Lessons from the Fukushima Daiichi Nuclear Accident: A Panel Discussion from Fairewinds Energy Education on Vimeo.
2013年10月10日
このプレゼンテーションについて
今週、フェアウィンズの主任エンジニア、アーニー・ガンダーセンは、ボストン、ニューヨークの2都市で開催された『フクシマ第1核事故――終わりのない教訓』と銘打ったパネル・ディスカッションに出席した。他のパネリストは、ラルフ・ネイダ―、ピーター・ブラドフォード、菅直人、グレゴリー・ヤツコ、ジャン=ミシェル・クストーらであった。
冒頭のビデオは、アーニーがおこなった「吉日つづきの40年間ととんでもない厄日の一日」というタイトルのスピーチを録画したものである。ニューヨーク市プレゼンテーションの録画の全編は、このリンクからどうぞ。
プレゼンテーション・テキスト
サミュエル・ローレンス財団には、フクシマ第1事象のその後を論じる機会を用意し、支えていただき、格段の感謝を申し上げます。
さらに重要なことに、連邦や州の施政者らや企業幹部らがフクシマ第1惨事がほんとうに起こったと信じているなら、今日の集いは必要なかったでしょう。彼らがテレビで観ていることを信じているなら、核事故が起こったのだと理解したでしょう。「バカでも大丈夫な安全システムを備えても、遅かれ早かれバカは安全対策を出し抜く!」と理解したことでしょう。
インディアン・ポイント原発は、興味深い二項対立を提示しています。原子力規制委員会(NRC)は、メルトダウンの確率は100万分の1であると主張しています。世界に原発が400基あるとして、メルトダウンは、2,500年に1回ということになります。NRCのこの分析は、確率論的リスク評価(略してPRA)という手法にもとづいています。NRCは、ピルグリムやインディアン・ポイントのような古い原発について、より新しい原発のデータを用いて、稼働をさらに20年間継続しても信頼できると説明しているのです。まるで医者が、25歳の健康統計にもとづき、わたしの余命をいってくれるようなものです。NRCの手法を適用するなら、フクシマ第1の事象は、100万×100万×100万(10の18乗)年に1回ということになります。
だが、あれは現実の生活で起こったことです。それどころか、歴史は35年間に、スリーマイル・アイランド、チェルノブイリ、フクシマ第一・1、2、3号炉と5回のメルトダウンを記録しています(ウィンズケール、サンタスザナ、その他1ダースばかりを勘定に入れずに、ごめんなさい)。現実の数字は、7年に1回の頻度でメルトダウンが起こると明かしています。施政者らやビジネス関係者らは、インディアン・ポイントの再認可を強引にとおすために歴史を無視しているのです。
納税者がプライス・アンダーソン原子力損害賠償制度(ウィキペディア)に払い込まされ、核事故リスクを引き受けることを求められている一方、NRCや主だった政治家、原発メーカーは、インディアン・ポイントやピルグリムで核事故は起こりえないと信じているようです。人の頭脳が、ほんとうであってほしいと望むことを正当化する方向で理屈づけるとき、心理学者はこれを「動機にもとづく推論」と名づけます。
ピカリング原発の耐用年数を超えた稼働の申請が出ましたので、わたしは最近、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に証言を求められました。ピカリングの立地はトロント中心部からほんの36キロしか離れていません。トロント公聴会の陳述者たちは口々に、町の雇用と納税の主要な担い手であるので、この高経年化した原発の稼働をつづけさせて欲しいとCNSCに懇願しました。ピカリング原子力発電所は、町に住み、教育委員を務め、サッカー・チームに加わり、地元の教会の聖歌隊で歌っている大勢の従業員を雇用しているというのです。陳述は、このような素敵な人たちが、自分たちの原発は安全でないと確かにわかっていたことをうかがわせていました。
ギャリソン・キーラーは『ウォベガン湖』物語シリーズで、「…女たちはすべて強く、男たちはすべて見栄えよく、子どもたちはすべて平均以上である」と語っていますが、この状況はわたしにこのことを思い起こさせます。わたしが原発のある町を訪れると、どこでもその原発は平均よりもよいのです。歴史がわたしたちに教えるものがあるとすれば、それは、働いている男女が最高の善意の人たちであるにもかかわらず、核事故は起こるということです。
わたしはスリーマイルの操作員たちと知りあっていましたが、みなさんが地域活動に積極的に参加し、原発の近くに住んでいたにもかかわらず、事故は起こりました。原子力とは、吉日が40年間つづいても、一日がとんでもない厄日でありうる、そのような技術なのです。
チェルノブイリ事故のあと、そこの操作員の何人かと知り合いになりましたが、彼らは非常に安全意識の高い優秀なエンジニアでした。みなさんと家族らは原子炉の非常に近くに住んでいましたが、それでも事故は起こりました。これは、吉日が40年間つづいても、一日がとんでもない厄日でありうる、そのような技術なのです。
わたしは本『福島第一原発――真相と展望』を書いたあと、フクシマ第1操作員と何人か知り合いました。スリーマイルやチェルノブイリの操作員らと同じく、彼らも仕事に気を配り、自分たちの原子炉を書物のごとくに知っていました。彼らもやはり家族と一緒に原発のすぐ近くに住んでいました。それでも、またもや事故が起こったのです。原子力とは、吉日が40年間つづいても、一日がとんでもない厄日でありうる、そのような技術なのです。
施政者らや事業関係者たちは、この警句のうち、「40年間つづいた吉日」の部分を信じたくて、「どんでもない厄日の一日」を無視することにします!
エンタジーのような会社は、「わが社の原発は安全です」と主張します。これはなにを意味しているのか??? これは、原子力規制委員会(NRC)が、その原発の書類のうち5パーセントを審査し、ハイ終わりと書類箱に戻したのだということを意味します。しかし、その同じ会社は、核産業のロビー団体が、過去20年間にわたり、連邦議会がNRC委員たちを承認するのを承諾する前に、その全員について精査してきたということには口をつぐみます。それにあなたがたは、その同じロビイストたちがNRCと協力して、例の原発規制法規を書いてきたということをご存知でしょうか? ですから、エンタジー、その他の原発保有企業にとっての安全とは、インディアン・ポイントのような原発が、迎合的な規制当局によって定められた最低限の受容基準に適合していることなのです。
原子力発電所、特に商用の原発を保有する企業について、具体的にお話しましょう。
1.NRCは、多くの原子力発電所が有限責任会社(LLC)、つまりオーナー会社から分離した企業になることを許してきました。部外者のわたしたちにとって、なぜこれが問題、または懸念事項になるのでしょうか?
1.1. みなさんは、インディアン・ポイント2号機がインディアン・ポイント3号機とは別のLLCであることにお気づきだったでしょうか? 別会社にすることによって、一方が深刻な放射能漏れを起こしていても、エンタジーは他方を稼働できるのです。一方が破産宣告を受けても、他の原子炉は放射能の除染に使えないお金を稼ぐことができます。
1.2. エンタジーは、そのようなことをしないのでしょうか? エンタジーがこの合法的な操作をした例を探すなら、ハリケーン・カトリーナが襲来したあとのニューオリンズをご覧になるだけでよろしいのです。ニューオリンズの人びとが街の復興に汗をかいていたころ、エンタジーのニューオリンズLLC子会社は破産を宣言し、連邦の災害救済を適用されました。連邦政府は、地域開発区助成制度を通じてニューオリンズの貧困区域の支援に振り向けられるはずだった資金を動かし、それをエンタジーに供与しました。エンタジーは同社の幹部らにボーナスを支給しました。
2. これら、30年ないし40年間も稼働し、設計耐用年数の終わりに達し、高経年化した原発の状態は、どうなっているでしょうか?
2.1. 『インディアン・ポイント独立安全性評価報告』2008年7月31日号によれば、施設の健全性は……目に見えて劣化している。……他の設備系統や構造には、稼動状態の良好な原発の基準に届かないものもある。……委員会の見解としては、基幹的でない設備系統や装備、構造は、従業員らや一般社会に等しく、オーナー企業や操作員らの方針やプロ意識を伝えるので、重要であると考える。(同報告p.11)
2.2. ヴァーモント・ヤンキー監視委員会は、ヴァーモント州が招集したものですが、同じような問題点を暴いています――「エンタジーの原発の現状を高経年化施設であることを考慮すれば、資材を不適切に適用している問題は、高度な重要性を帯びることになる。エンタジーの原発の稼働耐用年限を想起すれば、数年以内に閉鎖される可能性を排除できず、ある時点でほぼ確実になる。過去数年間のできごとがなんらかの指標となるならば、エンタジーには、安全系統および信頼性上の重要性が明白な系統に支出を集中する一方で、信頼性上の重要性が二次的であると判断される系統には資金投入を控える傾向がある」。(次いで、強調点を加えます)「したがって、安全性と無関係な系統への資金割り当てを制限することが、エンタジーの体質になっているのかもしれない」
2.3. エンタジーはごく最近、同社の婉曲的にいう人的資本管理促進計画の5パーセントを削減すると委員会スタッフ全員に公表しました。ですから、ふたつの独立委員会がエンタジーの資金支出がふじゅうぶんであると断定しているのにもかかわらず、エンタジーは、同社の老朽化し、最も弱点のある原子炉のすべてで人員を削減すると決定したわけです。
これに対してNRCがなにをするのか、とみなさんはお考えですか? なにも、絶対、なにもしません。それどころか、ニール・シーハン、NRC第1管区PR広報官はこういいました――「……NRCには、当方の原子炉監視手続きにより、なんらかの負の影響があれば、それを判断する能力がございます」「当委員会が、検査結果および実績指標のいずれか、またはその両方によって、なんらかの負の傾向を観測する場合、それが人的資源の変動となんらかの関連があるのか、当方は判断できるでありましょう」
その件に関していえば、電力価格が下落する現状にあって、人員削減が核産業の増収策になっています。コネチカット州のミルストーン原子力発電所は、「人員を平均に近づけるために削減」しました。NRCは人員削減を許可しました。ですが、ミルストーンが業界平均に比べて人員過剰であれば、他の原発は業界平均に比べて人員過小であるはずです。なぜNRCは、そういう原発の従業員数の拡大をはかって、業界平均に達するようにする提案を持ちかけなかったのでしょうか? 業界はもっぱら原子炉スタッフの削減圧力をかけるばかりであり、NRCにはそれにストップをかける意図はありません。
フェアウィンズ・エネルギー教育のわたしたちは連日、アメリカの原子力発電所はフクシマ第1のメルトダウンした原発に比べてどうなのか、という問い合わせを受け取ります。インディアン・ポイント、またはピルグリムはフクシマ第1と比べてほんとうに違っているのでしょうか? いいえ! インディアン・ポイントとピルグリムの両方とも、もっと劣悪な特性を数多くもっています――
- インディアン・ポイントとピルグリムは、人口密集地がもっと近くにあります。それに、フクシマ第1事故の前には、日本の緊急時計画がアメリカのそれよりはるかに良好であると信じられていました。日本の強固な緊急時計画ですら、フクシマ第1のすべての安全システムが破れましたので、破綻に終わりました。
- インディアン・ポイントとピルグリムの両方とも、使用済み核燃料プールがフクシマ第1のそれに比べて5倍多い核燃料を貯蔵し、すべての原爆地上実験で放出された全量より多い量のセシウムを抱えこんでいます。そして、これはセシウムだけです……他のすべての放射性核種を考えてみてください。
- インディアン・ポイントとピルグリムは稼働年数が同じであり、第1世代の設計のものです。フクシマ第1は1971年に営業運転を開始し、津波のほんの1か月前に10年間の稼働延長免許を受理していました。フクシマ第2の運転開始は1974年です。
- フクシマ第1は地震と津波に遭遇しましたが、ほんとうに破滅にいたらしめたものは、外部電源喪失および最終放熱機能喪失でした。その両方とも、インディアン・ポイントとピルグリムで起こりえました。取水構造物に対するテロ攻撃によって、最終放熱機能喪失が起こりえます。
- 地震発生の頻度は、どうでしょう? NRCが適用するUSGS(全米地質調査所)地震災害曲線図によれば、米国内の全原子炉のなかで、インディアン・ポイントは地震による炉心損傷の蓋然性(炉心損傷頻度)が最高なのです。ヴァージニア州のノースアンナ原発における経験は、激しい地震の発生頻度が大幅に過小評価されていることを教えています。1万年間におけるノースアンナの最悪地震は、マグニチュード6であると予測されていました。それでも、マグニチュード6の地震が30年以内に発生していますので、最悪のやつがまだ来るということなのでしょう。インディアン・ポイントでは、原子炉から1マイルのところに地震断層が存在し、そのため、原発の設計耐震性よりも大きな揺れがやすやすと生じることもありうるでしょう。
では、まとめてみましょう。原子力発電所のこの上ない規模を見れば、核産業に傲慢さが根付いてしまうのもたやすいことです。わたしはRPI(レンセラー工科大学)の核工学修士号を取得して、職業生活をスタートしました。インディアン・ポイント原発が完成したとき、各工学部一同で見学に行きました。その当時でも、いまでも、印象的な建造物です。なぜ建屋がそれほど印象的でなければならないのか、だれも質問しません。そもそも、これほど印象的な構造物が必要な、これら施設のなかに、なにがあるのだろう?
しかし、原子力安全システムが破綻しうるし、破滅的な結果を残すと、わたしたちがこの目で見たいま、なぜわたしたちはこのような制御不能で管理不能な技術を構築してしまったのだろうか、と問う必要があります。これらの施設の内部にある力は、巨大であり、年から年中、1週間通して毎日24時間、封じこめておかねばなりません。操作員1人のミス、ひとつの重大な天候事象、ひとつの地震、あるいは1回のテロ攻撃があれば、ニューヨーク市はとんでもない厄日を迎え、日本のように、非常に悲しい未来に向きあうことになります。
2013年10月8日(火曜日)
「フクシマ第1核事故:ニューヨークに伝える教訓」
ニューヨーク、テレサ・L・カーフマン音楽堂
「フクシマ第1核事故:ニューヨークに伝える教訓」
ニューヨーク、テレサ・L・カーフマン音楽堂
2013年10月9日(水曜日)
「フクシマ第1核事故:ボストンに伝える教訓」
ボストン、マサチューセッツ州議会ガードナー講堂
「フクシマ第1核事故:ボストンに伝える教訓」
ボストン、マサチューセッツ州議会ガードナー講堂
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