2015年7月11日土曜日

サイエンティフィック・アメリカン/ロイター「長期低線量被曝によって白血病リスクが上昇」

SCIENTIFIC AMERICANTM






長期低線量被曝によって白血病リスクが上昇する可能性
白血病は、1945年に日本で投下された原子爆弾が放出したもののような高線量放射線による被曝が原因になることは知られている

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キャスリン・ドイル Kathryn Doyle

【ロイター・ヘルス】フランス、米国、英国の300,000人以上の労働者を対象とする長期的な研究によって、長年にわたる低線量放射線被曝をこうむった労働者の白血病による死亡リスクの上昇が認められた。

医療従事者、それに患者さえもまた、数十年前には普通であった線量よりもずっと大量に被曝していると論文の著者らは指摘するが、癌のリスクを高める低レベル放射線による被曝線量は明らかでないと著者らはいう。

「多数の疫学または放射線学の研究によって、電離放射線による被曝が癌や白血病の原因になりうることを示す証拠があげられています」と、筆頭著者、フランスはセデックスのフォントネー=オー=ローズ・コミューン(行政区)放射線学・疫学部門のクレヴィ・レラウ(Klervi Leraud)博士はいった。

「米国、英国、あるいはフランスで電離放射線に被曝した労働者が、後に白血病と診断されると、いまでは賠償給付金を請求できます」と、レラウ博士はロイター・ヘルス宛てのEメールで告げた。

白血病は、1945年に日本で投下された原子爆弾が放出したもののような高線量放射線による被曝が原因になることは知られている。著者らは621日付けランセット血液学誌(The Lancet Haematology)オンライン版で、原爆投下後の歳月に、被爆者の白血病の症例数が増えたと指摘する。だが、今日では、そのような高線量は稀である。

研究者らは今回の研究のために、放射線被曝が検査されていた核エネルギー労働者の308,297名を考察の対象にした。その全員が、フランスの原子力委員会やその同類の雇用者、あるいは米国のエネルギー省と国防総省で少なくとも1年間は働き、あるいは英国の全国放射線労働者登録に記載されていた。

労働者たちは、国によって2000年代初期から中期の被曝データおよび健康状態が把握され、平均27年間にわたり追跡された。研究者らは白血病またはリンパ腫による死亡例を探した。

追跡期間が終了するまでに約22パーセントの労働者が死亡していた。白血病による死亡は531例、リンパ腫による死亡は814例だった。

放射線被曝の積算線量が増えると、ある種の白血病による死亡リスクが上昇することを研究者らは突き止めた。

労働者は平均して、研究期間中に積算線量16ミリグレイ(mGy)の放射線に被曝しており、1年あたりに均せば、約1 mGyになる。ちなみに、米国食品・医薬品管理局によれば、腰椎の医療用コンピューター断層撮影(CT)スキャンを一回受けると、患者は1ないし2 mGyの被曝をすることになる。

米国において、1982年の平均的な人の電離放射線による年間被曝線量は0.5 mGyであったが、2006年にはそれが3 mGyに上昇しており、その要因は主として医療被曝であるとレラウらは書く。

研究者らはこの新研究において、総被曝放射線量が1グレイ(1,000 mGy)増えるごとに、労働者の白血病リスクは3倍に跳ね上がると計算した。慢性の骨髄性白血病に対する影響が最も甚大であり、リスクは1グレイごとに10.45倍も上昇した。

「こうした知見はとりわけ新しいものではなく、他の研究による知見を集約しているにすぎません」と、ドイツはマインツの大学医療センターに所属するマリア・ブレットナー博士は述べた。博士は、最近の2年間で職業被曝政策が変更され、積算被曝量が削減されたと指摘した。

研究結果は積算被曝線量の増加が白血病の過剰リスクを招いていることを示しているように見えるものの、論文の統計誤差が大きく、誤った正比例関係を示している可能性が残ると、ブレットナー博士は論文に付属する評言に書いている。

エネルギー労働者にとって、「たいがいの――すべてでなくても――国の放射線安全基準は、非常に高いです。職業人の限度が定められ、この限度に達すると、被曝の可能性のある区域で働くことは許されていません」と、ブレットナー博士はロイター・ヘルス宛てのEメールに書いた。

核産業で就業する人たちは、放射線による健康被害を知っていると、レラウ博士は述べた。

「こうした従業員はバッジを装着しており、放射線被曝によって起こりうることを確かに知っています」と、レラウ博士はいった。

白血病リスクを増大させるのに、放射線と合わせて、他にどのような要因が関与しているのか、またある種の人たちの放射線被曝に対する感受性が特に高いのか否か、ほとんどわかっていないと、ブレットナー博士は語った。

「現状では、ある人たちが他の人たちより放射線感受性が高いのかどうか、知るための検査法はありません」と、彼女はいった。

だが、自分の意見では、「通常」の核業務が他の産業分野の仕事よりも危険というわけではないと、彼女は述べた。

Lancet Haematol 2015.


【クレジット】

本稿は公益・教育目的の訳稿。


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