2016年2月29日月曜日

☢#フクシマ5周年☢【海外論調】カウンターパンチ誌「フクシマ5周年目の末期的な危機」


カウンターパンチ
事実にもとづく実名報道

2016226

フクシマ5周年目の末期的な危機


ロバート・ハンジカー ROBERT HUNZIKER
§   

311日はフクシマ核惨事の5周年にあたっている。日本の放送局、NHKは最近、核発電に対する国民の意識を探る世論調査をおこなった。その結果によれば、70%あまりの回答者が核発電所の全面的または部分的な廃棄に賛成している。これは驚くべきことではないが、その反面、安倍政権は閉鎖された核発電所の再稼働を実に強硬に推進しており、じっさい、その一部はすでに核分裂を狂ったように強行している。

201631日付けサイエンティフィック・アメリカン記事が5周年におけるフクシマ/東京電力の前途について言及しているので、紹介しておこう――「今日、災害現場は非常事態のままである…さらに厄介な問題だが、施設における危険な核廃棄物の生成がいまだに収束していない」(マドゥシュリー・ムカージー「5年後のフクシマ核惨事現場はいまだに放射性物質を放出」)。

東京電力株式会社廃炉カンパニーのプレジデント、増田尚宏氏によれば、反応炉の内部から核燃料を除去する技術は現存していないという。すなわち、「技術者たちは問題を調査しておりますが、わたしたちは燃料を除去する方法はないと考えております。巨大なリスクが伴います。些細なミスを犯すだけでも、地元の人びとにとって、あるいは世界にとって、大問題になりかねません。その可能性を意識しておかなければなりません」(ポピュラー・サイエンス誌20163月/4月号、スティーヴ・フェザーストーン「5年後のフクシマ」)。

「巨大なリスクが伴います。些細なミスを犯すだけでも、地元の人びとにとって、あるいは世界にとって、大問題になりかねません」。これが、東京電力廃炉カンパニーのプレジデントの発言なのである。ここに問題がある。東京電力には「些細なミス」を犯す資格すらなく、それでいて、幾多のとんでもないミス、巨大で大規模、とてつもない、愚鈍なミスをしでかしてきたのだ。

核エネルギーにつきものの放射線リスクに関する論争の両陣営に対する公正を期すために、異なった見方を理解することが大切であり、たとえば、ジョージタウン大学医療センターの放射線専門家、ティモシー・J・ヨルゲンセン博士・公衆衛生学修士は、最新刊書“Strange Glow: The Story of Radiation”[奇妙な輝き~放射線の物語](プリンストン大学出版、2016年刊)において、放射線の影響を論じている。博士は放射線の危険性を割り引いてはいないが、たぶん控え目に表現しているのだろう。だが、彼の見解は、フクシマの放射能が人間におよぼす害は最小限であり、これからもそうであろうと明確に述べている。ヨルゲンセン博士は興味深いことに、「放射線量が低レベルであり、疾患原因にはならないので、施設労働者が放射線疾患にかかる症例はなかった」と主張している(ジョージタウン大学医療センター、2016223日付けニュースワイズ「ジョージタウンの放射線専門家・著述家、フクシマ核メルトダウン5周年を検証する」)〈編集者注:それにしても、ヨルゲンセン博士が事実を追求するなら、「公式見解」から踏み出して調査すべきだろうし、後出の米海軍兵インタビューを読むべきだろう〉。

ヨルダンセン博士に謹んで申しあげるが、放射線疾患にかかるフクシマ労働者はいないという貴殿のご高説に無礼にも同意しない、理のある、情報に通じた人士たちが世の中におられるのですぞ。自由報道協会(日本)理事、おしどりマコ氏は、報告されていない数件の労働者死亡事例(その通り、死亡)を調査し、東京電力を退職した元看護師に対面取材した。彼女は次のようにいう――

「それでは、原発作業員についての話をしたいと思います。このかたは、東京電力の社員で、2012年に福島第一原発の医療室で看護師の仕事をしていたかたです。2013年に東京電力を辞めたときに、彼にインタビューをしました。原発の作業員が亡くなったとき、仕事中に亡くなった人だけ、東京電力は発表します。たとえば、週末に亡くなったり、寝ているあいだに亡くなったり…そして、3か月働いて、数週間の休みのときに亡くなったりする作業員は発表されません。……

「それだけではなく、彼らは作業員の死亡統計に含まれていません。たとえば、大量の放射線被曝をしたあと、仕事を辞める作業員がいます…そして、1か月たってから亡くなってしまうのですが、そのような死亡者のだれひとりとして発表されませんし、死亡者数に数えられていません。これが、原発作業員を取り巻いている現実です」

マコ氏の講演――


とどのつまり、核の放射線は扱いにくい厄介な主題であり、米国は日本を徹底的に叩きのめす爆弾として核を用いた。それは実績のある殺人手段であり、後ろ手に縛られたまま手渡され、苦もなく拡散してゆく。それでも、核賛成・反対論争の両陣営ともに、非常に有能で頭のよい一流人士がいるものだが、たいがいの人は中間でふらふらしているようであり、なんにつけても、テレビの風潮に引きずられている。「少量なら効き目がある」、つまり少しばかりの放射線量は体によいという理性的な人たちさえいる一方で、「いかなる量でも体の破滅」、つまり放射線量は体内に蓄積するので、「気をつけろ!」という人たちもいる。

秘められた放射線による犠牲者

研究者、ジャーナリスト、学者が放射線被曝にともなうリスクについての物語を紡ぐためには、事実を深く掘り下げる必要があるが、ここにこそ問題がある。放射線による現実の死亡例、あるいは肢体不自由の事例が報告されず、むしろ隠されるなら、その物語は、放射線は鬼のように恐ろしいというものにはならない。その反対に、放射線が大勢の人たちを傷つけ、不具にし、殺していると事実が明らかにするなら、核発電所は怖いものだという物語になるだろう。これが物事のなりゆきであり、物語が実生活に届く仕組みなのだ。

核発電に賛成か反対の両陣営のどちらを選ぶにしても、1986年のチェルノブイリ核事故(現実としては、ホロコースト)は、核発電による放射線被曝が、他に類を見ない奥深い闇のモンスター、巨大な鬼っ子、生物を永遠に傷つけ、捻じ曲げ、滅ぼす殺人鬼であることを示す、100パーセント現在進行形の決定的で反論不可能な証拠を突きつけている。

身の毛がよだつような放射線の致死作用は、ベラルーシ全域各地、田舎の奥深い未開墾地300か所で世間の目から隠された保護施設で見受けることができる。チェルノブイリから放出されたフォールアウトの70パーセントがベラルーシに漂着し、「チェルノブイリの子どもたち」に破壊的な影響を与えている。

チェルノブイリ同様の事故が起これば、それはアッと驚く事故ではあるが、そのような性格付けだけでは、事の本質を見誤ってしまう。それ自体としての事故は、核発電所に内在するリスクの特性を示しており、事故はさらに繰り返し起こるものなのだ。事故はリスクである。核発電所は災害なのだ。事故は起こり、それは再三再四のことであり、核発電に反対する強力な議論を巻き起こす。

不愉快な後遺症事例を紹介してみよう。アイルランド出身のクリオーナ・ラッセルさんは2年前、ベラルーシの児童保護施設でボランティアとして働いた。チェルノブイリ事故が勃発したのは、彼女が保護施設で接した子どもたちが生まれるより、ずっと前の1986年だったことを忘れないでもらいたい。子どもたちは今日、母親の胎内における放射線の影響、あるいは放射能が蓄積した環境の影響のどちらかによる奇形と出生異常の申し子になっている。

クリオーナ・ラッセルさんはこういう――

「子どもたちは、何時間もぶっ通しで体を前後に揺すっては、頭を壁にぶつけたり、歯ぎしりしたり、顔を掻きむしったり、喉に手を突っ込んだりしています…これが、わたしが(20142月に)ベラルーシのヴェスノヴァ児童精神科病院でボランティアをしたときに目撃した様子です」(2014318日付け journal.ie「わたしがベラルーシの児童精神科病院に赴いて、アイルランド人であることに誇りをもつようになったわけ」)。

クリオーナ・ラッセルさんは、アイルランドの慈善団体「チェルノブイリ・チュールドレン・インターナショナル」がベラルーシ、ロシア西部、ウクライナの子どもたちを援助していることを1991年に知り、その理事長、アディ・ロシュ氏との関係をとおして、ボランティアに赴いた。同団体の事業は今日までに、放射線被曝の影響を受けた25,000人あまりの子どもたちをアイルランドに招き、必須医療とリハビリテーションを提供しており、末期症状の子どもたちの場合、キルデア州バレッツタウンのポール・ニューマン医療休養センターに送り込んでいる。ラッセルさんはこういう――

「わたしは今になって、アディ・ロシュさんが初めてヴェスノヴァを訪問し、頭を刈られ、拘束衣を着せられた子どもたちが驚くほど高い率で死んでいくのを目撃したときに直面したものについて考えています。アディさんによれば、『死亡総数があまりにも膨大で、数えるのをやめるか、そうしなければ、やっていく意欲を失ってしまうほど』といいます」

事故から30年たっても、「チェルノブイリの衝撃は、放射能で毒された環境で生きなければならない子どもたちにとって、いまだに非常に現実的であり、厳然として現存しています」(アディ・ロシュ氏)。

放射線疾患を原因とする、肢体異常、不具、奇形、無数の死は、涙を絞るしかない、こころを締め付ける物語であり、核発電所の弁明をする、ありとあらゆる連中の眼前で、ムカついて見せるにじゅうぶんである。

風力とソーラーは子どもたちと家族のこころと魂を破ることはないが、1件の核事故がそうしてしまう。ただそれだけ、ただの1件、それだけでじゅうぶんなのだ。

放射能に猛反発する米海軍兵たち

なんということ、米艦ロナルド・レーガンに乗り組んでいた200名の米海軍兵らが、白血病、潰瘍、胆嚢切除、脳の癌、脳腫瘍、睾丸の癌、機能不全性子宮出血、甲状腺疾患、胃腸障害、その他、これほど若い成人の場合、極めて異常な病状に既に陥っていると主張して、東京電力、その他に対する訴訟を係争中である。

申立人のなかに、任務中に妊娠していた水兵がいる。彼女の赤ちゃんは、複数の遺伝子変異を抱えて誕生した。

水兵たちは2011311日フクシマ核惨事のあと、「オペレーション・トモダチ」に参加し、放射線レベルは大丈夫と保証されたうえで、人道救援活動に従事した。申立人弁護団によれば、核放射能の後遺的な作用の猛威が、やがて階級の差を超えて噴出するので、もっと大勢の海軍兵たちが訴訟に加わる手続きをしているという。

皮肉なことに、昨年9月の混乱した国会の場で採択され、日本の軍隊が「同盟国を防衛する」ことを許容する(命令する)日本の新立法にもとづき、日本政府が日本の軍隊の役割を拡大する新たな安保法制のもとで防衛力を強化しており、“核エネルギー推進”航空母艦である米艦ロナルド・レーガンは201510月、日本の横須賀軍港を母港に定め、ドック入りしている。シートベルトを締めろ!

アインシュタインは次のように予言した――「解き放たれた原子の力は、われわれの思考様式を除く、すべてを変革したのであり、かくして、われわれは比類のない破局に向かって漂流している」。

【筆者】

Robert Hunziker 
ロバート・ハンジカーはロサンゼルス在住。連絡先:roberthunziker@icloud.com
More articles by: ROBERT HUNZIKER

【クレジット】

Counter Punch, “Fukushima’s 5th Year of Full-Blown Crisis,” by Robert Hunziker, posted on February 26, 2016 at;


【ロバート・ハンジカー記事】

20151225日金曜日


【フクシマ5周年シリーズ】

2016227日土曜日

2016224日水曜日

2016221日日曜日

2016221日日曜日

2016年2月27日土曜日

☢#フクシマ5周年☢【海外論調】グリーンピース・インターナショナル「5年後のフクシマ危機は収束からほど遠い」


5年後のいま、フクシマの危機は収束からほど遠い

ショーン・バーニー Shaun Burnie - 2016222

虹の戦士号は5年前、フクシマ沿海を航行し、放射能資料採取を実施した。いま同船はフクシマを再訪し、今回は日本の元首相が乗船した。

破壊された福島第一核発電所の沖合を航行するグリーンピース船、虹の戦士号。

スコットランドは日本から9,000キロあまり離れているが、両地には共通項がある。スコットランドの沿岸域で、世界の反対側から運ばれてきた相当量の放射性汚染物質が川床に埋もれたり、アイリッシュ海に混じり込んだりしているのを認めることができる。そのとおり、放射性汚染物質だ。はるばる日本から運ばれてきたのだ。

イングランド北西部の核燃料再処理施設、セラフィールドは1970以来、日本の核反応炉から取り出された高レベル核廃棄物である使用済み核燃料の再処理を請け負ってきた。福島第一核発電所のオーナー企業、東京電力株式会社が船積みした廃棄物を含め、4000トンあまりの使用済み核燃料が日本からセラフィールドに海上輸送された。セラフィールドにおける再処理事業の結果、連日800万リットルあまりの低レベル核廃棄物が海に排出された。セラフィールドは「ヨーロッパで一番危険な場所」とラベル貼りされており、平野、土壌、河口域の汚染レベルは、核災害ゾーンとしか言いようのない域に達している。現実として、アイリッシュ海は、ほぼ間違いなく世界随一に放射能汚染された海域である。

セラフィールド核発電所(2002年)

わたしたちはまもなく福島第一核発電所惨事5周年を迎えようとしており、否が応でも、どこにいようが、どれほど離れていようが、核エネルギーが地域的および世界的な影響をおよぼすことに気づかずにはおれない。

筆者は2011311日のニュースに気づいて、目が覚めたのを思い出す。スコットランドの自宅にいたが、あれほど日本の人びとに繋がっていると感じたことはなかった。筆者は数十年来、日本における核エネルギーに反対する運動を活発に展開していたグリーンピースに関わってすごしており、破局事故は時間の問題であると心底から知っていた。メディアの依頼が次々と飛びこんできて、BBCワールド・ニュースに出演したのを思い出す。インタビューのさなか、フクシマの具体的な脅威について話していると、3号反応炉が爆発したとの日本発ニュースがかぶさって、遮られた。

2011311日の沖合地震による福島第一核発電所の被災状況を示す衛星画像

グリーンピース・ジャパンはフクシマ避難区域にスタッフを派遣し、独自の放射能検査を実施した。また、虹の戦士号に乗り組んでいた研究者らは全身化学防護服を着こみ、資料として用いるために、周辺海域に浮遊している海藻を採取した。わたしたちの検査結果は残念ながら、大方の予想通り――高レベルの汚染――だった。わたしたちはその後、いまだに放射能が非常に広く分布しており、フクシマ各地の大半で、人びとの帰還が安全でないことを確認した。

フクシマ沿岸で海藻の検査を実施するグリーンピースの放射能検査スタッフ。

筆者は5年近くたったいま、虹の戦士号に――今回は、反核の日本国元首相として有名な菅直人氏とともに――乗船している。菅氏が20113月の事故当時の時々刻々と日々を語るのに傾聴し、そしてわたしたちが実施している調査を彼に見せるのは、まことに名誉であり、晴れがましいことだった。わたしたちの船が核施設から2キロ以内の海域を航行しているときの感覚は、奥深いものでもあり、非現実的でもあった。わたしたちは甲板から、何千トンもの汚染水を蓄えた鋼鉄製のタンクを見た。4基の反応炉はいま、大気中に放出される放射性物質の一部なりとも封じこめる手立てとして、暫定構築物の背後に隠されている。そして、反応炉そのものの内部には、数百トンの溶融燃料が堆積しており、それに対処するための確かなプランは策定されていない。

グリーンピース船、虹の戦士号から見た福島第一核発電所。

だが、虹の戦士号がこの海域に逗留しているのには、もうひとつの理由がある。グリーンピース・ジャパンの調査船が福島第一核発電所から20キロ圏内の海水中放射能調査を実施しており、虹の戦士号はキャンペーン船として行動している。グリーンピースは、スコットランドは筆者の自宅近辺の場合と同じように、核エネルギー、特に福島第一核発電所の核事故による影響および将来の脅威に関する理解の促進をめざしている。


災害勃発のときに日本の指導者だった菅直人氏にとって、今回の航海は、政治的であるのと同時に、個人的なものでもあった。彼は2011年以降の歳月――危機の渦中にある核産業を救済しようとして躍起になっている「鈍感な」安倍氏の現政権とは大違いであり――核エネルギーに反対する何百万人もの日本の人びとの側に立って、核産業反対論を公言してきた。安倍政権の目論見は、国民の過半数に反対され、途方もない技術的・財務的・法的な障害に悩んでいることから、失敗を運命づけられていると筆者は信じている。

虹の戦士号に乗船している日本の元首相、菅直人氏

希望はある。

菅氏は、革新的な再生可能エネルギー発電事業に転換している全国各地の地域社会と同じように、核は過去の世界に埋葬されるべきであると知っている。日本の再生可能エネルギーは興隆している。2015年度において、推定13テラワット時相当の――同年度に再稼働した川内核発電所2分の発電可能量より大きい――発電容量のソーラー発電施設が設置された。

日本が電力の100%を再生可能エネルギーで賄うためには、緊急に現状以上に野心的な目標を設定しなければならない。新規石炭火力発電所に投資するプランをすべて取りやめ、老朽化した核反応炉を再稼働する計画を放棄して、再生可能エネルギーの成長を阻害する制度的・財務的障害を除去しなければならない。

核のない未来は、可能であるだけでなく、必然である。再生可能エネルギーは、日本国民だけでなく、世界の人びとにとって、唯一の安全で確実なエネルギーなのだ。

【筆者】

Shaun Burnie
ショーン・バーニーは、グリーンピース・ドイツにおける核の上席専門家

Categories nuclear

【クレジット】

Greenpeace International, “Five years on and the Fukushima crisis is far from over.” Blogpost by Shaun Burnie, posted on 24 February, 2016 at;

【外部サイト記事】

グリーンピース・ジャパン/2016226
【佐藤潤一の事務局長ブログ】
紙一重で、5000万もの人が福島第一原発の250km圏内から逃げなければいけなくなるような、重大な危機に直面したのです。

【フクシマ5周年シリーズ】

2016224日水曜日


2016221日日曜日


2016221日日曜日