YouTube 世界市民法廷(東京法廷・前半)
2012年2月26日、東京・日比谷コンベンション・ホール『世界市民裁判』で上演された法廷ドラマ・シナリオの法廷編です。あなたも陪審員として評決に参加できます。
第1場 法廷
●昨年6月24日、福島県郡山市の小中学生14人が郡山市を相手に、空間放射線量が年間1mSv以下の環境で教育を実施することを求めて緊急の救済手段である仮処分を、福島地方裁判所郡山支部に申し立てました。
この14人は自分たちの避難だけを考えていた訳ではありません。自分たちと同じように放射能の危険な環境で教育を受けている全ての子どもたちが避難できることを願っていました。但し、それを裁判でいきなり実現することは困難でした。そこで、14人が先がけとなって、避難を求める裁判を起こしたのです。
●本日の世界市民法廷では、この疎開裁判を皆さんによりよく理解していただくために、皆さんがよくご存知の通常の訴訟手続に置き換えて、そして陪審員が議論をするという場面を盛り込みました。
この14人は自分たちの避難だけを考えていた訳ではありません。自分たちと同じように放射能の危険な環境で教育を受けている全ての子どもたちが避難できることを願っていました。但し、それを裁判でいきなり実現することは困難でした。そこで、14人が先がけとなって、避難を求める裁判を起こしたのです。
●本日の世界市民法廷では、この疎開裁判を皆さんによりよく理解していただくために、皆さんがよくご存知の通常の訴訟手続に置き換えて、そして陪審員が議論をするという場面を盛り込みました。
ナレーター:本日の市民法廷では、疎開裁判でどんな問題がどんな風に争われたかを、争点ごとに法廷のやり取りと陪審員の議論を通じて再現します。これは昨年10月末までの疎開裁判のやり取りを再現しています。
裁判官:開廷します。(原告に向って)原告は、この裁判で何を求めているのか説明して下さい。
原告:はい、郡山市に対し、14人の原告が、空間放射線量が年間1mSv以下の安全な環境の地域に疎開させてくれるよう求めたものです。
被告:裁判長。原告に質問があります。
裁判官:はい、どうぞ。
被告:はい、原告の訴えは14人の避難ではなくて、郡山市全員の小中学の避難を求めるものです。そのような訴えは民事裁判として認められないのではないですか。
原告:いえ、それは被告の誤解です。私どもの気持ちとしては、いま放射能の危険な環境で教育を受けている全ての子どもたちの避難が実現することを願っています。しかし、この裁判ではあくまでも14人の避難を求めるものです。
裁判官:(被告に向って)ということだそうです。
被告:はい、分かりました。
第2場 法廷
裁判官:(原告に向って)原告は、どういう理由で申立をしたのか説明してください。
原告:まず外部被曝について主張します。原発を推進するICRP(国際放射線防護委員会)ですら年間1mSvを一般市民の被曝限度としています。放射線感受性がずっと高い子どもであれば年間1mSvが限度なのは言うまでもありません。
●原告らは既に、昨年3月12日~8月31日までで、7.8~17.16mSv被曝しています。
●3.11以来今年3月10日までの1年間では、12.7~24mSv被曝すると推定されます。
●その上、本裁判の審理の最終日である昨年10月末でも、原告らは依然、その時点から1年間で1mSvを超える危険な環境で教育を受けています。
●さらに、チェルノブイリ事故で、旧ソ連とロシア・ウクライナ・ベラルーシ3国が定めた住民避難基準を郡山市に当てはめると、原告らが通う学校周辺は、昨年10月末の時点でも、全て移住義務地域、住民は強制的に移住させられる地域に該当します。スクリーンの地図の赤丸がそれです。
スクリーン:汚染マップ
原告:結論として、原告が通う学校の空間放射線量は3.11以後の1年間で、年間被曝限度1mSvの12~24倍であり、チェルノブイリの避難基準と対比しても極めて危険な状態であることが明らかです。郡山市は,直ちに原告らを避難させるべきです。
裁判官:(被告に向って)被告の答弁はどうですか。
被告:福島県内の小中学生が3月11日以来、放射線による被曝の危険に置かれている事実は認めます。それ以外は不知です。
裁判官:原告が主張する、14人が3月11日以来8月末まで1年間に外部被曝する積算値、チェルノブイリの避難基準との対比の主張について郡山市は全て「知らない」ということですか。
被告:はい。
裁判官:(被告に向って)外部被曝について、被告から何か主張はありますか。
被告:あります。
裁判官:では、説明して下さい。
被告:第1に、平成23年6月と7月に実施した、原告が通う学校で積算線量計で測定した結果によれば、空間放射線量は毎時0.08~0.2μSvにすぎません。
裁判官:(原告に向って)これについて、原告の反論は?
原告:積算線量計を携帯したのは子どもでなくて、教職員です。子どもが校庭で過ごす時、「教職員」はコンクリートの校舎内で過ごすことが多いのが実態であり、測定結果がイコール子どもの被曝線量ではありません。
被告:第2に、学校滞在時間を1日8時間、年間200日と仮定した年間推定被曝線量は、0.13~0.32mSv、いずれも1mSv以下です。
裁判官:(原告に向って)これについて、原告の反論ありますか。
原告:子どもの健康を守る立場からは、被ばくは24時間で捉える必要があります。子供は,コンクリートの校舎内よりも,登下校中や,木造の自宅内で高い被ばくをします。学校での被ばくは被告が主張する程度であっても,24時間の被ばく量を計算すれば,1mSvをはるかに超えます。
裁判官:(被告に向って) この点、どうですか。
被告:不知です。
原告:裁判長、(首をかしげながら)被告の主張がどうもよく分かりません。原告は3.11以来8月末日までで既に最大17.16mSvもの大変な被曝しているという主張です。これに対し、被告は反論として、6、7月の空間放射線量の値から年間の積算値を計算していますが、その計算では3.11以後大量被曝した事実はなかったかのように扱われています。それで原告の主張をつぶせるのですか。
裁判官:(被告に向って) どうですか。
被告:被告は、3.11以後大量被曝した事実は考える必要はないという立場です。過去の被曝はこの裁判によって防止できるものではないからです。
裁判官:(原告に向って)これについて、原告の反論ありますか。
原告:もちろん原告もこの裁判で過去の被曝を防止しろとは言っていません。しかし、原告の現在の被曝の危険性を正しく評価するためには、3.11以来の過去の被曝の経過を考えなければ意味がありません。さもなければ原告をあたかも3.11以来大量被曝してこなかったとして取り扱うことになるからです。
第4場 法廷
裁判官:(原告に向って)続いて、原告の次の主張を説明してください。
原告:次に内部被曝について主張します。チェルノブイリ事故で郡山市と同レベルの放射能汚染地域で生じた健康被害のデータがあります。そのデータは郡山市の未来です。郡山市に住む原告の未来です。まず、子どもの甲状腺疾病について明らかにしたのが矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授の意見書です。
スクリーン:矢ヶ崎氏の解説を映像により上映。
原告:次に、甲状腺疾病以外の様々な健康障害について明らかにしたのが松井英介岐阜環境医学研究所所長です。
スクリーン:松井氏の解説を映像により上映。
原告:ウクライナ政府の公式報告書もこう述べています。
《被曝した子どもたちの中の健康な子の割合は減少しています(1986~1987年の27.5%から2003年の7.2%)。一方で、被曝して慢性疾患を抱えた子どもたちの割合は増加しています(1986~1987年の8.4%から2003年の77.8%)》
裁判官:(被告にむかって)原告の主張に対する被告の答弁はどうですか。
被告:不知です。
裁判官:チェルノブイリ事故による健康被害と対比して原告にどのような健康被害が生じるか、という主張についてすべて「知らない」ということですか。
被告:はい。
裁判官:(被告に向って)内部被曝について、被告の主張を説明して下さい。
被告:ありません。
第6場 法廷
裁判官:(原告に向って)最後に、原告の法律上の主張を説明してください。
原告:かつて最高裁判決は「一人の生命は全地球よりも重い」と言いました。この言葉は未来を担う子どもの命については無条件に妥当します。ましてや本件の子どもたちは、彼らには何の責任もない人災に遭った被害者です。正義・公平という法の究極の理念に照らしたとき、被害者の子どもたちが避難が認められず危険なまま命を奪われ、粗末にされることを正当化できるいかなる根拠もありません。
●被曝による被害は最先端の科学でも未解明な部分が多く、他方で健康障害が発生してからは取り返しがつかないものです。このような予見不可能性と回復不可能性を有する事故については、「疑わしきは保護する」という予防原則が採用される必要があります。ましてや未来を担う子どもの場合、無条件に妥当します。
●原告はこの裁判で、甲1号証から101号証まで証拠を提出しました。
●これによれば、本件の原告の空間放射線量は3.11以来年間12.7~24mSvであり、チェルノブイリ避難基準に照らしても、またチュルノブイリ事故による健康障害との対比からも、被告には原告を避難させる義務があることは明らかです。
●被曝による被害は最先端の科学でも未解明な部分が多く、他方で健康障害が発生してからは取り返しがつかないものです。このような予見不可能性と回復不可能性を有する事故については、「疑わしきは保護する」という予防原則が採用される必要があります。ましてや未来を担う子どもの場合、無条件に妥当します。
●原告はこの裁判で、甲1号証から101号証まで証拠を提出しました。
●これによれば、本件の原告の空間放射線量は3.11以来年間12.7~24mSvであり、チェルノブイリ避難基準に照らしても、またチュルノブイリ事故による健康障害との対比からも、被告には原告を避難させる義務があることは明らかです。
裁判官:(被告に向って)被告の法律上の主張を説明してください。
被告:原告は被曝が危険だと思うなら、自ら転校すればよいのです。郡山市は転校を妨げていません、原告に転校する自由がある以上、郡山市は原告の権利の侵害者に当たりません。
裁判官:(原告に向って)これについて、原告の反論は?
原告:原告には転校する自由があるかもしれません。しかし同時に原告は教育を受ける権利を持ちます。原告が郡山市に対し教育を受けることを希望するとき、この要求に応え公教育を実施することは郡山市に課せられた憲法上の責務です。その責務の一環として、安全な環境で郡山市の公教育を実施することも当然含まれるもので、本件はその責務が問われています。郡山市に課せられたこの憲法上の責務は転校する自由があるからといって免れるものではありません。
●のみならず、郡山市が口にする転校の自由を実際に行使することがどれほど困難を伴うものであるか、今から原告のお母さんたち語るように、この自由は多くの勤労市民にとって「絵に描いた餅」にすぎません。
●のみならず、郡山市が口にする転校の自由を実際に行使することがどれほど困難を伴うものであるか、今から原告のお母さんたち語るように、この自由は多くの勤労市民にとって「絵に描いた餅」にすぎません。
スクリーン:原告のお母さんたちの証言(なぜ、転校しないか)
裁判官:(被告に向って)続けて、被告の次の主張を説明して下さい。
被告:郡山市は福島原発事故の被害者ではあっても加害者ではありません。加害者は東京電力です。原告の権利を侵害したのも東京電力であって郡山市ではありません。
裁判官:(原告に向って)これについて、原告の反論は?
原告:たとえ郡山市が福島原発事故の被害者だとしても、原告が教育をうける権利を行使したときこの要求に応える憲法上の義務を負っています。郡山市に課せられたこの憲法上の責務は。郡山市が福島原発事故の被害者であるからといって免れるものではありません。
さて、あなたが陪審員であるとすれば、あなたの評決は?
◎世界市民法廷:いま世界中の市民が陪審員として「疎開裁判」の裁きを表明して下さい
http://fukusima-sokai.blogspot.com/2012/03/blog-post.html
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◎世界市民法廷:世界中から寄せられた陪審員の声・声・声‥‥
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◎The World Citizens’Tribunal:Please express your judgment as a jury
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