国家権力による弾圧に対しては、 犠牲者の思想的信条、 政治的見解の如何を問わず、 これを救援する。
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郡山通信
東京五輪VSフクシマ(その2)
東京2020オリンピック・パラリンピックの開催まで2年を切り、福島県はもちろん、政府一丸となってフクシマ核惨事後の「風評払拭!」「福島復興!」キャンペーンに必死なようだ。
原発事故収束のための最前線基地・駐車場として使われていたナショナル・トレーニング・センター、双葉郡楢葉町のJヴィレッジが、全天候型練習場など、豪華な装いも新たに再開され、サッカー選手やファンを招いているのも、その一例。福島県が五輪聖火リレーのスタート地に選ばれ、福島市の県営あづま球場でオリンピック野球・ソフトボール競技の予選7試合の挙行が予定されているのもそうだ。
二〇一三年九月のIOC総会で安倍首相が「状況は完全にコントロールされている」と大見得を切った手前もあり、県内観光客や原発事故視察団の増加も期待されることから、原発マフィアとしては「風評払拭」のために、目に見えない放射能を可視化する存在の払拭を画策している。
経産省の多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会事務局は、「風評被害の問題については、福島県内で完結するものではなく、広く国民の皆様がこの問題をどう認識し、どのような懸念をお持ちかなどをお聴きした上で、今後の検討を進めていくことが必要と考えています」と公聴会告知サイトで謳うが、実際の会場は、八月三〇日の双葉郡富岡町、三一日の郡山市と東京都の全国で三か所だけ。
この小委員会は、資源エネルギー庁・原子力発電所事故収束対応室の管轄であり、二〇一六年十一月の第一回会合から二〇一七年十月の第六回会合までの資料概要が対応室サイトに掲載されているだけであり、公聴会に向けた準備状況は本年七月の第九回会合で示されたはずだが、不明である。なお、第六回の議事概要を読んでも、汚染水の処分にまつわる具体的な危険性は議論されず、もっぱらお馴染みの「風評被害」論が幅を利かせている。
公聴会の配布資料によれば、トリチウム水タスクフォースが示した処分方法は、①深度二五〇〇メートルの地層に注入、②希釈し、海洋に放出、③蒸発処理し、高温水蒸気として大気に放出、④電気分解して、水素を大気に放出、⑤セメントなどで固形化して地下構造物に埋設であり、一押しは言うまでもなく、一番安上がりの②海洋放出処分。
[注]すべての案に、枕ことば、または原発マフィアの常套句で「安全性を確保した上で」と断り書きされているのが笑わせる!
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東京電力などはこれまで、福島第一原発のメルトダウン炉三基から汲みあげた高レベル汚染水を多核種除去設備(ALPS)で濾過することによって、トリチウムを除く核種を「すべて」除去できると説明してきた。原子力規制委員会の田中俊一・前、更田豊志・現委員長らはこの説明に依拠して、トリチウム水の海洋放出は安全だと主張する。
米国ウッズホール海洋学研究所の海洋放射線学者、ケン・ビューセラー氏はVOAニュース*で「トリチウムだけでなく、ある程度までタンク内に残っている、セシウム、ストロンチウムなど、劣位の原子を検査したい」と語っているが、このような知見は「風評払拭」一本槍のこの国に伝わらない。有害物質を一〇〇%除去できるフィルターは存在しないのが、この世の常識なのに、この国では非常識呼ばわりされる。
*[注]VOA=ヴォイス・オブ・アメリカ
ところが公聴会直前になって、東京電力の測定でトリチウム以外に、ストロンチウム90(半減期二九年)、ヨウ素129(一五七〇万年)が国の基準値を超えていたことが相次いで報道された。東京新聞の社説は、「トリチウムは生物のDNAの中にまで水のごとく入り込み、遺伝子を傷つける恐れがある」と説いた。
はたして、公聴会は沸騰した。富岡会場では漁業者らが海洋放出の不当を切々と訴え、筆者が傍聴した郡山会場では、海洋放出に反対する声が圧倒的で、厳しい条件つきの賛成が意見陳述人一四名のうち一名。石油備蓄用の一〇万トンタンクなどを使う陸上保管がなぜ選択肢から除外されるのかと問う意見が多かった。地元、原発いらない福島の女たちに加え、故・水戸巌氏の妻、水戸喜世子氏がはるばる関西から駆けつけ、理路整然と意見を陳述したのも特筆ものだろう。
小委員会メンバーからも、「長期保管の選択肢がないこと(がおかしいとの考え)には、まったく同感」という声があがる始末。日頃から風評払拭に熱心な開沼博氏も委員席に鎮座していたが、形勢不利と見たのか、とてもおとなしくて、声がよく聞き取れなかった。
公聴会の結果、放射能汚水水を希釈して、海洋に放出するという、政府や東電をはじめ、原発マフィアの思惑は躓いたようだ。だが、ウソにウソを重ねて顧みない安倍晋三政権のこと、警戒は金輪際怠るわけにはいかない。
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問答を続けても埒が明かないので、バックパックから郡山市長の公印が押された「駅前広場使用許可書」を取り出すと、警察官はシゲシゲと公文書を見つめ、「音響設備の使用が無しになっているじゃないか」。「それは使用料金を郡山市に納付したうえで、広場管理を請け負っている警備会社から借りてくる設備のことだ」と説明しても納得しない。だが、そもそも許可書の上欄に、使用目的「原発はいらないことを広く訴えるための街頭啓発活動」、具体的内容「手作りプラカード・バナーを掲げる。一人ひとりが『脱原発』の思いを簡易マイクを使って発言」と明記されているのだ。
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