2015年10月21日水曜日

英紙ガーディアン【フクシマ核惨事】被曝労働による癌診断の放射線関連の公式認定第1号


フクシマ核惨事:
被曝作業による放射線関連癌の初認定

2011年津波に被災した反応炉建屋で働いていた男性の癌診断は、避難区域の人びとに帰還を促す動きを妨げる可能性がある。

2012年に撮影された東京電力従業員らと被災したフクシマ核施設の写真。Photograph: Yoshikazu Tsuno/AFP/Getty Images

【東京発】ジャスティン・マッカリー Justin McCurry
20151020

41歳の男性が癌と診断され、20113月災害後に福島第一核発電所で働いていたこととこの癌が関連していると政府当局者らが認める最初の元作業員になった。

この名前の明かされていない男性は、体調不良を感じ、20141月に白血病と診断されており、2011311日にマグニチュード9の地震が引き起こした津波が、フクシマなど、日本の北東沿岸部に重大な被害をもたらしたあとの1年間、反応炉建屋の上で働いて過ごしていた。

災害は核施設の三重メルトダウンを引き起こし、その現場では、これまでにほぼ45,000人の作業員らが浄化・解体作業に従事しており、この事業は、巨額の費用を要し、収束に40年かかると予測されている。



日本の厚生労働省による20日の発表は、フクシマの運営企業、東京電力株式会社にとって打撃になり、安全宣言の出された近隣地域への帰還を人びとに促している政府の方針にとっても障害要因になるだろう。

メディア報道は、東京電力が雇用した多種多様な請負業者の従業員だった、この男性は、201210月から201312月まで損壊した2棟の反応炉建屋にカバーを設置する工事に従事していたと伝えた。彼はまだ30歳代だったときに白血病と診断された。

厚労省の担当者は、この男性は作業中に防護服を着用しており、治療費と逸失所得を補償する労災賠償を認定されると語った。「男性の放射線被曝と疾患の因果関係は明白ではないが、当方は労働災害賠償の見地から男性の認定にいたった」と担当者は述べた。

フクシマ事故は大量の放射能を大気中に放出し、150,000人以上の住民たちに避難を余儀なくさせ、その多くはいまだに自宅に戻れないでおり、この男性の他にも、3名の作業員が癌を患っており、その疾患と事故との関連が認定されるのを待っている。

放棄された双葉町の病院の外に放置されたベッド。核施設が被災したあと、福島県内に20キロ圏避難区域が設定された。Photograph: Sergey Ponomarev/AP

東京電力は、作業員の労災賠償請求が人例されたことに関してコメントできないと述べた。東電の広報担当者は、「弊社は作業員にお見舞いを申し上げます。弊社としては、労働環境の放射線量削減と作業員の放射線被曝管理の徹底に引き続き努める所存であります」という。

男性は診断を受けるまでに、フクシマで16ミリシーベルトの放射線を被曝しており、これとは別に、2012年の3か月間、他の核発電所にいたとき、4ミリシーベルトの被曝をしていた。厚労省によれば、年間5ミリシーベルトの被曝をした労働者に労災保険が認定される。

東電によれば、災害後にフクシマで働いていた45,000人のうち、21,000人が20113月から本年7月までに5ミリシーベルト以上の放射線に被曝していた。9,000人以上が少なくとも20ミリシーベルト線量の被曝をし、6人が250ミリシーベルトを超える被曝をしていた。

環境中の放射能に関する独立系コンサルタント、イアン・フェアリー博士は、「年間100ミリシーベルトの線量は非常に高いですし、250ミリシーベルトとなれば、良心にもとります。福島第一で起こっていることは明らかに、何千人もの一時雇用労働者たちが高レベル放射線に被曝し、線量計記録が限度に達すると解雇されるということです」と述べた。




男性の比較的に低レベルの放射線被曝は――なんと、住民たちが自宅に戻っても十分に安全だとみなされる線量すらよりも低く――立ち退きを強いられたフクシマ避難民の再定住を推進する政府の動きの見直しを迫ることになるだろう。100ミリシーベルト閾値より下の低線量放射線が癌と関連していることの是非をめぐって、有識者たちの見解は分かれている。

獨協医科大学で放射線と健康を専門分野とする木村晋三准教授は、「これは、労働者の権利の観点から見て、画期的な決定ですが、おそらく氷山の一角であるにすぎないのでしょう」とフランス通信社に語った。彼は、男性の癌を放射線関連のものであると認定する決定は、政府にとって「警鐘」になると述べた。

インペリアル・カレッジ・ロンドンで分子病理学を専門分野とするジェリー・トーマス教授は、診断をフクシマで働いていたさいの放射線被曝と関連付けた厚労省の決定に驚いたという。

トーマス教授は、「労働者たちが被爆している線量の低さを考えると、このような線量では、リスク増加は非常に小幅であり、これが放射線のせいであり、白血病の原因になる他の要因のせいではないと確認するのは、非常に困難です。このような線量の場合、他の要因が男性の癌の原因である蓋然性が高いです」と語った。

福島第一核発電所で放射線検査を受ける労働者。Photograph: Issei Kato/AFP/Getty Images

反核活動家たちは、国際原子力機関IAEA)と日本政府当局者らが惨事によるものと識別できる健康への影響はないだろうと発言してきたのは早とちりだったと語った。

グリーンピース・ジャパンは、「今年9月、事故によって放出された放射能に被爆することによる識別しうる健康への影響は予想されないと述べていたIAEAにとって、これは大打撃である」という。

グリーンピース・ベルギーの放射線専門家、ジャン・ヴァルデ・プットはこういう――「フクシマ惨事によるものと識別しうる健康への影響はないだろうというIAEAの発言は時期尚早でした。

「チェルノブイリの歴史的先例が実証しているように、初期放出と継続中の核危機の両面にわたる影響の全体像は、まだ見えていません。グリーンピースはIAEAと日本政府当局者たちに対して、根拠のない非科学的な発言の撤回を求めます。この現実を否定すれば、彼らの苦しみを否定し、彼ら自身と家族のために正義を求める彼らの戦いを台無しにすることになります」

事故時に福島県に居住していた、小児と若年者のあいだに小児甲状腺癌の有意な急増が認められているものの、地元の保健当局者らは、この増加は、敏感な装置を使用し、前例のない多人数を検査したためであり、放射線被曝の結果ではないと主張している。

この主張は先日、岡山大学の津田敏秀教授の反論に遭っており、その教授の研究が、フクシマの子どもたちの甲状腺癌罹患率が日本全国の子どもたちの20倍から50倍になると認めている。




【クレジット】

The Guardian, “Fukushima nuclear disaster: first worker diagnosed with cancer linked to cleanup,” by Justin McCurry;
本稿は、公益・教育目的・非営利の日本語訳。

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【付録】
 【読み比べ】…順不同。リンク切れは、ご容赦のほど、おねがいします。








読売新聞:見当たらず。

 厚生労働省は20日、東京電力福島第1原発事故の収束作業で被ばくした後、白血病を発症した40代の男性を労災認定した。第1原発事故をめぐる被ばくによる労災認定は初めて。「被ばくと病気との因果関係は明らかではないが、労働者補償の観点から認定した」としている。
 厚労省によると、男性は2011年11月~13年12月の間に1年半、複数の原発で放射線業務に従事。うち12年10月~13年12月は第1原発で原子炉建屋カバーの設置工事などに従事した。業務全体で19・8ミリシーベルト、第1原発では15・7ミリシーベルトの放射線を浴びた。

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