2015年4月24日金曜日

【論文紹介と概要】スイスで低線量被曝と小児ガンのリスク研究 大きな反響

【更新】 2015年4月29日
本稿で紹介している論文「背景電離放射線と小児癌リスク~国勢調査にもとづくスイス全国コホート研究」を日本語全訳しました。リンクは次のツイートに貼ってあります。メディアの沈黙に対向するため、みなさんの拡散ご協力を伏してお願いします。
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里信邦子

23.00.2015

福島第一原発事故以降、低線量被曝による小児ガンのリスクは欧州でも関心を呼んでいる。こうした中、スイス・ベルン大学が2月末に発表した研究は、低線量でも線量の増加と小児ガンのリスクは正比例だとし、「低線量の環境放射線は、すべての小児ガン、中でも白血病と脳腫瘍にかかるリスクを高める可能性がある」と結論した。毎時0.25マイクロシーベルト以下といった低線量被曝を扱った研究は今でも数少なく、同研究はスイスやドイツの主要新聞に大きく取り上げられ反響を呼んだ。

 「予想以上のメディアの反応に驚いている。しかし、この研究で焦点を当てた宇宙線と大地放射線は避けられない自然放射線だ。スイス・アルプスなどの線量の高いところに住む子どもがガンにかかるリスクは確かに高いのだが、恐怖を与えたり、警告を発したりするのが目的ではない」と、ベルン大学社会予防医学研究所(ISPM)で同研究に携わったベン・シュピヒャーさんは釘をさし、疫学の専門家として、次のように言う。

 「あくまでも科学的な低線量被曝のリスク研究の一つとして、スイスでは例えば、子どもには必要のないCTスキャンなどは避けるといった予防に対する意識の向上に役立ててほしい」

 日本を含め世界では現在、低線量被曝と発がんや遺伝子の影響に関する見解において、年間100ミリシーベルト以下の被曝では、「線量の増加に正比例して発がんや遺伝子の影響が起きる確率が増える」という考え、つまり、ある線量以下なら影響が出ないという「しきい値」を取り払った、直線しきい値なし仮説(LNT仮説)に従っている。

 よって、(ISPMが扱ったような)毎時0.25マイクロシーベルト以下といったわずかな線量でも、理論的には線量の増加と小児ガンのリスクは正比例の関係になる。しかし、実際にはこうした低線量被曝のリスク研究はわずかしか存在せず、しかも科学的にまだ不十分な点が多い。これが、ISPMが今回の研究に取り組んだ一つの理由だ。

 また、スイスで小児ガンにかかる年間約200人の患者のうち、小児白血病は約30%、小児脳腫瘍は約25%を占める。この二つのガンは、広島・長崎の原爆で被爆した人の中でも特に当時子どもだった人がその後にかかる主な疾患だとする多くの研究がある。「では、スイス国内の小児ガンでメインなこの二つのガンと低線量被曝に相関関係があるのか?」と考えたのが二つ目の理由だ。

斬新な研究

 「我々の研究の斬新さは、ガンにかかった子ども一人ひとりの病名や経緯、またその子が住むスイス国内の住所を特定し、その場所の詳細な環境放射線の値を使ったことだ」とシュピヒャーさんは言う。

 ここで言う環境放射線とは、子どもの住環境にある放射線を指し、それはさらに、原発事故などによる人工放射線と自然放射線に分けられる。この自然放射線には、宇宙線と岩石などから出る大地放射線などがある。

 ISPMは、まず1990年から2008年にかけ、スイス国勢調査を使って16歳以下の子ども約200万人を選び出し、その後、スイス小児ガン登録簿(SCCR)を使って1782人のガン患者を特定した。

 それに、スイスの自然放射線量とチェルノブイリ事故後に飛散したセシウム137の土壌濃度を記した放射線量マップを基に、200万人の子ども全員の住居地の線量を把握した。このマップは、連邦工科大学チューリヒ校が行ったスイスにおける放射線量研究(Raybachレポート)で作成されたものだ。

 「住所を含むこうした情報は個人情報に近いため、恐らく北欧の国を除いては入手できないものだ」とシュピヒャーさん。さらに、200万人の子どもが住む周囲の環境放射線の数値を、それも4平方キロメートルごとに調査したものを使った研究は今までにないと強調する。

 実は2013年に、環境放射線と小児ガンのリスクを扱った、イギリスの研究(Kendallレポート)がある。対象となった子どもの数と線量測定地の数がスイスのISPMの研究より多いなどの点から「トータルにはISPMのものと同程度の価値がある」と言われるものだ。ただ、ガン患者が住む場所の線量が行政区の平均値であるため、個々人の住居周辺の線量データを使ったスイスのものとの比較において、疫学的観点からは不正確さが残るとされる。

スイス全土の宇宙線と自然放射線

 では、なぜ小児ガンを引き起こす原因として、宇宙線と大地放射線、及びチェルノブイリ事故後のセシウム137に焦点を当てたのだろうか?

 「スイスの環境では、こうした環境放射線以外に、特殊な化学物質や公害物質がガンを引き起こす可能性はほぼない。また、大地放射線のガンマ線が白血病を引き起こすことはKendallレポートなどからも明白だったからだ。他にラドンガスもあるが、これは主に肺に吸収され肺ガンの原因になるから、今回の研究からは除いた」とシュピヒャーさんは説明する。

 そこで、宇宙線と大地放射線、セシウム137の毎時の線量が計算できる前出のRaybachレポートのマップを使用した。さらに、これら三つの放射線の、生まれたときから調査時までに浴びた総線量も計算。毎時の放射線量と総線量の両面からガンにかかるリスクを分析した。

 その結果、数値としては「生まれたときから浴びた総線量において、総線量が1ミリシーベルト増えるごとに4%ガンにかかるリスクが増える」を結果として提示した。

10~20年でさらに進む研究 

 最後に、日本人には気になるセシウム137。これはチェルノブイリ事故のせいで、スイスでは主にイタリア語圏のティチーノ州に今でも存在する。しかし、スイス国民が受ける環境放射線量の平均は、毎時約109ナノシーベルト(約0.1マイクロシーベルト)。うちセシウム137は、毎時約8ナノシーベルトに過ぎない。

 こうした値をスイス全体でみると(マップ参照)、やはり山岳部のグラウビュンデン、ヴァレー、ティチーノ州の一部に、毎時0.2マイクロシーベルトを超える放射線量の高いところがある。

 しかし、ここでまた、シュピヒャーさんの前出の結論が繰り返される。「フクシマのせいで、この研究結果に関心を持つ日本人は多いと思う。しかしこれは、低線量と小児ガンにかかるリスクの可能性が正比例で高まることを示した、科学的な一つの研究だ。そのことを理解して役立ててほしい」と語った上で、次のように続ける。

 「我々の研究も完全ではない。例えば、放射線量の正確さを最大限に高めたいなら、ガン患者のすべての住居でかなりの期間にわたり測定が必要だ。実際、そうした研究も今後出てくるだろう。この研究を一つの礎にして、より詳細で大規模な低線量被曝の研究を期待する。そうして今後10~20年でこの分野の研究はさらに進むと思う」

ベルン大学が発表した「環境にある低線量の放射線と小児ガンのリスク」

ベルン大学社会予防医学研究所(ISPM)が発表した研究のタイトルは「Background Ionizing Radiation and the Risk of Childhood Cancer : A Censusu-Based Nationwide Chohort Study」。

2年かけて行われた同研究は、スイス連邦内務省保健局、スイスガン連盟、スイス連邦科学基金などが支援した。

疫学の専門家ベン・シュピヒャーさんや3人の小児ガンの専門家などを含む10人の研究者と小児ガン研究グループ、国勢調査グループなどが研究に参加した。

個々の小児ガン患者のデータを使用して、小児ガンになるリスクと環境放射線中の特にガンマ線による低線量被曝の相関関係に焦点を当てた研究は、同研究とスウェーデンの研究(2002年)、イギリスの二つの研究(2002年のものとKandellレポート)の、計四つがある。そのうち同研究を含む三つが、相関関係を証明している。


なお、2011年にISPMはスイスの原発から、5キロメートル、5~10キロメートル、10~15キロメートルの範囲で、放射線量と小児ガンとの関係も調査した。


ADVANCE PUBLICATION

Environ Health Perspective; DOI:10.1289/ehp.1408548
背景放射線と小児癌のリスク:
全数調査にもとづく全国コホート研究
 PDF Version (426 KB)

受付:2014年4月11日 受諾:2015年1月28日 先行公開:2015年2月23日
スイス小児腫瘍学グループおよびスイス全国コホート研究グループ
Ben D. Spycher, 1 Judith E. Lupatsch, 1 Marcel Zwahlen, 1 Martin Röösli, 2,3 Felix Niggli, 4 Michael A. Grotzer, 4 Johannes Rischewski, 5 Matthias Egger, 1 and Claudia E. Kuehni
1 スイス、ベルン、ベルン大学・社会予防医学研究所(ISPM)。
2 スイス、バーゼル、熱帯・公衆衛生研究所。
3 スイス、バーゼル、バーゼル大学
4 スイス、チューリッヒ、チューリッヒ子ども病院大学腫瘍学部
5 スイス、ルツェルン、州立病院ルツェルン、こども病院腫瘍・血液科
Address correspondence to Ben D. Spycher, Institute of Social and Preventive Medicine (ISPM), University of Bern, Finkenhubelweg 11, CH-3012 Bern, Switzerland. Telephone: +41 31 631 56 97. E-mail: ben.spycher@ispm.unibe.ch

金銭的利益相反
著者らは金銭的利益相反を有しないと宣言する。
概要
背景:中または高線量の電離放射線は、子どもたちの発癌要因として既に知られている。自然線源に由来する低線量放射線が小児癌のリスクに寄与する程度は未解明のままである。
目的:われわれは全国全数調査コホート研究によって、小児癌の発症率が地球のガンマ線と宇宙線による背景放射線と関連しているか否かを検証した。
方法:1990年および2000年の国勢調査において16歳未満の子どもたちが調査対象になった。追跡調査は2008年までつづけられ、癌の症例はスイス小児癌登録簿によって特定された。居住地点における地球・宇宙線の線量率を予測するために、放射線モデルが用いられた。癌リスクと誕生以来の線量率および蓄積線量の関連を評価するために、コックス回帰モデルを用いた。
結果:国勢調査に記載されている2,093,660人の子どものうち、1,782症例の癌が識別され、そのうち、530症例が白血病、328症例がリンパ腫、423症例が中枢神経系(CNS)の腫瘍だった。外部放射線の蓄積線量が1 mSv増加するごとの危険率は、癌全般が1.03(95% CI: 1.01, 1.05)、白血病が1.04(1.00, 1.08)、リンパ腫が1.01(0.96, 1.05)、CNS腫瘍が1.04(1.00, 1.08)だった。一連の潜在的交絡因子による補正を試みたが、結果にほとんど影響しなかった。
結論:われわれの研究は、白血病、CNS腫瘍など、小児癌のリスクに背景放射線が寄与しているかもしれないことを示唆している。

2015年4月22日水曜日

サウス・カロライナ大学:ムソー教授が語る、福島におけるツバメの減少

サウス・カロライナ大学
福島における鳥類の個体数の減少
Dwindling bird populations in Fukushima
投稿:2015年4月14日 更新:2014年4月15日
スティーヴン・ポーウェル Steven Powell, 803-777-1923


線量測定
ティム・ムソーと彼の研究チームは、野生の個別対象の放射線量を測定するガンマ放射線感受結晶を使った熱ルミネセンス検出器を用いて、先駆的な調査を実施している。
1年のうちのこの時期は、鳥類が姿を見せ、翼を広げる季節だが、4年前の春到来より少し前の悲惨な日から、日本の福島県は羽のある生きものに信頼できる土地ではなくなった。サウス・カロライナ大学の生物学者、ティム・ムソーらが公表した数件の論文が示すように、その地の鳥類の状況は悪化していく一方である。

2011年3月11日の地震、津波、それにつづく福島第一原子力発電所の核惨事から数カ月後以来、ムソーと彼の共同研究者らは汚染地域における一連の鳥類個体数調査を実施してきた。彼らはこのほど鳥類学ジャーナルに論文*を発表し、57種の鳥類に関する研究に最初の3年間の結果を公表した。

事故の結果、多数の個体群が個体数を減らしていることが判明し、いくつかの種では、劇的な現象にみまわれていた。とりわけ痛烈な打撃を受けた種がツバメ(Hirundo rustica)であり、放射線被曝レベルの個体別測定の結果、被曝線量に比例する形で個体数の著しい減少をこうむったことが認められた。

研究者らはツバメをさらに綿密に観察し、2年間分のデータを分析して、個体数の減少を引き起こしたメカニズムの特定を試みた。しかし、ムソー、彼の博士号取得共同研究者、アンドレア・ボニゾリ=アルクアティ、その他の共同研究者らが先日、サイエンティフィック・レポーツ誌で公開した別の論文*で報告したように、ツバメ雛個体の末梢赤血球を検査した結果、放射線量に正比例する作用の結果としての遺伝子損傷は認めることができなかった。それでもなお、さらに詳細な研究の結果、幼鳥の個体数の減少と割合の低下が共に認められた。

ムソーはこう語る――「災害のあと、あの最初の夏は“最高線量”の地域に入ることがかなわず、次の夏は“中程度の線量”の地域の一部に踏みこむことができただけですので、この研究では、バックグラウンド被曝線量の比較的狭い範囲を扱っていました。したがって、ああいう種類の関連を見出すのに、わたしたちは比較的貧弱な統計検出力しか使えなかったのですし、あれほど少ししかツバメが残っていないという事実とそれを結びつけるとなれば、なおさらのことです。災害の前には、一定の地域に数百羽いたことがわかっているのですが、ほんの2年後には、数十羽が残っているのを見ることができただけです。羽数の減少は、実に劇的でした」。

世界のなかで、フクシマでいま進行している事態をみぬく洞察力をあたえてくれるはずのもうひとつの場所は、ウクライナで1986年、放射性物質の壊滅的な放出が起こった現場、チェルノブイリである。ムソーは、チェルノブイリ+フクシマ研究イニシャティブがカロライナで2000年に設立された時からの主任として、これまで20年間にわたり、野生地帯に生きる動物に対する放射能の影響に関する大規模な研究活動を確立してきた指導者であり、比較を引き出すのに唯一無二の適任者である。

ムソーと彼の長年にわたる共同研究者、CNRS(フランス国立科学研究センター)のアンダース・モラーは鳥類学会誌の別論文*で、フクシマとチェルノブイリにおける鳥類種の反応の異なる様相を論じている。2か所の現場それぞれの放射線による影響の差異は際立っていた。チェルノブイリの変異原性状況において、渡り鳥が周年留鳥に比べて顕著に悪く、その一方、フクシマではその逆が真だった。

ムソーは次のようにいう――

「それによって、わたしたちがたった今、フクシマで見ているものは基本的に――定住動物がそこに長く滞在すればするほど、それだけ大きな影響を受けますので――毒性作用をおよぼしている放射線被曝の直接的な結果によるものであることが示唆されています。チェルノブイリでは多世代を重ねたあと、渡り鳥が一層大きな影響を受けていますが、ひとつの可能性として、これは変異蓄積の違いを反映しています。

「渡りをする鳥類種のDNA修復能力は、少なくとも渡りにつづく短期間、損なわれています。渡り鳥の羽ばたきのあと、運動の影響で酸化ストレスが生じ、抗酸化物質――たとえば、ビタミンE、カロチノイド類――のレベルが正常値より大幅に低くなって、それほど急激な減耗効果をこうむらない留鳥類種に比べて、放射線が渡りをする鳥類種にとって厳しい打撃になるのでしょう」

研究関係者たち、そして鳥類愛好家たち全般にとって、最大の痛恨事であろうことは、フクシマで事態が進行する様相である。これまでの4年間を通して、地域におけるバックグラウンド放射線量が低下傾向にあるにもかかわらず、鳥類に対する事故の有害な影響は拡大傾向にある。


ムソーはいう――「最初の夏には、放射線量と個体数の関係が否定的な形で動き出しましたが、関係の強さは年ごとに増大してきました。そこで、わたしたちは鳥類の個体数と鳥類種の数の両方で実に驚くべき減少を目撃しているのです。ですから、放射線量レベルが下がっているとはいえ、これらの高レベル地域で、生物多様性と個体数の両方が劇的な影響を見せつけているのです」

2015年4月21日火曜日

ミリアム・ジャーマン「平和と相容れない核…リアルな核の脅威」@NatCounterPunch


「アメリカ随一の政治ニュースレター」境界を超えるマガジン
カウンターパンチ CounterPunch 
――事実を伝え、実名を名指す――
週末版 2015年4月10~12日
平和と相容れない核…
リアルな核の脅威
No Peaceful Nukes
ミリアム・ジャーマン MIRIAM GERMAN
時は2015年3月の暗い日々、生態系がこうむった地球上最悪の人災の始まりから4年と2週間の歳月がたって、悪意を秘めた最大手メディア企業の道化ショーに興じる誰にとっても、名を口にするのも憚(はばか)れるようである福島第一原子力発電所は溶けて、米国政府の消えることにない影に隠れたモルドール[Mordor:トールキン『指輪物語』の冥王サウロンが砦を構える「黒の国」]で燻(くすぶ)っていますが、その間にも、ジョン・ケリー[国務長官]とアーネスト・モニス[エネルギー長官]が、わが国のカリフォルニア州、ワシントン州オレゴン州の太平洋岸から遠く離れ、日々にアメリカ人を殺している99基の漏らし、ひび割れ、蒸気を噴き出し、ろくに動かず、咳込み、粒子が爆(は)ぜる原子力発電所の本国から遠く離れた場所で起こっていることについて、すでに死の谷を過ぎた亡霊の耳にだけ聞こえる鐘に向かって、気にかけていると口先だけのことを言っています。
全員の目がイスラエルとイランに貼りついていますが、わたしは焦点を国内に、それもわたしが住むところ、ディアブロ・キャニオン、コロンビアの両原子力発電所が例のアーネスト・モニスによって、わたしたちの環境に大損害を振りまきつづける自由裁量権を付与されている米国西岸だけでなく、他の米国内各地、イランが製造を夢見ることさえやっとこさというやつよりも大きな爆弾のように原発が噴きあがりかねず、しかも、やはりモニスとNRC(原子力規制委員会)ご提供の人工呼吸器と生命維持装置に頼ってはいても、生き残り、電力を供給している米国に戻したいと思います。
ディアブロ・キャニオン、コロンビア発電所。デーヴィス・ベッセ。ピルグリム。インディアン・ポイント。ターキー・ポイント。もっとつづけられますが、われらが米国の裏庭にある核爆弾の陳腐さであなたをうんざりさせるべきではないでしょう。イランのほうが、ずっと興奮する! でも、面白半分で、ちょっと覗いてみましょう。
マサチューセッツ州プリマスの岬にあるピルグリム原子力発電所は、ボストンから20マイル[32キロ]よりほんの少し遠くに立地しています。進入路は1本、退出路は1本です。彼らは安全だといいます。ガッチリしている。活力がある。ピルグリムがメルトダウン。逃げ道はありません。ピルグリムが爆発。逃げ道はありません。NRCは監視しているのでしょうか? ほら、エネルギー省! 国際原子力機関! こっち、こっち! ピルグリムは、核燃料棒が800本あると考えられていたとき、プールに3200本保管しています。PRは、ピルグリムが安全だといいます。ピルグリムは2015年1月17日、ブリザード・ジュノ[米北東部を襲った大吹雪]のさい、高潮時ごろに送電線2本がやられ、停止しました。どれほど安全であれば、じゅうぶん安全なのでしょう?
どこでアメリカの警戒怠りない鷹たちが、正気、明晰さ、透明性の旗を打ち振って、イラクに向かって、俺たちは君たちの息づかいを見つめ、君たちの核施設周辺を見張っているぞと告げているのでしょう? 米国のどこにIAEAが駐在して、同様な正気を示しているのでしょう? 米国民はまったく気にしないか、気にするにしても、気の狂った老いぼれイランだけですか?
米国内で核施設1か所が爆発すれば、核燃料棒の量が膨大なので、多数の核爆弾に匹敵し、爆発による癌発症や死亡者の数は核戦争による数に相当します。イランは核爆弾をまったく保有していませんが、わが国は原子炉99基というベースロード(基礎負荷)を備えており、これはつまり爆弾であり、電線が凍結して、送電網が1か所で故障したり、1本のパイプが凍結したり、1件の火災が発生したり、一人がヒューマンエラーをやらかしたりして、いついかなる時でも爆発しかねません。
オハイオ州デーヴィス・ベッセで、すぐにでも破裂しようとしている爆弾を見てみましょう。(例の鷹のような米国とIAEAの目がイランを睨(にら)んでいますが、40年間の最後の一瞬だけでも、こちらに向けてもらいたいものです) さあ、こころの準備はOKですか?
次に並べるのは、デーヴィス・ベッセに関する事実のほんの一部です――
l  氾濫原に建造されたため、1972年のエリー湖暴風雨のさい、稼働前の原子炉を含め、建設現場全体が大規模な洪水にみまわれた。
l  1977年10月、排気弁が固着。
l  ウラニウム燃料は常時、メルトダウン防止のために水(冷却材)に浸かっていなければならない。デーヴィス・ベッセは1985年6月、給水喪失事故を起こした。原子力規制委員会は施設を1年間閉鎖した。
l  1998年、竜巻のため、外部電源を喪失。
l  2002年3月、怠慢により冷却水にホウ酸が混入し、鋼鉄製の炉蓋を7インチ(178ミリ)以上の深さまで侵食し、3/16″(4.8ミリ)厚の裏貼り材が残って放射能漏れを防いだ。施設は2年間閉鎖され、電気料金支払者に60億ドル(7134億円)を負担させた。デーヴィス・ベッセは3億3500万ドルの罰金が課され、これはNRC史上で最高額である。
l  2004年になった再稼働のために、腐食した蓋は取り替えられたが、この新品に亀裂が見つかり、2011年の再交換に追いこまれた。
l  デーヴィス・ベッセの放射能漏れを防ぐコンクリート遮蔽建屋は、老朽化、劣化、損傷部分を交換するために4か所で大規模に切断された。工事は2011年にはじまり、建屋のコンクリートに裂け目や空洞が見つかった。
モニスはここへ来て、足元の米国土を見つめ、わたしたちの生きる地球そのものを殺してしまう核を、ドヤ顔の尊大な馬鹿たちが世界を救うと信じ、いくつか思いついた凄まじい愚かなアイデアにもとづく大昔のお寒いテクノロジーの遺物とわたしなら名付けるものを、あなたは安全だ、安上がりだ、必要だといまだに信じているはずが、その実、地雷原が横たわって、あなたを待っていたと理解し、認識するがよろしい。あなたは賭博台のどちら側にご着席? いいですか、札はもう開かれていますよ。フクシマ、チェルノブイリ、スリーマイル・アイランド。それに、ハンフォード。
平和利用できる核はなく、核に平和はありません。ただの蜃気楼です。
コロンビア原子力発電所。ワシントン州リッチランド。コロンビア川に立地。コロンビア原発は12本の活断層の上に造られました。建設当時はわかっていませんでしたが、今では事実が判明しています。この原発は、米国北西部でいつ起こってもおかしくないマグニチュード9.0の地震に耐えられません。閉鎖すらしません。事実をもって、わたしたちには人道目的で変化を促す能力で武装しています。でも、わたしたちが心配なのは、戦争目的の武装だけです。コロンビア原発の燃料プールのまわりには格納容器がありません。燃料プールは4階の高さにあります。フクシマを考えてみましょう。ほんとうに。フクシマを考えろ。コロンビア原発の原子炉はフクシマのものと同型です。コロンビア原発はハンフォードの高レベルに放射性の核廃棄物5600万ガロン(212,000 m3=200 l.ドラム缶換算で106万本分)から10マイル(16キロ)のところにあります。コロンビア原発でメルトダウンか爆発が起これば、ハンフォードを巻きこむでしょう。放射線量が著しく高レベルなので、浄化のために地域に入るすべはないでしょう。コロンビア川はじかに太平洋に流れています。コロンビア原発は2、3週間に1度ばかり、モニタリング回路に問題を起こしています。この回路がなければ、原発構内から環境に出ていく放射能レベルを測定できません。あげくの果てに、管理職から作業員まで薬物乱用の記録があり、抜き打ちのドラッグ検査をすると構内でラリってたり酔っぱらっていたりしており、その記録がとても多いものだから、わたしたちはスプレッドシートを用意して、定期的に記入しています。あなたはコロンビア原発の近くに住みたいですか?
IAEAはどこにいるのでしょう? 彼らはイラクに飛ぶために待機中です。
ディアブロ・キャニオン。汚職。パシフィック・ガス&エレクトリック。水資源局。太平洋への熱水の違法投棄。ディアブロ・キャニオンの基礎部にある断層線の写真を一瞥し、カリフォルニア州沖合の海を覗きこめば、精神疾患の光景を理解することになります。前回の地震によって、原発の基礎部にへこみが生じました。このくぼみに棲息する海洋生物は、ディアブロが採用する「非循環」冷却方式によって流出する熱水のために殺されてきました。カリフォルニア。ハイウェイ101号線。サンルイス・オビスポ(SFとロスの中間にある都市)。少なくとも原発事故は1パーセントを気にしません…放射能はお金持ちも殺しちゃいます。ディアブロ・キャニオン周辺の放射線レベルは、ほんの数マイル離れたところに比べて、目に見えて高いのです。わたしはIAEAがここに来て、NRCが実施を求めているルールが順守されているか、確認してほしいと求めているのです。実施なんて、どこでしていますか? 実施なんて、とても… どうぞ、イランに目配りを。
フロリダ半島の先端に立地するターキー・ポイント原子力発電所のモットーは、「人と環境を守る」といっています。このモットーはからっきり正しくもなく、現実に即してもいません。人間を守りながら、原子力を保持することは可能でなく、原発を保持することの切っても切れない理由である核爆弾はいわずもがなであり、また前述したように、結局、原子力発電所は兵器庫に備蓄した核爆弾でもあるのです。戦争に平和はありません。核と併存して、生命を維持する環境はありません。この場合もやはり、上記のすべてが証明済みでありながら、だれも真実を語る科学者たちに本気で耳を傾けないのです。真実として、わたしたちが全面的に、また隠しようもなく、老いぼれた核の恐竜が吐き出す放射能で自殺しようとしているのであり、わたしたちの救出に駆けつけてくれる環境保護庁や原子力規制委員会やエネルギー省や国際原子力機関はないので、だれも真実を気にかけようとしないのです。
環境保護庁は、核事故が発生するとき、または好きなときにデータベースをサッサと閉鎖します。環境保護庁サイトを開き、フクシマ核惨事当初から数週間分のカリフォルニア、オレゴン、ワシントン各州の計測値を探せば、あなたご自身でこのことを確かめることができます。
原子力規制委員会のお仕事は、核施設規制の順守状況を監視することですが、核のお仕事をサボると、契約事業者と委員たちのポケットに入ってくるお金の流れをよくすることになるので、ろくな仕事をしていません(Bechtel/Hanfordを参照のこと)。原子力規制委員会の内輪だけのモットーは、NRCによる規制緩和のおかげで、老朽化した原発が操業規則の順守を達成できるようにするために、核施設の安全基準を引き下げろというものです。おわかりになりました?
国防核施設安全委員会(DNFSB)のお仕事は、エネルギー省(DOE)の国防関連核施設における公衆衛生と安全性の問題が適切に対処されているかを監視することであり、適切でない場合、大統領とエネルギー長官(あのモニスを憶えていますか?)に報告することになっています。でも、DNFSBはDOEに対して本物の権限がなく、DOEはそのことを知っています。DOEには本物の独立監視機関が備わっておらず、この問題に関して、原子力規制委員会や国際原子力機関(IAEA)も右に同じです。IAEAは人類の護民官を装ってはいますが、平和目的のための原子力と兵器を後押しするために創設されました。機関は、全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、及び増大するように努力しなければならない(IAEA憲章第2条)――このようにIAEAウェブサイトに述べられています。見上げたものです。この一節をもう一度読んでみましょう。もはやどのような独立監視機関もなく、とりわけアルファ・ウルフ(ゲームのキャラクター)がなんともお優しいことに、世は天下泰平といってくれるとき、核のある世界は生きるのに安全でない世界なのです。われらには、われらを守る核がある!
ニューヨーク市(NYC)。800万人を優に超える人びとが暮らす街、そしてブロンクス(NYC最北端の行政区)からほんの25マイル(40キロ)の距離に立地するインディアン・ポイント原子力発電所。ここに漏れで知られる核施設がありますが、IAEAとそのイランにおける安全に関する深刻な懸念の眼差しは、その故郷(IAEAは米国主導で創設)の近くではどこにも向けられていません。インディアン・ポイントはトリチウムを漏らしています。トリチウムが地下水、飲用水、あるいは河川や湖に混入すれば、どれほどひどいことになるか、あなたはご存知でしょうか? IAEA、DOE、NRCに任せていれば、ビッグ・アップル(NYCの愛称)は溶融コリウム(酸化ウランとジルコニウム、鉄などの溶融物)になってしまうかもしれません。
ケリーとモニスが近ごろ、IAEAのイラン行きに関連して監視と懸念と安全と透明性について盛んに語っていますので、MOX燃料に言及しておきましょう。プルトニウムが爆発すれば、ウラニウムよりも大量の熱と放射能を放出し、ウラニウムを用いた爆発に比べて、2倍の癌発症数を民間人にもたらしますが、核兵器から取り出したプルトニウムは、核施設の燃料に使用することができます。事実:MOX燃料は最も爆発しやすいタイプの燃料。MOX燃料は核兵器のヴァイアグラ。それなのに、核エンジニアたちは最も爆発しやすいと知りながら、MOX燃料を原子力発電所に装填すると決めています。まるっきり狂っています。
アレヴァの上級副社長、デイヴィッド・ジョーンズは原子炉でMOX燃料を燃やすことについて、「わたしが思うに、それは最高の解決法です…危険であるように設計されたものを取り出し、それを社会に役立つものに変えるのです」といいました。現実としては、これは社会への贈り物ではなく、アレヴァのための贈り物であり、アレヴァはプルトニウムを実質的に無料で仕入れ、それをMOX燃料に加工して、核施設に装填し、お金を稼いでいるのです。
MOX燃料は福島第一原子力発電所の3号機で使われ、3.11のさい、空高く噴きあがり、世界に放射性粒子を浴びせて、それが地球上の民間人と動物たちに、知ることもなく意図することもないまま、吸引されたのです。
あなたは安全がどれほど安全であってほしいでしょうか? IAEAはMOX燃料を燃やすことを許しています。IAEAはイランの核を査察しようとしています。IAEAは米の核にダメ出ししません。IAEAはなにも監視していませんが、核の力を推進しています。この地でただひとつ真実であるものは、蜃気楼です。
彼らは東に向かって息を詰め、彼らを解き放ち、彼らを闘争から自由にする力を、鎖の錠前が外されるのを待ち望んでおり、東西、南北の皆もろともに天国の扉が開くのを見て、千疋の蛾のように地獄へと吸いこまれ、背後の路上で最後の残り火がくすぶり、地球上に残されるものは、無為に過ごす永遠の暗闇だけになるのです。
【筆者】
マリアム・ジャーマンMiriam German は、RadCast.org.理事、 2112年に No Nukes NWを創設。
[訳注:挿画はすべて訳者による。出所はWikipedia]