2015年8月17日月曜日

【そもそも総研】火山が噴火しても原発は問題ないのだろうか [ビデオ書き起こし]15:43


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玉川徹キャスター:そもそも火山が噴火しても原発は問題ないのだろうか。九州電力の川内原発、鹿児島県にあります。規制委員会の規制基準に適合しました。政権の方も再稼働を進めて いきたい。
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桜山、霧島山、それから阿蘇山…これは表面に見えている火山なんですけど、カルデラっていうのがあるんですね。キーワードとして、カルデラというのはなんなんだ、ってことですね。こんなにあるんですね。この川内原発の周りにも、この赤で囲ったところ。このカルデラってのが問題だよ、と火山学者がおっしゃっている。カルデラのなにが問題かというと…火砕流。今回注目したのが、この姶良カルデラというのがあります。
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キャスター:こちら、桜島ですよね。
井村隆介・鹿児島大学准教授:はい、そうですね。鹿児島市のシンボルですね。
キャスター:カルデラって、そもそもなんなんですかね。
井村准教授:過去に大きな噴火が起こって、マグマが地表にたくさん出てしまったために、地下に空洞ができて、上の部分が陥没した…そういうふうに考えられるのが、カルデラになるんです。
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ナレーター:川内原発付近には、過去に大噴火を起こし、今後も噴火の可能性を残すカルデラが5つも存在しています。この場所からその1つ、姶良カルデラを見ることができます。
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井村准教授:この湾のすべてですね。
キャスター:向こう岸まで相当ありますけど、この周りのところが、全部カルデラ?
井村准教授:はい、そうです。大きな噴火によって、周りよりも落ち込んでしまった部分が、幅20km、長さも20kmくらいあるということになります。
キャスター:どういうふうにして、そうなるんですか…一気にですか?
井村准教授:そうですね。富士山というのは、400km3くらいあって、日本で一番大きな火山なんですけれども、それが10万年くらいかかって、できたものなんですよね。それに対して、姶良カルデラからの噴火というのは、たった1回の噴火で、それを全部出してしまった。そういうことが起こると、この直径20kmくらいの地域がドンと陥没することになります。
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キャスター:一気に噴きだしたというものは、なにが噴きだしたのですか。
井村准教授:火砕流と呼ばれる現象なんですけれども…
キャスター:あの雲仙普賢岳みたいなものですか?
井村准教授:そうですね。現象的には同じものです。ここで起こるようなカルデラ噴火というのは、地面の下から直接、火砕流となって出てくるような非常に激しい噴火になります。
キャスター:スピードというのは、そういうものは?
井村准教授:流れるスピードは、時速100kmくらい。
キャスター:100km? もちろん高温なわけですよね。
井村准教授:そうですね。マグマから直接、来ますので、出た瞬間には600℃とか700℃。
キャスター:それだけ大量の火砕流があふれでて、川内原発にも関係があったんですか?
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井村准教授:そうですね。3万年前のここ(姶良カルデラ)から出た火砕流というのは、半径80kmくらいの地域に広がっています。川内原発というのは、ここから50kmくらいしかないですから…
キャスター:どれくらいのスピードで行くんでしたっけ?
井村准教授:時速100kmくらいですから、川内原発だと、ここで噴火が起きてから30分くらいには到達していることになります。
キャスター:30分で行っちゃうんですか?
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ナレーター:姶良カルデラが噴火したのは、今からおよそ3万年前…富士山1つ分に相等する火砕流が半径80kmの地域をアッという間に覆いつくしたといいます。
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ナレーター:原子力規制委員会の新たな規制基準では、原発に影響をおよぼす火山の可能性について、「火山学的な調査をおこない、火山の活動履歴や活動間隔などを総合的に検討する」よう事業者に求めています。それに対し、九州電力は、「巨大噴火の経験発生間隔は、9万年」と策定。「もっとも新しい大きな噴火は、およそ3万年前のため、川内原発の運用期間中に、火山が原発の安全性に影響をおよぼす可能性はじゅうぶん小さい」としました。原子力規制委員会も、これを「妥当だ」と判断しています。
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井村准教授:火山学者から見ると、非常に粗い議論だと思うんですが…なぜかというとですね、姶良カルデラだったら、姶良カルデラ自身の噴火の履歴ですよね…何年くらい前にあったのかというのが、歴史で残っていれば、およそ何年間隔かって、わかるのですが、その9万年というのは、霧島の北側にあるカルデラとか、4つくらいのカルデラを全部合わせたものなのです。ここの噴火は3万年前の1回しか起こってませんから、次にいつ起こるか、実は全然わからないんですよ…感覚的には。
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ナレーター:同じ九州にある阿蘇カルデラは、27万年前から4回、大きな噴火をしています。しかし、噴火の間隔は、1回目と2回目のあいだが、およそ13万年、2回目と3回目のあいだが、およそ2万年、3回目と4回目のあいだが、およそ3万年と、必ずしも一定ではないのです。
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井村准教授:姶良カルデラも3万年前に噴火したわけですから、そろそろ次の噴火が起きてもおかしくないというような考え方もできるわけです。
キャスター:3万年前に溢れでた火砕流というのは、川内原発まで行ったという証拠はあるんですか?
井村准教授:そうですね。川内原発のすぐそば3kmとか、そういう以内で見ることができます。
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ナレーター:川内原発からわずか2.8km3万年前の巨大噴火で姶良カルデラから流れでた火砕流の爪痕が残されている場所へと向かいました。
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井村准教授:この崖が全部(3万年前の火砕流)なんですけれども、高さが5mくらい、ここだけでもあります。下が見えていませんから、たぶん全部の厚さとしては、10m近くあると思うのですが、これが700℃とか800℃の温度を持って、姶良カルデラから30分くらいで…
キャスター:ちょっと、ボロボロになっていますね。
井村准教授:ボロボロとしているやつがですね…
キャスター:これが火砕流ですか?
井村准教授:はい、火砕流です。
キャスター:いま川内原発から3kmほどの場所なんですよね。これは川内原発の場所まで行っているんですか?
井村准教授:行っていると思います。3万年前の火砕流が、この(川内原発の)敷地内に来ていることは、ほぼ間違いないですし、次に同じような噴火が起こったら、間違いなく(火砕流が)やってくると思います。そうなったときには、原子炉というのは、もう全く手当もできなくなってしまいますから、過酷な事故になることは、もう目に見えているわけです。そう考えると、やはりここにあることを、もうやめたほうがいいんじゃないかな。要するに、立地不適です。
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キャスター:規制委員会は「大丈夫だ」といっているんだから、「大丈夫だよ」ということで、政府は動かそうとしているわけですよね。多くの人は、火山に関してはリスクはないだろうというふうに思っていると思うのですが…
井村准教授:火山学的には、非常に粗い議論のなかで組み立てられている。いまの火山学からすると、そういう(巨大噴火の)前兆現象もとらえられないのではないかな、というようなこともあります。決して科学的にリスクが全然ないんだというふうに評価されたわけではないということを、ちゃんと理解しておいていただきたいなと思います。火砕流が起こったときの苛酷さというか、ほんとうにすべての動植物が焼き払われて死んでしまうというようなことを火山学者は知っていますので、そういう状態で、こういう(原発)施設が管理できないことはわかっているわけです。だから「リスクがあると、やはりこれはダメなのではないか」というふうに、火山学者の立場から言うと、言わざるをえないということになります。
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キャスター:どういうことが起きるかというとですね、原子力の専門家に、わたし聞いています。まず、火砕流がやってきたら、近寄れないんですね。これが冷えるまで、相当、時間がかかりますから、近くになんか、近寄れません。もちろん、全部の電源が落ちます。そうすると、なにが起きるかというと、全電源喪失が起きます。全電源喪失というと、もうみなさん、おわかりですよ…メルトダウン。

だから、これ確かに3万年に1回のような大噴火が起きれば、南九州はほぼ壊滅します。だから「同じじゃないか」というふうに思われる方もいるかもしれないですけど、火砕流だけであれば、冷えれば、あとそこで復興ができるわけですよね。しかし、ここで原子炉がメルトダウンを起こして、放射能が撒き散らされれば、どういうことになるか、みなさん、もうご存知ですよね。
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キャスター:佐藤さんが、「いや、大噴火がなくたって、それ以前のもうちょっと小さい噴火でも、じゅうぶん危険ですよ」というふうなことをおっしゃっているのですよ。
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佐藤暁(さとる)氏 (原子力コンサルタント、元GE原発技術者):(火山の)大噴火ですよね。3万年前にあったというところは、もちろんインパクトは大きいわけですけれども、それよりもはるかに規模の小さい噴煙、噴火、火山灰ですよね…これが原子力発電所に対して無視できない影響があると思います。
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キャスター:火山灰の影響というのは、具体的にどういうことがありえるんですか?
佐藤氏:火山灰は、原子力発電所の所外電源、送電線への影響が確実に起こります。送電線に火山灰が付着しますと、火山灰は硫酸イオンだとかを含んでいますので、それが湿気で送電線に「地絡(ちらく)」を起こさせて、送電線の電気が地面にアースしてしまうと…そういう危険なことが起こりますので、それを保護するために、停電になってしまうわけです。
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キャスター:火山灰が大量に降ると、送電線が停電する?
佐藤氏:そういうことです。
キャスター:そうすると、外部電源はどうなります。
佐藤氏:外部電源の喪失ということになりますから、原子力発電所は、所内の非常用電源で守らなきいといけないと…
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キャスター:外部電源が断たれたと…だけど外部電源が断たれても「準備してます」ときっと言うと思うんですけど、電力会社は。
佐藤氏:実際に非常用ディーゼル発電機があるわけですね。容量も大きなディーゼル発電機です。ですから、ディーゼル・エンジン自体の冷却のために、設置された部屋を大量の空気で冷やさないといけないわけなのですけれども、それにも火山灰が巻き込まれていくというようなことが起こるわけです。
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キャスター:そうすると、ディーゼル発電機はどうなるんですか?
佐藤氏:ディーゼル・エンジンを燃焼させるため、エンジンのなかに空気を送るわけですけれども、そこにはフィルターがついています。それが詰まって、エンジンが止まるか、オーバーヒートするかといったことが起こりますので、非常にこのディーゼル発電機は短時間で、今のままでは停止してしまうと思います。
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ナレーター:佐藤氏は、「数万年単位で起こる巨大噴火だけではなく、100年単位で起こりうる噴火の火山灰も無視できない」と指摘します。今から100年前、大正大噴火と呼ばれる桜島の噴火が起こりました。気象庁のシミュレーションでは、100年前と同規模の噴火が起きた場合、川内原発の周辺には、およそ3cmの火山灰が降り積もるとしています。
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佐藤氏:ディーゼル発電機室の他にも、原子炉建屋のなかにはいろいろな機器があるわけです。中にはやはり重要なものがあるわけですので、それを守るとなれば、最終的には建屋全体の空気を管理しないと…
キャスター:建屋のなかの電子機器とかも、火山灰から守るためには、建屋全体をクリーンルームにするという感じじゃないと…
佐藤氏:理想的には、そういうことをしないといけない…
キャスター:でも、それは大変なんじゃないですか?
佐藤氏:もちろん、大変なことです。
キャスター:そういうふうな設計じゃないですよね?
佐藤氏:そうですね。
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キャスター:灰といっても、小さいんですよね? そういうものが、機械とか、エンジンだとか、そういうものを全部止めてしまう可能性があるということですか?
佐藤氏:そうですね。
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キャスター:どれぐらいの(噴火の)レベルだったら、もうこれは心配だなという感じになりますか?
佐藤氏:アイスランドであったような噴火からですね。
キャスター:あれから飛行機がほとんど飛ばなくなった…
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ナレーター:20104月に起きたアイスランドの噴火では、およそ30か国の空港が閉鎖され、10万便以上の飛行機が欠航となりました。これは火山灰の影響で、飛行機のエンジンや計器に異常が出るためです。それだけ機械などは火山灰に脆弱なのです。
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佐藤氏:川内原子力発電所みたいな発電所は、世界に1つもないんですよね。
キャスター:要するに、周りにそれだけ火山があるような…
佐藤氏:(周囲が)カルデラだらけというような(原子力)発電所は実はないわけです。ですから、きちんとそこら辺を考えだすと、悩まなきゃいけないことはたくさんあるわけなのです。
キャスター:準備が無限大に必要ですよね。本当に火山に対して備えるなら…実際、それはやってないということですね。(火山に対する)備えは…
佐藤氏:いや、それは今まで議論をしたことないと思いますし、いま急にふって湧いた議論だと思うのです。規制委員会にとっても、電力会社にとってもですね…今まで真面目にこれに取り組んだということはないと思うのです。
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キャスター:火山灰というものは、非常に目に見えないぐらい細かい、小さいものでも、機械にとっては、すごい脅威になると…
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【火山灰についての規制基準】
「外気取り入れ口からの火山灰の侵入により、換気空調系統の目詰り、非常用ディーゼル発電機の損傷等による、系統・機器の機能喪失がなく、中央制御室における居住環境を維持すること」というのが、規制基準なんですね。
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キャスター:じゃあ、これで適合したというのが、答えだと思いますよね?
じゃあ、規制委員会、それから九州電力…どういう回答だったのか…
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【九州電力の回答】
「ディーゼル発電機の吸気取入口およびディーゼル発電機等が設置されている建屋については、外気取入口に粉塵を除去するフィルターを設置しており、空気中に含まれる火山灰がディーゼル発電機や建屋内に侵入し、設備に影響をあたえることはないと考えている。
「なお上記については審査会合で説明している」
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【原子力規制委員会の回答】
「ディーゼル発電機のフィルターの性能は、0.12 mm以上のものは90%除去できる。これ以下のものは仮に機関内に取り込まれたとしても、硬度が低く、発電機の中で砕かれるので影響はない。
「建屋については、噴火の際には中央制御室の空調を閉運転とすることにより、灰などが入ることはない。
「なお閉運転の状態で約64時間、外気を遮断したままでも、中央制御室の運転員の操作環境に影響を与えない」
このように言っているのですが、これをもう一度、佐藤さんに見てもらいました。
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キャスター:原子力委員会の回答は、この0.12 mm以上は90%除去できるという話でしたよね。これに対して、佐藤さんは、90%は除去できるということは、10%はなかに入るということ…「10%でも残ってしまえば、悪影響がありますよ。ディーゼル発電機だって、それで悪影響を受けますよ」ということでした。
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それから、この0.12 mm以下というのは、影響ないって言い切っちゃてるわけですよね。ところが、佐藤さんは、「0.12 mm以下の灰でも、機械を止めてしまう可能性は十分ある」。
ちなみにですけど、0.12 mmよりもっと小さい、この0.06 mm以下の灰というのは、火山灰の実は約80%あるという話です。
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今日の結びですけれども、【事故は必ず想定外の状況で起きる!】
津波の影響に関しては、今回、津波が原因の事故が起きたわけだから、それなりに考えたわけですよね。しかし、ほとんど火山に関しては詰まった議論ができていないんじゃないか。

【参照記事】

2015618

…以下、該当部の抜粋

もうひとつの外部事象――火山

前述したように、IAEAフクシマ報告は天災を慎重に評価する必要性を強調している。川内原発の反応炉、そして他にも日本の複数の原発の場合、そのような災害のひとつが大規模な火山噴火によるリスクである。川内原発は桜島の活火山から50キロの場所に立地している。この面でもまた、川内原発に対する火山ハザードを考えると、NRAIAEAが勧告する基準を昨年から適用していない。具体的にいえば、NRAは、いわゆる設計基準――核施設運営者は施設が極端な火山事象に耐えられるように改修しなければならないとする要件を含む――2012年のIAEA火山安全指針52の要になる勧告を適用していない。九州電力は欠陥のある史料分析を頼りにしており、川内の核反応炉に到達する可能性があり、敷地内外の放射線に関連する重大な結末を招きかねない火山灰降下物を過小評価している。
52 IAEA Volcanic Hazards in Site Evaluation for Nuclear InstallationsIAEA「原子力発電所等の立地評価における火山ハザード」)、Specific Safety Guide No SSG-21, IAEA 2012,

大規模な火山灰堆積の重大な結果のひとつとして、それが共通モード故障[同時多発的な故障]を誘発しかねず、そうなれば、安全機器とその機能、また核施設内外における他の日常的な機器類稼働状況の不全という結果になりかねない――降灰の影響がひとつであれば、それ自体が単独では施設を機能不全に陥れるのに充分でないかもしれないが、複数の故障が束になって無秩序に進行すれば、施設の全般的な復元力が失われることもありうる。火山の大噴火に引き続き、降灰の必然的な影響のひとつとして、配電網や開閉装置がショート(フラッシュオーバー=爆発的な炎上)を起こし、その結果、反応炉と貯蔵槽内の使用済み燃料を冷却するために核施設が頼みの綱にしている外部電源の喪失(LOOP)を招きかねない――この結果として、川内の核反応炉2基とそれぞれの使用済燃料プールは、地震につづき、津波の到達の前に福島第一原子力発電所の反応炉がこうむったのと同じリスク状況に陥ることになるだろう53
53 川内原発はこのLOOP状況において、全面的に緊急用ディーゼル発電機に頼ることになるだろうが、それなのに九州電力は、とりわけ(発電機の運転に必要な)エアフィルターのつまりを解除するための計画において、これらの発電機の適切な保守管理に備えていない――つまり、同社の計画では、26.5運転時間ごとにフィルターを交換することになっているが、米国NRAはコロンビア原発に対して2.3運転時間ごとのフィルター交換を求めている。これは、LOOP、その他の影響と重なれば、全電源喪失、および核反応炉と使用済み燃料の冷却機能喪失を招くだろう。
See, “Implications of Tephra (volcanic ash) fallout: On the operational safety of the Sendai nuclear power plant”, Large & Associates, Greenpeace Commissioned report, February 26th 2015
2015/2/2【プレスリリース】グリーンピース委託レポート『川内原発と火山灰のリスク』発表

NRAと九州電力は、基幹的な建屋、屋上、アクセス経路に堆積する火山灰を除去する方法について、信頼しうる計画を備えておらず、とりわけ800トン以上の放射線レベルが高い使用済み核燃料を収納する建屋の屋上の場合――九州電力は、使用済み燃料建屋の屋根の余裕、つまり火山灰層による過負荷に対する安全裕度が最小限であると認めており――屋根崩落のリスクが高くなる結果になっている。ここでもまた、核産業によるプレッシャーが、フクシマ後の安全規制の策定と適用の両面にわたる弱体化における決定的な要因になっている。

核技術者、ジョン・ラージ博士は、川内原発の火山ハザードとNRC審査の過程を分析しており、次のように結論づける――NRCの火山影響評価ガイドの初稿は、核施設運転員が確率および『想定外』状況に対応するリスク情報準拠手法を備えていることを求めており、川内原発について、⽕⼭影響評価ガイドに準拠した復元力を策定し、含んだうえで、上記の極端事象に対応するように物理的に改修するように求めていた。ところが、NRAガイドの最終版では、こうした要件がすべて脱落しており、したがって、九州電力が避けられない事態に対して常識である予防措置を備えていなくても許されることになった――その結果、川内原発の最終的な火山立地評価は脆弱なものになり、火山活動地帯における核施設立地評価に関する国際原子力機関の安全勧告から、かなりかけ離れたものになった」54

これが、フクシマ核事故の原因になった規制の落ち度から学んだはずの教訓を、新たに発足した規制機関、核産業、そして最終的には日本政府が無視していることを示す、さらにもうひとつの実例である。


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