2015年7月10日金曜日

@fairewinds【核の経済学】化石燃料・核エネルギー経済の終焉と21世紀型エネルギー経済




核の経済学

The Economics of Nuclear


201578


キャロライン・フィリップス Caroline Phillips, フェアーウィンズ理事

フェアーウィンズ・エネルギー教育のわたしたちは、今年2015年がエネルギーの未来にとって転換点になると信じております。わたしたちは長年にわたり、エイモリー・ロヴィンス、マイクル・シュナイダー両氏、そしてマーク・クーパー博士など、洞察力のある方がたが、再生可能エネルギーの未来のほうが、石炭、石油、核、ガスのパラダイムよりも適切であることを示す現実的なデータと経済分析を提示なさるのを耳にしてきました。わたしたちはいま、イーロン・マスク氏のパワーウォール、つまりソーラー・パネルの電力で充電する家庭用や産業用のバッテリーなどの発明によって、この方がたの予測が実現しようとしているのを目のあたりにしています。マスク氏の発明品は蓄電コストをキロワット時あたり2ないし4セントまで削減するものであり、世界的なクリーン・エネルギー経済への道を開くものです。ソーラー発電コストは、キロワット時あたり6セントほどです。ですから、発電コストと蓄電コストを合わせると10セント、またはそれ以下になりますが、新規原子力発電所の場合、発電コストは16セントで高止まりしています。

エイモリー・ロヴィンス氏は、40年間にわたるエネルギー政策研究履歴を、エネルギーの未来はエネルギーの過去に似ていないという考えに捧げてきました。傑出した環境思想家であり、ロッキー・マウンテン研究所の創立者、エイモリー・ロヴィンス氏は、2011年出版の書物“Reinventing Fire”[山藤泰訳『新しい火の創造』ダイアモンド社]を著しました。ビル・クリントン[元]大統領が「賢明で詳細、包括的な青写真」と賛辞を寄せる『新しい火の創造』は、化石燃料や核によるエネルギーに依存せず、しかも巨額の産業コストを削減する、交通運輸、建設物、電力における既存市場に依拠した新機軸を探究しています。ロヴィンス氏はフェアーウィンズの友人であり、2年前にヴァーモントを訪れ、クリーンな再生可能エネルギーを育成することで核の力に頼らない世界エネルギーの未来について、フェアーウィンズ主任エンジニア、アーニー・ガンダーセンを相手にビデオ対談をなさりました。

ガンダーセンは世界ウラニウム・シンポジウムにおいて、原子力の経済分析に関するプレゼンテーションをおこない、電力事業者とエネルギー企業がわたしたちを中央集権的な発電所方式の20世紀型パラダイムに閉じ込めようとしているときっぱり指摘しております。 ガンダーセンはロヴィンス氏と同様に、政策立案者らとエネルギー産業に対して、小型発電装置と蓄電によって地域的に配電する電力網を支えるように提案し、エネルギーの過去を模倣しないエネルギーの未来を推奨しています。ガンダーセンは、国際エネルギーおよび核政策の独立コンサルタントであり、やはりフェアーウィンズの友人であるマイクル・シュナイダーが収集なさった膨大なデータを用いて、再生可能エネルギーによる未来の経済的な利点のみならず、原子力による場合の現実的な経済的リスクを詳細に語りました。

「政策立案にあたる方がたが、現実の世界統計にもとづくリスクをご覧になれば、核を構築するような決定を下さないでしょう」と、ガンダーセンはいいます。政策立案者たちは、核反応炉を建造する企業、それに原子力規制委員会などの規制機関に影響されて、核反応炉事故の確率は、100万――炉年――に1回であると信じこんでいます。ガンダーセンは、世界に400基の核反応炉があるといいます。100万を400で割ると、2,500年に1回の核事故ということになります。ガンダーセンはさらにまた、これまでの35年間に5件の核事故が勃発したのであり、歴史的な事故頻度は7年ごとに1件になるといいます。現実の世界データをご覧になれば、経済コストと安全リスクは余りにも高いことになります。

マイクル・シュナイダー氏は、核エネルギーに関して、数えきれない国際機関、諸国政府、NGOにコンサルティング業務を提供してきました。シュナイダー氏はフェアーウィンズ・エネルギー教育と共同制作したQ&Aビデオで、フランスの核反応炉の群に見る核の力ファンタジーを論じ、その正体を暴きました。シュナイダー氏は世界ウラニウム・シンポジウムにおいて、原子力の経済史とデータ評価、グラフ化された正確な数値を提示し、原子力規制委員会の元委員長、ピーター・ブラッドフォード氏が述べた、「原子力発電所を建設して、地球温暖化を防止しようとするのは、キャビアを提供して、世界の飢餓問題を解決しようとするようなものです」という有名な引用句の真実を余すところなく明らかにしました。

最後になりましたが、今月のもうおひとりの主導的な先見者でおられるマーク・クーパー博士は、“Power Shift: The Deployment Of A 21st Century Electricity Sector And The Nuclear War To Stop It”[『パワー・シフト~21世紀型電力部門の展開とそれを阻む核戦争』]と標題した報告を公開なさいました。クーパー博士は2011年の報告“Nuclear Safety and Nuclear Economics”[『核の安全と核の経済学』]において、スリーマイル・アイランドにおける1979年のメルトダウンなど、以前の核事故を論じ、「重大な反応炉建造コスト(増大要因)」と喝破なさいました。エール大卒のフルブライト・フェローでおられるクーパー博士は、ヴァーモント法科大学院のエネルギー・環境研究所で経済分析担当の上級研究員を務めておられます。クーパー博士の立場は2014年の論文“The Economic Failure Of Nuclear Power And The Development Of A Low Carbon Electricity Future: Why Small Modular Reactors Are Part Of The Problem, Not The Solution”[『原子力の経済的破綻と低炭素電力開発の未来~小型モジュール反応炉が解決策にならず、問題の一端である理由』]で明らかであり、わたしたちは核のルネッサンスを目撃しているのではなく、期待が完全にしぼんでしまうのを目のあたりにしているのです。

新しい火の創造
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20141027

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