世界はフクシマ放射能汚染水の海洋ダダ漏れをどのように見て、どのように懸念しているのか…昨日の「BBCニュース:フクシマの放射能汚染水漏出」につづいて、アラスカの州都、ジュノーの新聞記事オンライン版を訳出します。
(yuima21c記)
ジュノー・エムパイア.com
[訳注]ジュノーJuneauは、アラスカ州の州都。人口は3万1118人(2004年推計)
エムパイア論説:
フクシマはアラスカ最大の貴重な資源を汚染しているのか?
Empire Editorial:
2013年8月25日掲載
今週、まだ事故が収束していない福島第1原発からの汚染水漏れのニュースがヘッドラインに踊った。貯水タンクのひとつが漏出事故を起こし、太平洋からフットボール競技場1面分の長さを離れただけの区域に大量の有害な廃水を流したのだ。
日本の当局者たちが、もはや事態はあまりにも重大であると発言した。彼らには国際的な支援が必要である。
2年以上前の地震とそれにつづく津波から継続して、少しずつ漏れていたのではないかという憶測がある。100パーセントの確認はされていない。証拠はまだ決定的でないという人が多い。
それでも、懸念は残る。
本稿執筆のための調査のさい、たまたま米国海洋大気庁(NOAA)が2011年7月に作成した画像が見つかった。日本と日本近海の太平洋を示した放射能汚染海水影響マップである。核廃棄物が、まるで森林火災の煙霧がたなびいているかのように、フクシマ原発サイトから西方の太平洋に伸びているのがわかる。NOAAが作成した2番目のマップは、1年近く後のもので、汚染海域は元の規模の2倍近くに拡大している。
[参照ビデオ]YouTube
この有害物質が海洋生物を汚染し、アラスカに向かっているのではないか、心配である。
世界の海洋の潮流は複雑である。だが一般的にいって、ふたつの表層流――ひとつは南からの黒潮、もうひとつは北からの親潮――が、北緯40度あたり、日本のすぐ沖合で出会っている。黒潮と親潮が合流して北太平洋海流となり、東へと向かう。フクシマは北緯37度に位置する。海流は何千マイルか先で、アメリカ西岸すぐ沖合の湧昇流にぶつかり、ふたつに分かれる。そのひとつ、アラスカ海流は北に向かい、ブリティッシュ・コロンビアとアラスカ南東部沿岸を流れる。もうひとつ、カリフォルニア海流は南に向かい、アメリカの西海岸線にそって流れる。
太平洋鮭の回遊経路も考慮に入れるべきだ。簡潔にいえば、われわれの鮭はアラスカ海流に乗って、シトカ、ヤクタット、コディアック、アリューシャン列島を経由しながら回遊する。ほとんどの場合、マスノスケ、銀鮭、紅鮭であり、最大範囲の海域を回遊する。白鮭とカラフトマスは生まれた川の近隣海域にとどまるようだ。どれほど遠くまで回遊するかにかかわらず、それぞれの種別の鮭は太平洋に乗り出し、それぞれの魚は北太平洋海流に乗って、故郷の川と産卵場に帰ってくるのであり、その同じ海流が核廃棄物を東へ運んでくるのである。
[参照画像]気象庁「3.4.2 海洋の循環の変動」より
われわれはみな、核廃棄物による過剰な被曝が癌の病因になることを知っている。いわゆる廃棄物に含まれる、セシウム137、ストロンチウム9など、特定の化学物質が魚体に取り込まれ、骨や筋肉に永久に蓄積することを理解する人も多い。
われわれは、アラスカの鮭が核廃棄物で徐々に汚染されることを懸念している。われわれの海産物に、とりわけそれを消費する人びとに、この廃棄物の影響がおよぶのではと心配である。
それに、われわれだけではない。マサチューセッツ州、ウッズホール海洋学研究所(WHOI)上席科学者であり、海洋放射能の世界的権威、ケン・ビューセラー博士(ブログ内参照記事)など、ほかの科学者たちも、魚類に対するフクシマの影響に注目している。博士の研究班は、日本の海岸線から400マイル沖合までの放射能を追跡した。研究班の測定値は、いまのところ人間や海洋生物にリスクをおよぼすほどではないという。
これは幸先のよい徴候である。だが、以前のチェルノブイリに関する科学者らの言動が、後になって悪影響の大幅な過小評価であると判明したことを忘れてはならない。
最近、この件に関してCNNに書いたビューセラーが懸念するのは、損傷した原発からの放射能レベルが低減していないことである。反対に、増大している。その記事で博士は、世界の指導層が協力して、この問題を解決するための確かな行動計画を確定しなければならないと訴えた。
日本が支援を求めるのは、グッドニュースである。また、この件がふたたび脚光を浴びるのも喜ばしいことだ。
われわれはアラスカの科学者たちが率先して調査を実施し、われわれのサケ目魚類を測定することを訴える。また、科学者らが研究結果について発言することを切望する。われわれの鮭を食べても安全だと100パーセント保証しようではないか。確かなことさえわかれば、この貴重な資源の重要性と高評価を強化するのみである。