FAIREWINDS Energy Education
フェアーウィンズ・エネルギー教育スペシャル・レポート
潘基文国連事務総長宛て「フクシマ危機」に関する公開書簡
Open Letter to UN Secretary General Ban Ki Moon RE:
Fukushima Daiichi Cleanup
Open Letter to UN Secretary General Ban Ki Moon RE:
Fukushima Daiichi Cleanup
[凡例]英語原文PDFリンク:fairewinds.orgサイトの上記アイコン
2013年9月13日
アメリカ国立非政府連絡サービス気付け
国際連合
潘基文(パン·ギムン)事務総長閣下
国際連合
潘基文(パン·ギムン)事務総長閣下
事務総長閣下
わたしたちはあなた宛てに緊急に書簡を発送いたします。放射能に汚染された現地をめぐる世界の状況は良好ではなく、福島第1原子力発電所の状況は、安定しているのではなく、しだいに悪化していることが明らかであります。わたしたちが本状を認めるのは、あなたの持続可能な未来にお寄せになる個人的な関心の故でありますが、あなたが、放射能、放射線、核テクノロジーに関して、公衆衛生、公衆安全、公益の防護を担う世界的な機関を束ねる指導者であられるからでもあります。以下の各項について、あなたがただちに行動なさることを、わたしたち一同は求めます――
1.
国際機関と日本政府を説得して、フクシマ核惨事担当として、東京電力に代えて、世界の技術者を結集した集団を起用させること。
2.
東京電力やIAEAから独立した有識者を指名し、新たな技術者集団に対し、リスク情報にもとづくフクシマの安定化・封じ込め・除染計画の策定に勧告する集団を組織すること。
3.
地域住民と地域で選出する公務員からなる、財源の確かな監視委員会を創設し、上記2集団の透明性と説明責任を担保させるとともに、影響を受けた地域住民の確かな情報にもとづく自己決定およびさらなる再生の促進にあたらせること。
4.
日本政府に5,000億USドルを超える財務費用の拠出を認めさせること。(ロイター通信「日本の『長期戦』フクシマ閉鎖」[Reuters;
Japan's
"Long War" to shut down Fukushima]、および、ガンダーセン、アーノルド、集英社『福島第一原発――真相と展望』)
5.
日本政府に対し、福島県および現地の除染のための適正な資金を確保するように求めること。
6.
日本政府に対し、多くは有毒であり、一部は放射能を帯びた、地震と津波によるガレキを運搬し、地方自治体の焼却炉で燃やすという、日本で実行中の大量焼却プログラムを停止するように求めること。
上記に概要を示した行動計画に加えて、わたしたちは、世界保健機関(WHO)、国際原子力機関(IAEA)、原子放射線に関する国連科学委員会(UNSCEAR)といった国連機関がすでに関与している放射線に関する説明および規制に対して、より広範にわたる懸念を抱いております。フクシマ核惨事に関し、この説明がいかに人間に貢献していないか、人権高等弁務官など、他の国連機関は認めております。
7.
フクシマ惨事による全癌数や死者数の予測は時期尚早であり、これまでのいかなる出版物も、よくて「推論的なもの」とみなす必要がある。福島第1原発の核惨事は終息からほど遠く、放射能漏れが止まっておらず、多数住民の長期間にわたる低線量被曝の結果が不明なので、環境や人間の健康に対する影響の全体像に関する信頼しうる推測がありえないのは明白である。福島第1原発からの放射能放出に関する最終評価は、必然的に将来、おそらくは遠い将来のことになる。したがって、放射能を監視し、それぞれの個人や地域社会を防護する方策を備え、強化することが、最大の重大事ということになる。そのような研究に将来の更新が加わる場合、一般人の避難に先立つ放射線被曝量(Potential
internal radiation dose from inhalation in the vicinity of the Fukushima NPP on
14th and 15th March 2011 the first 4 days of the
disaster; Becker, Oda 2012)を除外する世界保健機関の調査のように――鍵となる過去のデータが含まれていないことが知られているので、研究者らにとって、先立つ知見を拡張するのではなく、改訂することが義務となるはずである。さらに、日本の医師たちや科学者らは、フクシマ関連の健康への影響について、治療したり報告したりすることを許され、支持されなければならない。これまでの核災害は、患者の健康状態データ、その他の証拠が過小に報告されたり、さらには歪曲されたりさえする組織的な圧力にさらされる結果に終わった(たとえば、『人間放射線実験に関する諮問委員会:最終報告』”The Advisory Committee
on Human Radiation Experiments, Final Report” および Steven Wing et al. 1997 『スリーマイル・アイランド原子力発電所の近隣地域における発癌率の最評価:証拠と仮説の衝突』"A reevaluation of
cancer incidence near the Three Mile Island nuclear plant: the collision of evidence
and assumptions". Environmental Health Perspectives (Brogan &
Partners) 105 (1): 52–57を参照のこと)。いま、そのような組織的圧力がフクシマ事故による真の影響を軽視することを助長している。さらにまた、過去の被曝仮説に盲目的にも頼ることは、その仮説がこの類いの圧力の産物でありうるからだけでなく、すべての核惨事/被曝が異なっているので、感心しない。健康に関する国連特別報告者は、その報告に適切な研究を参照しているが、彼によれば、「スリーマイル・アイランド事故およびチェルノブイリ事故の経験は計りしれない手引きとなったが、了見の狭い事故評価は適切な手引きとならないだろう」(アナンド・グロヴァー、日本派遣(2012年11月15~26日)報告書『達成可能な最高の心身の健康を享受する万人の権利に関する特別報告者の報告』”
Report
of the Special Rapporteur on the right of everyone to the enjoyment of the
highest attainable standard of physical and mental health,” p 9)。
8.
放射線被曝に代入する放射線リスク係数を新たに定式化することが必要であり、同時に、そのような係数に関する複数の選択肢について、綿密な議論をする必要がある。残念なことに、フクシマ(および他の場所)からの放射能で被曝している日本の人びとや他の人たちに起こっていることに対して、時代遅れの仮説がいまだに適用されている。体内に摂取された放射性核種によるもの、それにまた人の一生涯にわたるものの両者について、電離放射線の影響に関するもっと正確な知見は、いまだにリスク評価の計算に組み込まれていない。「古い」(ずさんな)仮説は、女性一般、そしてとりわけ幼児に対して不均等におよぶ害を考慮していない(全米科学アカデミーBEIR
II p.311「表12D-1、12D-2:癌発症率および死亡率の生涯寄与リスク」[Tables
12D-1 and 12D-2 Lifetime Attributable Risk of Cancer Incidence and Mortality])。公的な見積もりは、この現実を認めはじめている(世界保険機関、2013年『東日本大震災・津波後の核事故による健康リスクの初期線量見積もりにもとづく予測』[Health
risk assessment from the nuclear accident after the Great East Japan
Earthquake...]P.54/5.2.2節「生涯リスク計算の結果」[page
54 section 5.2.2 Results of lifetime risk calculations]を参照のこと;UNSCEAR報道発表「国連科学委員会、フクシマ核事故による健康リスクはただちにない」[No
Immediate Health Risks from Fukushima Nuclear Accident Says UN Expert Science
Panel];ビデオ[UNSCEAR
Press Briefing on Fukushima - 31 May 2013])。しかしながら、この影響はいまだ世界的に放射線被曝規制に組み込まれていない。さらにいえば、内部被曝の影響を度外視していては、もはや有効ではない。体外からの種々にタイプの異なった放射線が、すでに体内にある放射線源と同等の影響を健康におよぼすとは、もはや考えるわけにはいかない(ヤブロコフ、2113年「『実効放射線量』概念の概要と批判的分析」[Yablokov, 2013, "A
Review and Critical Analysis of the “Effective Dose of Radiation” Concept"
Journal of Health & Pollution Vol. 3, No. 5 — pg 13--28.]を参照のこと)。結局、妊娠初期、あるいはその後の子宮内被曝が、健康リスクまたはフクシマの影響の見積もりに取り入れられるかどうか、明確になっていない。
9.
放射線学的分析・規制を委託されている国際機関は、フクシマからの観測データにもとづく真の基盤を生成しているべきである。いかなる健康評価であっても、人間と環境の両面における汚染レベルを織り込んでいる必要がある。線量復元の信頼性だけでは不十分であり、生物学的データを収集すれば、研究者たちが、健康効果を予測するにとどまらず、観察するのにも役立つだろう。内部被曝による不均等な影響について、また(人間、その他の)生涯にわたる不均等な害について、もはや既知のものとなっている情報の量を考えれば、時代遅れ、かつ不正確な仮説に囚われた推定からではなく、データを収集し、被曝量を直接計算することは、これら世界的な機関の責務である。国連特別報告者は、内部被曝評価のために生物学的データを収集することを支持して、こういう――「内部被ばく検査をホールボディ・カウンターに限定することを控えるべきであり、住民、避難民、福島県外の人びとを含む被災人口の全員(ママ)に施すべきである」(Grover
2013, p 23)。
10.
一般論として、公衆衛生上の懸念があるなら、公金支出と健康評価を促す必要がある。生物学の原則として、科学のための科学調査ではなく、健康調査を促す必要がある。人びとは、データ発掘ではなく、適正な医療を必要としている。日本の人びと、とりわけ親たちに、放射線被曝の医学的効果について事実を伝え、甲状腺癌など、健康異常を検出するためにおこなわれている検査について完全でオープンな情報を提供するべきである。あらゆる健康異常検査は、放射線被曝に関連した癌のすべて、その他の疾患を含めて対象とするべきである。世界は、西側陣営が「ヒバクシャ」の呼び名で知られる放射能被害者たちを治療するというより、研究するだけだった、ヒロシマ・ナガサキの戦後犯罪を繰りしてはならない。
11.
生物学的メカニズムや結果が不透明である場合、予防原則を採用すべきであり、また、物理的過程は健康に影響をおよぼす要因となる諸力のひとつにすぎないので、物理学原理だけでこれを破棄してはならないはずだ。低線量被曝が健康におよぼす負の影響を明らかにする研究を、無視するのではなく、考慮すべきである。国連特別報告者は、そのような研究を検討したあと、このことを認識し、こう記す――「…これらの知見を無視することによって、長期にわたる低線量放射線被曝が健康におよぼす影響に対する理解を妨げ、健康の脆弱さを増進する」(Grover
2013, p 6)。不幸なことに、このような懸念は今日では日本の領域をはるかに超えて拡大し、新たな予測(「福島沖太平洋に放出されたセシウム137の長期拡散シミュレーション・モデル」[Model
simulations on the long-term dispersal of 137Cs released into the
Pacific Ocean off Fukushima]にシミュレーション映像と画像)によれば、影響はいまだに拡散している。
12.
放射能に追われ自宅退去を余儀なくさせられた人びとには、どのように、どこに住むかについて、その文化と伝統を尊重した、満足しうる選択権を提供する必要がある。それゆえ、特別報告者の報告は、いかなる救済パッケージ(包括案)であっても、「生活の再建と復旧にかかる費用を含むべきである」(Grover
2013 p 24)といっている。その第一歩は、他の健康阻害要因と併せて、放射線に関する情報を提供することであり、この情報は、核産業と金銭的利害関係のある勢力に支配されるべきではない。
13.
フクシマ惨事は、家族、社会、経済の分断、そして食糧供給源と氏神の神社を含む文化的伝統の喪失による苦難をもたらした。こうした喪失は、子どもたち、親たち、祖父母たち、地域社会全体の心身の健康に対して、目に見える影響を引き起こしている。元の生活への復帰を妨げているのは、放射能であるが、その一方、被害がもたらされている場には、多くの次元がある。原子炉を建造し、稼働して、放射化した燃料を蓄積した者は、影響を受けた人びとに責任を負うべきである。特別報告者の報告は、法的枠組みによって「東京電力および他の第三者が核事故の責任を負うこと、損害補償および再建費用を支払う義務を納税者に添加しないことを明確にすべきである」(Grover
2013 p 14)といっている。福島第1原発の原子炉に装填されていたウラニウムは、オーストラリアはアボリジニの土地から産出したものであり、そこでは、伝統的な人びとが地中からウラニウムを掘り出すことに反対していた。わが国際連合の決定機構にとって、今こそ、聞き入れられてさえすれば、この惨事を防止していたかもしれない知恵を尊重し、取り入れるべき時である。
14.
世界保健機関と国際原子力機関のあいだの覚書は恒久的に破棄されるべきである。IAEAの職務は、各技術「平和」利用の拡散にある。IAEAは、この公式業務のため、同じ技術が健康におよぼす影響の独立した評価機関であることを妨げられている。
事務総長閣下、上記した、道理にかなった懸念に行動をもって対処なさることが、閣下の仕事であります。
感謝をこめて
S・デイヴィッド・フリーマン S. David Freeman
コンサルタント。「テネシー峡谷開発公社」元理事長、「ロサンジェルス水道・電力部」、「ニューヨーク電力公社」、「サクラメント市営公共事業区」の総支配人を歴任
コンサルタント。「テネシー峡谷開発公社」元理事長、「ロサンジェルス水道・電力部」、「ニューヨーク電力公社」、「サクラメント市営公共事業区」の総支配人を歴任
ナタリア・ミロノワ博士 Dr. Natalia Mironova
「ナタリア・プレブラーゼンスカヤ核安全運動」代表、生物学博士
「チェルノブイリ大惨事からウクライナの子どもたちを守る慈善基金」理事長
「ウクライナ保健省公共評議会」委員、平和大使
「ナタリア・プレブラーゼンスカヤ核安全運動」代表、生物学博士
「チェルノブイリ大惨事からウクライナの子どもたちを守る慈善基金」理事長
「ウクライナ保健省公共評議会」委員、平和大使
ベンジャミン・K・ソヴァクール博士 Benjamin
K. Sovacool, Ph.D
ビジネス・社会科学教授 「デンマーク・エネルギー技術センター」所長
ヴァーモント法科大学「エネルギー・環境研究所」法学准教授
ビジネス・社会科学教授 「デンマーク・エネルギー技術センター」所長
ヴァーモント法科大学「エネルギー・環境研究所」法学准教授
アルフレッド・C・マイヤー理事 Alfred
C. Meyer, Board Member
「社会的責任を果たすための医師団」「米国チェルノブイリの友人センター」.
「社会的責任を果たすための医師団」「米国チェルノブイリの友人センター」.
リン・ハワード・エーレル教職修士 Lynn Howard Ehrle, M. Ed,
「国際科学監視委員会」委員長 ミシガン州プリマス
「国際科学監視委員会」委員長 ミシガン州プリマス
D.M.
グラジンスキー理学博士 D. M.
Grodzinsky, DrSci.
「ウクライナ国立科学アカデミー常任理事会」常任理事・評議員、「ウクライナ国立科学アカデミー細胞生物学・遺伝工学研究所、生物物理・放射線学部」学部長、「ウクライナ国立放射線防護委員会」元・委員長
「ウクライナ国立科学アカデミー常任理事会」常任理事・評議員、「ウクライナ国立科学アカデミー細胞生物学・遺伝工学研究所、生物物理・放射線学部」学部長、「ウクライナ国立放射線防護委員会」元・委員長
翻訳・構成:@yuima21c
[訳者からのお願い]
この公開書簡は、非常に重要な文献であると判断し、一刻も早くタイムリーにご紹介するために、もっぱら拙速主義を旨として翻訳しました。賢明なる読者諸氏には、至らぬ点のご指摘など、コメント欄にいただければ、幸甚です。なお、署名者らの肖像写真、その他の画像などの検索と掲載の責は訳者にあります。
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