキナ(救いの神)として宣伝しながら、ジェット機で世界を飛び回って、ゴジラの鼻柱をへし折るような二酸化炭素の足跡を残した。ハンセンは、「原子力反対派は人類の未来を脅かしております」と説教するようなことまでしたのである。恥ずかしいことに、今や大勢の環境主義者たちが、原子力を環境学的にまだましな一種の必要悪として宣伝しているのだ。
もちろん、この類の終末機械の正当化には、なにも新しいものはない。原子力の生き残り策は常に懐疑心の意図的な保留に頼ってきた。苛酷なポスト・フクシマ時代にあって、たいがいの人は直感的に核兵器と原子力の共生的な連携関係に気づいており、このような恐怖には水をささなければならない。その結果、核産業複合体は、当代屈指のよこしまな詐欺師、エドワード・「水爆」・テラーが熱心に吹聴した、平和のためのアトムといったお伽話をでっちあげた。
テラーはロバート・オッペンハイマーを、平和オタクだ、安全保障上の危険人物だとそしって、つまみだしたあと、ローレンス・リヴァーモア研究所の自室で店を開き、原子力と爆弾を第二次世界大戦後の経済を推進する産業エンジンとして使うために設計を開始した。テラーの製図板から飛び出した最初の狂気の構想は、オペレーション・チャリオット(古代二輪戦車作戦)、すなわち水素爆弾の制御された(ママ)爆発を使って、アラスカ州ポイント・ホープはイヌイット集落近くのソーントン岬に大水深港湾を掘削する計画である。
作家テリー・サザーンの造形人物、ドクター・ストレンジラブの実在モデルであるテラーは1958年、原子力フラッキング(岩盤破砕)プランを考案した。テラーはリッチフィールド石油と共同で、アルバータ州北部で原子爆弾100発を爆発させ、アタバスカ・タールサンド層から石油を抽出する構想を練った。このプロジェクト・オイルサンドと通称されていた計画は、ソ連側のスパイがカナダの石油産業に潜入しているという情報を諜報機関がつかむにおよんで、オシャカになった。
テラーはカナダ人の神経衰弱に苛つき、即座に眼をアメリカ西部に向けた。彼はまず、水飢饉にあえぐカリフォルニア州民に、20発あまりの核爆弾を爆発させて、西サクラメント渓谷に水路を掘削し、サンフランシスコに水を引く構想を売り込んだ。それに続いて、平和目的の核爆弾22発を爆発させ、カリフォウニア州南部のブリストル山脈に穴を穿ち、州間ハイウエイ40号線を建設する構想を打ち出した。幸いなことに、どちらの計画も実現しなかった。
テラーはまたもや石油産業に目を向けて、地表下6,000フィート[1,830メートル]の深度で30キロトン核爆弾に点火して、コロラド平原の地下に埋蔵された天然ガスを解放する構想を提案した。プロジェクト・ガスバギー(ガス運搬車計画)の名称で売り込んだ、このようなマントル層破砕爆発によって、天然ガスの流れを「刺激する」と請け合った。確かにガスは刺激を受けたが、同時に高レベル放射能で汚染されたことも判明した。
さらに決定的なことに、後にイスラエルの核兵器計画の開発を支援することになるテラーは、1957年にアメリカ化学会でおこなった講演で、化石燃料の燃焼が気候変動を促す温室効果ガスを否応なく生成し、それが巨大嵐、長期にわたる旱魃、氷冠の溶融の主因になるだろうと断言した最初の科学者になった。彼の解決法とは? 石炭・ガス発電所の電力を原子力発電所の世界ネットワークで置き換えればよい。
往年のエドワード・テラーが提示した狂気の着想はいま、ホコリを払われ、ガイア仮説の本家、ジェイムズ・ラヴロックなど、ニュークリア・グリーンズ[核推進の環境保護論者]によって、悪辣なご開祖さまの名を出すこともなく、さながら中古品販売のように売り込まれている。
現在、稼働中の発電炉は460基ほどあり、その一部は耐用期限をはるかに超えて動いているものの、世界の電力需要の10パーセントをまかなっている。テラーの環境保護路線の弟子たちは原子力の総シェアを50パーセントに拡大したいと望んでいるが、これは、モガディシオ[ソマリアの首都]からカトマンズまで、ざっと2,100基の原子力湯沸し器を新たに建設することを意味している。すべて障害なしに稼働できる公算は、いかほどになるだろう?
その一方、フクシマに目を戻せば、世界の報道陣に気づかれないまま、放射能関連としては最初の血液癌(骨髄性白血病)が子どもたちと浄化作業員らから検出されている。また昨年中にオレゴン州とカリフォルニア州の沖合で漁獲されたクロマグロのフクシマ核メルトダウン由来の放射性セシウム137を検査した結果、すべての個体が陽性と判定された。生態系放射能の時代が到来した。別に心配することはない。セシウム137の半減期は、ほんの30.7年だ。
【筆者】
ジェフリー・セントクレア(Jeffrey St. Clair)は、カウンターパンチの編集員。新刊書“KillingTrayvons: An Anthology of American Violence”[トレイヴォン殺害事件~アメリカの暴力アンソロジー](ジョアン・ワイプジュウスキー、ケヴィン・アレクサンダーと共著)。
【クレジット】
Counter Punch, “Fukushima Mon Amour: the Hucksters of the Green
Atom,” by Jeffrey St. Clair, posted on January 22, 2016 at;
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