福島第一原発☢反応炉近辺の放射線レベルは今でも高い。レイク・バレット技師は、核燃料が数千年間にわたり致死的であるといい、核メルトダウンを「この世の地獄」という。 https://t.co/4jEhew0LV1— Fukushima☢Watch (@yuima21c) 2018年11月27日
フクシマ☢惨事、助っ人ロボットが登場
強烈な地震と津波が福島第一原子力発電所の核メルトダウンを引き起こしてから7年後、レスリー・ストール記者が前例のない修復事業を報告する
2018年11月25日
レスリー・ストール特派員 Correspondent, Lesley Stahl
【報道テキスト】
6基の反応炉のうち、3基がメルトダウンしたとき、熱した燃料が溶岩になりました。そして鋼鉄の壁とコンクリートの床を焼き貫きました。本日にいたるまで、反応炉建屋内部のどこに燃料があるのか、正確に知る者はだれもいません。あまりにも致死性が高いので、探しに行ける人間はいないのです。そこで、損壊原発を所有する日本企業は、ロボットに着目しました。
福島第一原子力発電所、2号炉と3号炉。CBS NEWS
4本足のロボット、階段を昇るロボットがあり、水浸しの反応炉の中に泳いで入ることのできるロボットさえあります。ロボットは、状況を読み取り、放射線レベルを測定し、見失われた燃料を探すために、3Dスキャナー、センサー、カメラを装備しています。
これは、2000億ドルの経費と数十年の歳月を要すると予想される、大規模な修復事業の一環なのです。
レスリー・ストール「これほどの修復事業のようなものが、つもり規模の点で、過去にありましたか?」
レイク・バレット「いいえ、ここのこの状況はユニークです。これは、人類史上で起こったことがありません。わたしたちが過去に経験したことのない課題です」
レイク・バレットは核技術者であり、米国の歴史上で最悪の核事故、スリーマイル・アイランドの修復事業を監督した元エネルギー省職員です。彼は、原発を所有し、見失われた燃料を探す責任を負う東京電力株式会社によって、上級顧問として雇用されました。
バレットはまた、足場からぶら下がり、装置の上によじ登るように、技術者らが設計している、この6本足のクモ型ロボットのような新型ロボットの開発に関して助言もしています。彼はロボットを、次のように言い表します――
レイク・バレット「実際に長い、筋骨たくましい腕やレーザー切断機を実際に備えていたり、内部に入って、溶融燃料を実際に採取し、新設計の容器に収容して、回収したりする非常に先進的なロボットです」
レスリー・ストール「人間を月に送りこむようなプロジェクトと考えるべきですか?」
レイク・バレット「わたしの考えでは、もっと大きな事業です。しかし、月に人間を送る意思があったように、ここにはこれを片付ける意思があります。そして、これらの技術的な仕事は首尾よく達成することが可能です」
レスリー・ストール「この場で埋めてしまわないのは、なぜですか? チェルノブイリでやったようなことをしないのは、なぜですか? 単純に覆いをかけ、埋めてしまって、おわかりでしょうが、閉じ込めたまま、ここに残すのは、どうですか?」
レイク・バレット「第一に、ここは海のすぐ側です。わたしたちは海から90メートルほどのところにいます。当地、日本には台風があります。さらにまた、地震頻発地帯です。将来にも地震が勃発するでしょう。ですから、日本人でも誰でも対処したいと思わない未知の事態があるかもしれません」
米国史上で最悪の核事故、スリーマイル・アイランドの修復事業を監督したレイク・バレット。CBS NEWS
メルトダウンを引き起こした地震は、マグニチュード9.0と評価され、日本の記録に残るかぎりで最大に強烈な事象となり、車両、家屋、町全体を押し流した一連の津波を発生させました。15,000人を超える死者が出ました。
福島第一原発では、巨大な波が施設に打ち寄せて、反応炉建屋を水浸しにし、炉心の過熱を防いでいた冷却水ポンプの電源を壊滅させました。レイク・バレットは、今でも放射線レベルがかなり高い反応炉建屋を見渡す丘にわれわれを連れて行ってくれました。
レスリー・ストール「では、これがまさしく現場――すべてが起こった現場なのですね? 惨事の核心部が、まさしくここなのですね?」
レイク・バレット「まさしく。1号炉、2号炉、3号炉です。100マイルかなたで、地震が勃発したとき、これらの建屋がすべて揺れ、これらの塔がすべて揺れました。しかし、設計のおかげで、無事でした。ところが45分たって、波が殺到し、地震による津波なのですが、高さ45フィート[13.7メートル]の7つの波が押し寄せたのです。そして、われわれが『発電所内全電源喪失』と呼ぶ事態に構内を陥れたのです。電源がなくなりました。炉心が熱くなり、どんどん熱くなり、ついにウラニウムが溶けはじめました」
レスリー・ストール「ここで放射性廃棄物は、何トンぐらい生成されたのですか?」
レイク・バレット「建屋ごとに、おそらく500トンから1,000トンです」
レスリー・ストール「では、放射性廃棄物が命にかかわるのは、何年ぐらいですか?」
レイク・バレット「数千年間は、命にかかわります」
レスリー・ストール「わたしたちが現実に話題にしているのは、三重のメルトダウンですね?」
レイク・バレット「まさしく。実に、この世の地獄でした」
メルトダウンが大規模な爆発を引き起こしので、放射性塵芥のプルームが待機中に送りこまれ、半径12マイル[20キロ]圏内の全員――約160,000人――が避難を余儀なくされました。東京電力の職員らは数週間後、いわゆるペコペコ外交――謝罪の気持ちでひれ伏し、住民たちが叱責するままに耐えること――に専従しました。
何千人もの作業員が田園地帯に送りこまれ、土砂を掘りあげ、袋――夥しい数の袋――に詰めるなど、放射能が触れたありとあらゆるものの除染に従事しました。
発電所内では、1日あたり約150トンの地下水を汲みあげ、目の届く限りに立ち並んでいるタンクで保管しています。
レイク・バレット「ここでは、水が常に大問題です。炉心がすべて除去される日まで、水は大問題のままでしょう」
取材陣が気づいたのですが、作業員が反応炉に近づけば近づくほど、たくさんの防護服を着用しなければならなくなります。
身支度するレスリー・ストール特派員とレイク・バレット。CBS NEWS
われわれはジッパー留めのタイヴェク・カヴァーオールを着せられ、2足のソックスと三重の手袋を着用させられました。
レイク・バレット「OK、テープ止めがすんだ」
肌は一寸たりとも露出していません。何重もの防護装備には、マスクもありました…
レスリー・ストール「少し緩いです」
レイク・バレット「締めてあげる」
…締めつけると、視界が曇ることが多いです。
レイク・バレット「どんな感じ?」
レスリー・ストール「上等」
そして、われわれが被曝した放射線量を登録するための線量計。
戦闘準備完了。われわれは東京電力の作業班に付いて、日本人が3・11と略称する、7年前、あの3月の日にメルトダウンした反応炉のひとつ、3号炉に行きました。
レスリー・ストール「レイク!」
レイク・バレット「着きました。3号炉です」
レスリー・ストール「気をつけて。段差だわ」
レイク・バレット「地中にセシウムがあるので、これは遮蔽盤です」
事故以来の年月のあいだに、建屋の被害は大いに修復されています。
だが、この場で長時間をすごすのは今でも危険です。われわれがいることができたのは、ほんの15分間でした。
レスリー・ストール「わたしが見ている、この数値、566ですね」
レイク・バレット「正解。その数値が、わたしたちのいる場の放射線レベルを示しています。ここは、とても高い。だから、ここには短時間いるだけです」
レスリー・ストール「あなたとわたしは、たった今、炉心にどれくらい近づいていますか?」
レイク・バレット「溶融…溶けた炉心は、あっちの方向、70フィート[20メートル]ほどにあります」
レスリー・ストール「ここから70…」
レイク・バレット「ここからです」
レスリー・ストール「…溶融炉心?」
レイク・バレット「正しく、ここからすぐ向こうです。わたしたちにしても、床から抜け落ちたことは別にして、なにも分かっていないですが」
レスリー・ストール「そこで、たった今、それを見つけるために作業員を送りこむとすれば、どれぐらいのあいだ、生きていられますか?」
レイク・バレット「ほんの数秒で過剰に被曝しますので、その場に作業員を送りこむ気になる者はいません」
ロボットの登場です。
レスリー・ストール「これは、ロボット研究センターです」
日本政府は2016年、1億ドルの資金を投入して、原発の近くに研究センター[楢葉遠隔技術開発センター]を開設しており、そこでは、国内トップ・クラスの大学と技術系企業から集められた技術者や科学者の研究チームが新世代のロボットを開発しています。
川端邦明博士は、センターの主任研究員です。
川端邦明博士「これは、わたしどもの最新型ロボット、J11です」
レスリー・ストール「では、11号ですね。それに、障害物コース型ですね」
川端邦明博士「そうです。操作員はロボットの前部にあるカメラの映像を使います。だが、訓練にとても長い時間が必要です。非常に簡単に見えますが、ほんとうに難しいですから」
彼らはまた、ここ、ロボットが反応炉の内部で撮影した3Dデータをこのスクリーンに投影する、ヴァーチャル・リアリティ室でも訓練します。彼らは特殊なメガネを使って、人間に行けない場所に行くことができます。
レスリー・ストール「それでは、わたしたちは実際に反応炉の一部を通って…」
川端邦明博士「う~ん」
レスリー・ストール「…歩いていける」
川端邦明博士「う~ん。ある種、現実のような没入体験は感じます」
レスリー・ストール「そう…まるでそこにいるような」
川端邦明博士「そうです」
レスリー・ストール「わたしなら実際、やめときたいと思います。つまり、わたしにとって、それがどれほどリアルに感じるかということです。ここのように、わたしたちのこの状況をくぐっていくのです。わたしは引っこまなくてはいけません」
川端邦明博士「ああ、そうですね」
だが、あらゆるハイテク訓練やノウハウを積んだとしても、ロボットは問題に突入してきました。初期型のロボットにとって、放射線レベルは――電子回路やカメラを焼き切るほど――強烈でした。
レイク・バレット「ロボットの寿命は、数時間でした。数日もってほしいと願いましたが、数時間でした」
レスリー・ストール「スコーピオンと名づけられたロボットになにが起こったのか、教えてください。これは高度に洗練されていて、これが答えになるとだれもが考えたとわたしは思います」
レイク・バレット「これは、わたしたちが格納容器の内部に投入しようとしていた最初のロボットでして、その中に炉心がありますので、わたしたちとしても、最大限の情報が必要だったのです」
これがスコーピオンで、その任務に推定1億ドルがかけられました。炉心への道筋で平らになり、細いパイプや通路をくぐり抜けられるように設計されていました。サソリのように、尾部を振り上げます。
レイク・バレット「先に照明具付きのカメラを装着した尾部が持ちあがります。独自の照明がなければならないからです。中は真っ暗です。常備灯はありません。だから、そういう計画でした。わたしたちは大いに期待して、望みをかけました。やり遂げました。準備に1年かかり、激務でした」
だが、スコーピオンが内部に送りこまれたとき、10フィートも進まないうちに、なんらかの瓦礫にぶつかり、動きが取れなくなりました。
レスリー・ストール「フラストレーションがどれほどのレベルだったか…想像もできません」
レイク・バレット「そうですね。でも、あなたは…時には成功以上に、失敗から学ぶものです」
彼らは、水浸しの反応炉のひとつの内部で泳ぐように設計され、リトル・サンフィッシュ[幼魚マンボウ]と名づけられたロボットでもっと大きな成果をあげました。リトル・サンフィッシュ派遣の準備中、技術者らは数か月かけて、この巨大な模擬実験水槽のなかで試運転を実施して、プロペラ、カメラ、センサー、長さ60メートルの電線――すべて強烈なレベルの放射線に耐えられるそうに製作された装備品――の微調整をやりとげました。
リトル・サンフィッシュ。CBS NEWS
彼らは派遣計画策定の一助に、核反応炉5号を使いました。津波が襲来したとき、この炉はメルトダウンしていなくて、リトル・サンフィッシュが偵察することになる炉とほぼ同一のものでした。ついに昨年になって、この遊泳ロボットは反応炉の核心部への侵入進路を取りました。見失われた燃料を見つけるためです。バレットは、そのロボットが反応炉の内部のパイプ類や瓦礫の迷宮をくぐり抜けるように誘導する様相を見せるために、われわれを5号炉に連れて行きました。
レイク・バレット「リトル・サンフィッシュはこの端を下降し、反応炉容器の下にある、この小さな進入路を通り、水面下を遊泳したのです」
レスリー・ストール「これが、リトル・サンフィッシュが通った経路なのですか?」
レイク・バレット「はい、そうです。リトル・サンフィッシュはこの入口を抜けて遊泳し、この区域に下って、側壁を周回しました。この格子が失くなっていたものですから、そこを通って下降しました。溶けた燃料はここからこぼれ落ち、非常に高い圧力がかかって、噴出しました。そして、火山内の溶岩のように、ゆっくりこぼれ落ち、この格子を抜ける進路を焼き尽くしながら、床に落ちました」
これが、技術者らが水浸しの内部構造のパイプや昇降口を抜けるように誘導したとき、リトル・サンフィッシュが見たものでした。ロボットは、瓦礫、燃料棒、半壊した設備の寄せ集めを顕にする映像と固体化した溶岩のように見えるものの曖昧な兆候――東京電力の職員らのいう、見失われた燃料の最初の兆候――を光ケーブルで送り返してきました。
レイク・バレット「これら、これまでのロボット段階は、有意義な歩みであってきました。それでも、とても、とても長い旅路の小さな歩みにすぎません」
レスリー・ストール「あなたがおっしゃるには、『太鼓判』付きの数十年がかかるのですね。あと何十年かかりますか?」
レイク・バレット「確かなことは、わたしたちにも分かりません。ここのゴールは、40年…30年…40年先です。お察しでしょうが、わたしは個人的に、むしろ50年…60年先のことだとさえ考えていますが、それも…」
レスリー・ストール「おお、たぶんもっと長く先」
レイク・バレット「さて、もっと先かもしれません。ですが、現実として、これは以前に対処したことの決してなかった課題なのです。しかし、すべての一歩は前向きの一歩です。その一歩から学び、次の一歩に前進するのです」
Produced by Richard Bonin and Ayesha Siddiqi
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アメリカで知名度と経験が抜群の放送ジャーナリスト、レスリー・ストールは、1991年以来、60ミニッツ特派員。
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【クレジット】
CBS News 60 Minutes, “Robots
come to the rescue after Fukushima Daiichi nuclear disaster,” reported by Lesley
Stahl, published on November 25, 2018 at https://www.cbsnews.com/news/robots-come-to-the-rescue-after-fukushima-daiichi-nuclear-disaster-60-minutes/.