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アストロ・ボーイ(鉄腕アトム)のようなキャラクターが核エネルギーの利点をほめたたえ、2011年に惨事が勃発したさい、衝撃をなお過酷なものにした。
ハリー・フォーセット
核エネルギーに対する1970年代日本の立場を知るための歴史的な文書を探しているなら、政策文書、学術論文、あるいは報道記録をくまなく探せばよい。
それとも、西東京のマンガ専門店に立ち寄って、年代物のコミック本2点、『アトムジャングルへ行く』と『よみがえるジャングルの歌声』を探すこともできる。
主人公は鉄腕アトム、または日本以外でよりよく通用する名としてアストロ・ボーイであり、2冊とも、すごく桁外れ――美しく描画され、辛辣な皮肉がこめられている。
1冊目のストーリーはこうである――
はるか遠くにあるジャングルで、動物たちが困っています。母なる自然が動物たちを見放したのです。気候が寒冷になり、植物が枯れようとしており、動物たちは飢えようとしています。
そこで、動物たちはアストロ・ボーイに助けてくださいと頼みました。住処を暖めるにはどうすればよいか、熱心な話し合いがはじまりましたが、水が凍っているので、水力は使えません。石油はなくなろうとしています。動物たちに必要なものは、核発電所でした。
アストロ・ボーイが空を飛んで、日本から反応炉をジャングルに運んできましたので、動物たちはみな力を合わせ、張り切って反応炉の周りに発電所を建てはじめました。
ハイエナでさえも、協力しようと決心しました。小さなネズミは、青写真が巻き上がらないように、必死になって押さえています。公益である核エネルギーのために、一致団結しています。
動物たちはみるみるうちに、彼らの気候問題に対する、輝くばかりの安全な解決策を実現し――さらに一歩前進して、植物がふたたび育つのを助け、おまけに健康に必須なビタミンDの生成にも必要な人工太陽に電力を供給した。
アストロ・ボーイの生みの親、手塚治虫は常々、日本の核産業にイメージ・キャラクターを提供するつもりはなかったし、このジャングル物語にかかわったことはないと主張していた。
それなのに、このマンガは学校の発電所見学会のさいに無料冊子――キュートな小動物に込められた「原子力は安全」メッセージ――として配られていた。
『よみがえるジャングルの歌声』では、このメッセージに疑問が持ち上がり、その後、それが真実だったと凱歌をあげる。
同じような環境変化に苦しんでいる、もうひとつ別の動物たちのグループが、核大学で勉強するために日本に来るのである。
動物たちは卒業し、お祝いをし、自分たちの発電所を建造するために帰郷する。
アストロ・ボーイは動物たちに、原発が安全であり、地震にさえも耐えることができると教える。
地震がほんとうに勃発し、おまけに津波を引き起こす。逃げ出した動物たちは、揺れる地面と横倒しになる木々に恐ろしい思いをする。
動物たちが戻ってみると、発電所に残っていた勇敢なライオンがいて、完全に無傷なままの反応炉の前で彼らの帰還を歓迎してくれる。動物たちは、アストロ・ボーイが初めから正しかったと納得し、感謝をこめて歌う。
現実世界では、冊子で描かれたような輝かしい完成度から日本の核技術が程遠いことは、いうまでもない。
2011年に地震と津波が福島第一原発を襲ったとき、反応炉建屋は爆発し、炉心はメルトダウンし、世界はチェルノブイリ以降で最悪の民間核産業災害に直面した。
楽しい物語を大量にばらまいていた産業の実態は、自画自賛していただけであり、規制も貧弱だった。
アストロ・ボーイの物語は極端な例かもしれないが、日本の国民が心配せずに、原子力を愛するように常に説得されていた様相を反映している。
この宣伝は、ヒロシマが原爆で完全に破壊されてから、ほんの11年後、広島市内で原子力平和利用博覧会が開催された時にはじまり、ついには日本が50基以上の核反応炉を保有するようになるまでつづいた。
反応炉はフクシマ核惨事の余波で、順次、運転を停止した。川内原子力発電所における最初の再稼働が2日後に実施されることになっている。
日本の核監視機関、原子力規制委員会は8月8日、新しい手続きのもとで、フクシマ惨事の規模の事故の再来は考えられないと述べた。
だが、絶対的な安全はないとも付け加えた。
出処: Al Jazeera
本稿は、公益・教育目的に日本語訳
ビデオ日本語訳トランスクリプト:
アルジャジーラ【動画】日本人の原子力贔屓を煽ったマンガ
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【参考文献】
47NEWS特集『原発と国家』
番外編・アトムの涙 手塚治虫が込めた思い
「僕のアトムじゃない」
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電力会社がPRに利用
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科学とエゴのはざまで
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