アジア太平洋ジャーナル:ジャパン・フォーカス
アジア太平洋…そして世界を形成する諸勢力の批判的深層分析
The Asia-Pacific Journal, Vol. 11, Issue 42, No. 1, October 21,
2013.
2013年10月21日
ローレンス・レペタ Lawrence
Repeta
安倍法案
日本の秘密関連法規の最後の主要な改変は、国会が自衛隊法を改定した2001年に実現し、このときに「防衛秘密」に指定された情報を保護するとした新たな条項が書き加えられている1。安倍内閣は10月15日に開会した特別国会の期間中、日本の秘密保持体制の強化を目的とした「特別秘密保護法案」の国会提出を計画している2。
提案されている規定は、2001年改定法に比べて、二つの側面で国家秘密の範囲を抜本的に拡大するだろう。第一に、秘密指定の対象になる情報の種類が拡大される。2001年改定法は、防衛大臣に「我が国の防衛上特に秘匿することが必要であるもの」とする情報を指定する権限を付与した。他の情報は範囲外である。法案は、防衛、外交、「特定有害活動」、テロ防止の4分野の情報に適用されるだろう3。
第二に、情報を秘密に指定する権限を付与される行政官庁のリストが、防衛省を超えて、内閣府および主要政府機関のすべてに拡大されるだろう4。さらに、新たな体制を実効的に強化するために、法律違反の最高刑は、2001年改定法の禁錮5年から法案の10年にまで引き上げられる*。
* 本稿は、法案または2001年改訂「自衛隊法」にもとづいて導入されるであろう刑事訴追に関連する問題を扱わない。
民主主義社会において、情報を人びとから隠す権限を政府に認める法律や規則は、いかなるものも慎重に検討されなければならない。政府による秘密の必要性の申し立ては、政府機関の行動について知る人びとの権利との均衡を図らなければならない。日本の弁護士会、その他の立憲民主主義の擁護派らは、法案が広範にわたる政府活動を人びとが知る権利を無効にすることによって、この均衡を崩壊させるだろうと深い懸念を表明してきた5。
彼らの主張を評価するために、鍵となる問をいくつか考察しなければならない。たとえば、法案は過剰指定を防止するためのチェック機能を備えているだろうか? 政府当局者は、迷えば、文書開示のリスクを取るよりも、秘密にするという「無難な選択」をするものである。以下に論じるように、過剰指定は、アメリカの体制における最も深刻な構造的欠陥であるとされてきた。指定文書の「秘密期間」はどうなっているのだろう? 秘密が必要とされる時期が過ぎた情報は、どうなるのだろう? その情報は分類され、歴史家や一般人が閲覧可能な公文書庫に移されるのだろうか?
これらの問は、いまだ答えられていない。以下にこれらをいくつか検討したあと、「国家安全保障と知る権利に関する国際原則」(通称「ツワネ原則」)、すなわち人びとの知る権利および政府が国家安全保障情報の機密を維持する必要の均衡を図るための新たな模範規則集について考察する。世界中のおびただしい数の専門家たちの作業を経て創案され、2013年6月11日、南アフリカ共和国ツワネで公表された6。
だが、わたしたちはまず、既存の2001年「防衛秘密」体制化における日本の実績を考察するべきである。これは確かに、法案体制で予想されることの最良の証拠になる。
日本の自衛隊法における防衛秘密の「指定期間と解除」
近年で最も大量に報道された日本の防衛情報の無断公開は、2010年9月、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の近海で日本の海上保安庁巡視船に激突する中国の漁船を録画したビデオにかかわるものである7。だが、そのビデオ自体は「防衛秘密」に分類されておらず、したがって、その公開は自衛隊法違反とは考えられない。漏洩者は海上保安庁要員であると特定されたが、いかなる罪科によっても起訴されなかった8。しかし、2010年の偶発事件は、より強固な秘密保護法の要求を巻き起こし、この事案を研究するための新たな政府委員会の設置につながった。
機密の日本政府情報の注目を集める漏洩が稀であることは、2009年のオバマ大統領就任以降、連邦検察当局が漏洩容疑者に対して8件も起訴したアメリカの場合と著しく対照的である9。ブラッドリー・マニングとエドワード・スノーデンは、主流ニュース・メディアやウィキリークスのようなオンライン出版で公表するために、大量の秘密データを漏洩したことで世界的に知られている。
開かれた政府を希求する人びとにとって、最も基本的な問のひとつは、防衛秘密の指定期間に関連している。通常、秘密指定は定められた期間内に限定されている。特定秘密保護法案は、最大期間を5年に設定している。この期間が満了すると、当局者らは、情報が慎重な扱いを要するままであり、したがって秘密機関を延長するか、あるいはもはや微妙な内容とはいえず、情報を指定解除して、一般に開示したり、容易に閲覧できるように公文書庫に移したりするか、決めることができるようになる。
最近、NHK10記者たちが、防衛省職員らに2001年改定法のもとで防衛秘密の指定期間を記述するように依頼したところ、詳細な返答書を受け取ることができた。2006年から2011年まで5年の期間内に、約5万5000件の記録が自衛隊法にもとづき「防衛秘密」に指定された。これら5万5000件の記録の現状はどうなっているのだろうか? 防衛省職員らによると、3万4000件は、決められた秘密期間が満了するとともに廃棄された。記録のうち、一般に開示可能なものとして指定解除されたものは何件かと問われると、当局者らは非常に正確な回答を送付した――1件である11。
この実績は、開かれた政府を希求する人びとの最大の恐れを裏付ける。
何千件もの記録が決められた期間の秘密を指定されている。この期間が満了すると、秘密指定が延長されるか、情報が廃棄されるかのどちらかになる。防衛省システムは水も漏らさない。このやり方では、廃棄されたファイルに文書化された政府行動の信頼できる歴史記録は皆無ということになる。これらのファイルは、政府関係者らの行為に対する説明責任を確保したり、未来の世代が決定的なことがらに関して歴史記録を閲覧することを保証したりするためにまったく使用できなくなる。真実の確かな証拠はブラックホールに消えてしまう。
三木由希子は長年のあいだ粘り強く政府秘密の課題を追及してきた。彼女は、政治指導者らや政府当局者らが開かれた政府の政策を追求することを求め、国家秘密に関する政府の政策決定の記録を作成するために、おびただしい数の情報の開示を請求し、問題を日本国民に説明するために、繰り返し報道メディアに登場してきた。上の写真で、彼女は、弁護士であり、ジャーナリストであった故・日隅一雄を称えるために創設された、表現の自由・情報公開・国民主権の促進に対する賞の2013年4月第1回贈呈式の受賞者として紹介されている。詳しくは、「日隅一雄・情報流通促進基金」を参照のこと。
日本の公文書法
政府の行動を歴史記録として保存する問題は、2011年4月に発効した成文法によって解決したと考えられた。「公文書等の管理に関する法律」(公文書法)は、担当官らが重要な活動の記録を作成すること、および重要な歴史的価値のある記録を公文書庫で保管することを求めている12。目的条項に、政府の記録は「国民共有の知的資源」であり、「健全な民主主義の根幹」であるとする高邁な精神の宣言が掲げられている13。法律の中心的な目的は、日本の「防衛秘密」の経験を繰り返さないと保証することである。この成文法の表現をめぐる最終交渉において、開いた政府を求める活動家たちは、匿名の政府機関員らによる国民遺産の一括廃棄に対するなんらかの防止条項が必要であると主張した。彼らの尽力によって、法律に第8条第2項が挿入され、政府機関は記録を廃棄する前に総理大臣の同意を得ることを求められることになった。
残念なことに、公文書法の起草者らは、法律が防衛秘密に適用されないことを決定したので、期限がきた防衛秘密を保存するか廃棄するかの決定のすべてが防衛庁職員らに委ねられることになった。記述したように、2006年から2011年までの期間中、彼らは、唯一1件の情報に関して、指定を解除し、一般に公開するとの結論に達した。日本の国立公文書館の「元秘密情報」受け入れ箱は空っぽである。
「特定秘密保護法案」発起人らに対する当然の問いは、この法律で保護される秘密もまた、2001年自衛隊法にもとづく秘密と同様に、公文書法の適用から除外され、したがって同じブラックホールに消えるかどうかである。NHK記者らが内閣府「情報調査室」にこの質問を投げかけたところ、回答は「われわれはそれについて考えている」だった14。
はたして「特定秘密」は解除され、開示されるか?
2013年秋季国会に先立つ日々、新聞各社は、安倍政権が広範な各界からの批判に、格別には連立政権与党の公明党の代議士らによる要求に、新法に国民の知る権利を保証する文言を入れることに同意することによって対応するのを報道した15。
冒頭に記述したとおり、法案は秘密指定される情報の範囲を抜本的に拡大し、それを報道記者、歴史家、一般市民の手の届かないところに置くことになる。この法にもとづいて、政府が自衛隊法にもとづく「防衛秘密」の前例を踏襲するなら、膨大な量の秘密記録が作成され、後に破棄されて、ほとんど痕跡を残さないことになるだろう。
開いた政府を希求する人びとは、この問題に対処するために、安倍政権の法案を修正して、情報の指定を解除する権限を有する独立第三者審査委員会を設置する条項を加えることを要求してきた。独立審査委員会の前例は日本の情報開示法と個人情報保護法にもとづき設置されていた。
ツワネ原則の起草者らは、そのような独立審査委員会の創設を、道理にかなった秘密保護システムの必須条件として提案している16。1978年、アメリカのジミー・カーター大統領は、そのような委員会である情報安全保障監督局(ISOO)を設置した17。
いまのところ、安倍政権はそのような独立委員会を創設する意向を示していない。新法の起草者らが、そのような条項、または秘密保持の必要がない情報の指定を解除する具体的な手続きを加えないなら、「知る権利」の尊重を謳う、どのような抽象的な文言であっても、信憑性がないことになるだろう18。
アメリカの経験からの覚え書き
「過剰指定」
ブラッドリー・マニングが推定70万件の機密文書を2010年に暴露したとき、彼はたかだか齢22歳であり、アメリカ陸軍内で下から2番目の階級を保持していた。エドワード・スノーデンが2013年6月に大量の秘密資料を携えてアメリカを脱出したとき、彼はアメリカ政府の使用人ですらなかった。彼はコンサルティング企業で仕事していたのである。29歳のスノーデンは大学卒業者でなかったが、マニングと同様、「最高機密」取り扱い資格を保持し、アメリカ政府が秘密と指定する情報への幅広いアクセス権を付与される立場にあった19。彼ら若輩の男たち2名がアメリカの「秘密統制」の守護者就役のために選別されたのは、なぜだろう? 答えは、アメリカ政府に機密指定された情報の総体があまりにも膨大であり、日々の仕事をこなすには、専門職員らの巨大な集団がこの「秘密」情報にアクセスしなければならないからである。アメリカ国家情報局長官の年次報告によれば、400万人以上の人たちが、機密情報の閲覧を可能にする保全許可資格を保持している20。そのうち、驚くべきことに140万人が、まさしくマニングやスノーデンと同様、「最高秘密」取り扱い資格を保持している。
メリーランド州フォートミード
国家安全保障局の本部ビル
多くの専門家らは、アメリカの秘密保護体制が、外敵に対してアメリカを安全にするよりもむしろ、じっさいには国家を弱体化していると考えている。国家安全保障専門家、モートン・ハルペリンは、次のように説明する――「この問題に関して実施された研究はすべて、とりわけ必要不可欠な措置が、大統領に対する機密報告とされる情報の量を抜本的に減らすことであると結論づけている21」。ハルペリンは、ありきたりな情報があまりにも多く機密とされているので、「本物の秘密を保護することが困難である」という。さらに、この問題から、次のような関連問題が生じる――「政府当局者らに、君たちが機密指定された情報を報道機関や国民に提供すれば、害をなすことになると説得するのがむつかしい」。
毎年、何千万件ものアメリカ政府の記録が機密指定されている22。これほど大規模な秘密保持業務は、国民が政府の活動について「知る権利」を深刻に侵害している。マニングやスノーデン、その他のような個人による行為がなければ、国家安全保障局による見境ない電子通信監視業務について、またその名において数えきれず実施される不審な活動について、アメリカ国民には見聞する方途がない。
これほど多くの人びとに関与させる巨大システムだから、国家の秘密を効率的に管理できるという考えは、笑止千万だ。アメリカ政府の秘密を大河ミシシッピにたとえれば、堤防から溢れっぱなしだったり、水路に漏れっぱなしだったりしている。
攻撃は最大の防御
アメリカ政府は、これほど膨大な量の情報の秘密維持という不可能な課題を突きつけられて、身元確認と身柄確保ができる漏洩犯に対する最高刑を要求している。マニング二等兵に対する告訴において、政府は60年の刑期を要求した。判事は8月の判決において、マニングに35年の収監を命じた。(執行猶予により、じっさいの刑期は10年に短縮される見込みがありうる)
マニングは外国政府に雇われたスパイではなかった。彼が暴露した情報は、外国の諜報機関に渡されたのではなかった。ウィキリークスによって公開され、ニューヨーク・タイムズやガーディアンなど、主流の新聞に掲載され、アメリカ人や世界中の人びとに読めるようになったのだ。類似事件の場合、たいがいの国における刑罰は、アメリカのそれよりはるかに軽い。
アメリカと最も緊密な軍事・諜報同盟国である英国の場合、諜報または安全保障情報の一般公開犯罪の最長刑期は2年である。スペインとスゥエーデンの最長刑期は4年であり、ベルギー、ドイツ、ポーランド、スロヴェニアのそれは5年である。フランスでは、7年だ。
1989年制定、英国の公職守秘法(OSA)が施行されたときから、機密情報公認アクセス権を保持する公務員10名が同法にもとづき起訴されている。英国内で炭疽菌攻撃を実施するというサダム・フセインの謀略に関連した安全保障・諜報上の情報を新聞に売り渡した件で有罪を認めた海軍下士官が最長刑期――収監1年(BBC: Anthrax officer jailed for
a year)を務め果たしたのは、もちろんのことである23。アメリカ国内であれば、この違法行為は、ブラッドリー・マニングの起訴に用いられたのと同じ法律にもとづいて告訴されただろう。
アメリカの訴追手続きは、1917年制定の諜報活動取締法にもとづいていて、これはアメリカが第一次世界大戦に参戦した直後に採択された法律であり、政府権限に関するアメリカ国民の理解が今日のそれより非常に違っていた時代に起草されたものである。「知る権利」という用語は1950年代まで登場しなかったし、アメリカ情報公開法は1967年まで採択されていなかった。1917年のアメリカ諜報活動取締法は、書かれた条文がお粗末な法律であり、この法律を矯正しなければならない判事たちからでさえ、あいまいで適用範囲が広すぎると批判されてきた。だが、現在にいたるまで有効であり、違反行為を告訴されただれをも罰すると脅す力をアメリカ政府に与えている。しかも、アメリカ政府が有罪判決を勝ち取るのに、暴露によって引き起こされた損害をなんら示す必要がない24。
マニングやスノーデンのような個人の訴追は、大ニュースになり、選ばれた個人を厳しく罰することになるが、国家安全保障情報を防護するという重要問題の解決にはならない。これは、日本が倣うべき模範ではない。
よりよい道がある。
情報安全保障の必要性と国民の知る権利との
均衡を図るための新たな規範
今年、注意深い研究に値する新たな規範が登場した。「国家安全保障と知る権利に関する国際原則」(南アフリカ共和国ツワネ市で開催された会合で完成され、発表されたので、別称「ツワネ原則」)は、国家安全保障を根拠に、情報の公表を差し控えたり、そのような情報の暴露を罰したりする政府当局に関連する法律や規定を起草したり、改定したり、施行したりするさいの詳細な指針を提示している25。日本の立法議員たちやその他、これらのことがらに関心のある人たちはツワネ原則を注意深く研究すべきである。
ツワネ原則の準備作業は、2年以上の時間をかけ、世界中から何百人もの政府の職員や元職員、軍当局者ら、専門家たちが参加して進められた。この原則は、公衆の知る権利、政府が合法的に機密のままに保持してもよい国家安全保障情報の範囲、ジャーナリスト、独立監視機関、その他、日本の立法議員らや日本国民によって、国家安全保障に関する提案を評価しているとみなされる人たちや団体の保護といった問題に対応している。
この原則は、国際法と各国の法、基準、慣習法、および専門家らの著作にもとづいている。原則が情報安全保障と公衆の知る権利との均衡を図るための現実的なプランを提示していることには、広範なコンセンサスが達成されている。
10月2日、この原則は欧州評議会の議員会議において承認された26。そのさいの報告は、ヨーロッパ全域の諸国における情報政策の元になりうるだろう。
過剰な秘密主義と政府の不正行為
最も重大な問題は、過剰な秘密主義が政府による不正行為の育つ理想的な環境を作ることである。これが、マニングとスノーデンの騒ぎから学んだ最も気がかりな教訓なのだ。
マニング二等兵がウィキリークスに与えた資料は、世界中におよぶアメリカの軍事・外交活動にかけられたヴェールを剥いでしまった。その資料には、2007年、バグダードにおいて、ジャーナリスト2名を含む民間人たちが殺された米軍ヘリ攻撃のさいに撮影されたビデオ(NYT: Video
Shows U.S. Killing of Reuters Employees)も含まれていた。マニングはまた、25万通ばかりもの外交電報、キューバのグアンタナモ湾で裁判なしに勾留されている抑留者らの人物調査票、数十万通のイラクおよびアフガニスタンにおける戦争の事件報告をもウィキリークスに渡していた。
ロンドンのガーディアン紙は、2013年5月にエドワード・スノーデンが同紙に漏らした情報にもとづき、アメリカの巨大な電子スパイ機関、国家安全保障局(NSA)がそれまで秘密裏に実施していた調査プログラムを明らかにする暴露連載記事を掲載した。わたしたちはスノーデンによる暴露のおかげで、PRISM
(監視プログラム)、その他のインターネット監視プログラムが存在すること、NSAがそのようなプログラム、および電話会社やインターネット・プロバイダー企業との秘密協定を用いて、アメリカの一般国民の通信を監視したり、日本、その他のアメリカの「同盟諸国」の指導者による通信を傍受したりしていることを学んだ。スノーデンによるNSA資料の暴露は、国防総省秘密文書を漏洩したダニエル・エルズバーグをして、アメリカ史上で最高に意義ある情報漏洩であるといわしめた。
マニング、スノーデン、その他の漏洩者や内部告発者の行動がなければ、アメリカ政府による不正行為を知ることはできなかった。マニングが獄中にいて、スノーデンが外国で隠れている一方で、「大量破壊兵器」にまつわるウソにもとづき、遠い国で戦争を起こし、世界中の通信を秘密裏に傍受するシステムを作り上げた政府指導者らには、なんのお咎めもない。
政府情報の暴露には、人びとの知る権利の保護を超えた意義がある。それは、不正行為を止めるのにも役立つ。みずからの行為が社会による吟味の対象になりうると知る政府当局者らやその他の人びとは、不正行為を控えるだろう。隠密に行動する人物らは、刑事責任なしに行動する。
結論
日本人読者のみなさんは、自国民がアフガニスタン、イラク、その他、世界中の戦争に関与していないこと、日本にはアメリカの国家安全保障局に相当する機関が存在しないことを知り、いくばくかの慰みを得られることだろう。だが、将来はどうなるか、だれにわかるだろう?
自民党の日本国憲法改正案は、第9条の基本的制約を撤廃し、自衛隊を国防軍に再編し、総理大臣をその最高指揮官に据える27。アメリカ政府高官らが絶え間なく加える圧力は、日本がその秘密保持関連法規を厳しくする方向に動くうえでの重要な要因である28。安倍首相は、アメリカのモデルにもとづく国家安全保障会議(NSC)を創設する彼の計画のためには、秘密保持関連法規の強化が不可欠であると繰り返し言明している。日本の国家安全保障はアメリカにとても大きく依存しているので、日本のNSC当局者が自分の仕事をするには、間違いなくアメリカの機密情報の多くにアクセスする必要がある。このアクセス権を得るために、日本の当局者らは、日本の秘密保護がじゅうぶんに万全であるとアメリカ側関係者に納得してもらわなければいけない。彼らの準拠基準は、アメリカ・モデル、すなわち巨大な情報官僚制度、周期的にビッグニュースになる、極めてバツの悪い、時には有害な情報の漏洩、捕らえられた漏洩犯に対する厳格な刑事罰である。これが、日本の進むべき道だろうか?
【筆者】
Recommended citation: Lawrence Repeta, "A New State Secrecy
Law for Japan?," The Asia-Pacific Journal, Vol. 11, Issue 42, No. 1,
October 21, 2013.
【関連記事】
【注釈】
1.
「自衛隊法」(日本語)。日本政府サイトに英語訳文は掲載されていない。同法第96条第2項は、2001年の9.11事件を受けて採択され、防衛大臣が決める情報を「我が国の防衛上特に秘匿することが必要であるもの」に指定する権限を同大臣に付与している。指定情報の無断開示は、5年収監の最高刑をともなう起訴の対象になる。
2.
9月27日付け朝日新聞は、「特定秘密保護法案:政府原案の詳細」(日本語)を掲載している。筆者による同法案に関するコメントは、基本的にこの文書にもとづいている。特に記す場合を除き、本稿に掲げる日本語からの翻訳は、筆者による。
3.
朝日新聞が掲載して法案の補遺に、秘密指定に適合しうる情報のタイプを4範疇に分けて掲げた別表が添付されている。このリストは、武器、計画、通信、暗号、国際合意にもとづき機密保持が求められる情報、その他の多数の項目が記されている。
8.
2013年10月5日付け朝日新聞、ビデオ漏洩者、一色正春氏をインタビューしたカラー写真付きの記事「政府の隠匿にも罰則必要」。
10.
NHK is Japan’s national public television
broadcaster.
11.
2013年10月3日付けNHKニュース「「防衛秘密」の多くが廃棄」(リンク切れ)。
13.
公文書法第1条
14.
NHKニュース「「防衛秘密」の多くが廃棄」
24. See Halperin, “Criminal Penalties,” n. 21 for a description of the
Espionage Act and its various interpretations.
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