2014年11月14日金曜日

ウッズホール海洋学研究所【ニュースレリース】フクシマ放射能 北米西岸沖合で検出

ウッズホール海洋学研究所
Woods Hole Oceanographic Institute
ニュースレリース
フクシマ放射能 西岸沖合で検出
Fukushima Radioactivity Detected Off West Coast
速報版
メディア広報事務局 media@whoi.edu
20141110
(508) 289-3340
米国およびカナダの太平洋岸域におけるモニタリング活動の結果、カリフォルニア州ユリーカの西方150キロの海域で2011年の福島第一原子力発電所事故に由来する放射能の存在が微量ながら検出された。ウッズホール海洋学研究所の科学者らが実施中の海洋における自然および人間活動起源の放射能のモニタリングの一環として、微量ながら紛れもない放射性化合物を見つけた。
2011年に日本沖合で発生した津波の余波として、福島第一原子力発電所はセシウム134およびその他の放射性元素を未曾有のレベルで海洋中に放出した。そのとき以来、放射性の海水塊は主として海流に乗り、途上で希釈されながら東へと移動し、太平洋を横断した。2011年に損壊した原子力発電所の近海において放射能レベルが最高だったとき、その絶頂期レベルは北米近海における最近の検出レベルの1000万倍以上に達していた。
モニタリング活動を主導するWHOIの海洋化学者、ケン・ビューセラーは次のようにいう――「わたしたちは北カリフォルニア沖合において、フクシマ由来のセシウム134を検出しました。たいがいの人はフクシマ以前からすでにセシウムが太平洋の海水中に存在していることがわかっていませんが、それはセシウム137同位元素だけなのです。セシウム13730年の半減期でもって放射性崩壊するものであり、1950年代と60年代の大気圏中核実験によって環境中に持ちこまれました。わたしたちはセシウム137と併せて、セシウム134も検出しました――これもやはり自然状態の環境中に存在せず、半減期がたった2年です。したがって、現時点における、この太平洋中のセシウム134の唯一の発生源はフクシマということになります」。
これら新たに得られた沖合のデータが伝えるセシウム134の量は、1立方メートルあたり2ベクレル(海水160ガロンあたり1秒間に原子崩壊が起こる回数)以下である。このフクシマで生成されたセシウムのレベルは、国際的な保健機関によれば、人間の健康や海洋生物に対する測定可能なリスクが予想されるレベルよりもはるかに低い。また、米国環境保護局が定める飲用水の許容限度より千倍以上も低い。
科学者たちは、フクシマからのセシウム134がアラスカおよびカナダの沖合に出現する時期と量を予測するためのモデルを使ってきた。彼らは測定可能な量のセシウム134が北米海岸に沿って南下し、やがてハワイ方向へ逆流すると予想しているが、モデルによって、見つかる時期と量とが大きく違ってくる。
「沖合表層の海水と沿岸域の海水の混ざり合いが予測困難ですので、わたしたちにはフクシマの同位元素が海岸近くで検出される時期が正確にはわかっていません。沿岸海流と低温深層水の近海上昇流が混合を邪魔します。今年の冬、一般的に上昇流が弱くて、沿岸の海水と沖合の海水の入れ替わりが進むとき、試料を採取して、もっと学ぶつもりです」と、ビューセラーは述べた。
沿岸海域の放射能モニタリングに資金を拠出する米国政府機関は現時点で存在しないので、ビューセラーは大衆資金拠出による市民科学プログラムを立ち上げ、北米西岸およびハワイの海岸沿いで試料を採集し、最新の科学データを確保するために一般市民に関与していただくことにした。ビューセラーがプログラムを発足した20141月からこのかた、個人やグループが50件以上の海水試料を集め、分析のための資金を募った。アラスカからサンディエゴ(カリフォルニア州南部)にかけて、またハワイのノースショア(オアフ島)で採集した試料の分析結果はウェブサイト“How radioactive is our ocean?”に掲載されている。これまで、ビューセラーが調べた沿岸の試料はすべてフクシマ由来のセシウム134の徴候を示していない(試料のすべてが1立方メートルあたり0.2ベクレルの検出限界値以下だった)。
今週に発表された沖合放射能データは、アラスカ州ダッチ・ハーバー=カリフォルニア州ユリーカの間を航海した調査船ポイント・スールに乗り組んだボランティア・グループが採集し、ビューセラーの研究室に送られた海水試料のものである。これらの結果は、20142月にホノルルで開催された学会において、ノヴァスコシア州ダートマスのカナダ水産海洋省に所属する科学者、ジョン・スミスが報告した先行データを追認するものであり、彼は先に実施されたカナダ沖合の研究航海で同様なレベルの調査結果を認めていた。ビューセラーとスミスは目下、カナダの太平洋と北極海の沿岸域とその住民らにフクシマがもたらす環境リスクを確認し、報告するためにカナダの科学界、政府、NGOが連携し、カナダのヴィクトリア大学に所属するジェイ・カレンが主導するInFORMという新プロジェクトで一緒に研究している。
ビューセラーは、太平洋を横断する放射能の拡散が進展しつつある状況であり、研究船ポイント・スールが実施した類の注意深い不断のモニタリングが必要であると信じている。
「大衆資金拠出方式は、一般市民に参画していただき、沿岸近海で進行している事態を解明するための重要な手段でありつづけています。ですが、海流がセシウムを海岸に運ぶ様相を理解するために、海洋科学者らは沖合でもっと研究しなければなりません。モデルはセシウムのレベルがこれからの2年ないし3年間は上昇するとの予測を提示していますが、今後の希釈の程度の多寡、最初にセシウムが到達する場所を表示するとなれば、お粗末な仕事しかしてくれません。ですから、沿岸域モニタリング・ネットワークを維持するために市民科学者たちが必要ですし、平均的な市民が支えるには、あまりにも資金がかかりすぎる、研究船とこのように包括的な沖合研究が必要なのです」と、ビューセラーは語った。
ビューセラーは、20141113日、ヴァンクーヴァーで開催される環境毒物・化学学会(SETAC)総会(SETAC北米第35回年次総会)において、研究結果を発表する。彼はまた1110日、北米東部標準時午後1時に、Redditサイトの「なんでもお聞きください」フォーラムで一般の人々の質問に答える。
ケン・ビューセラーは、ウッズホール海洋学研究所(WHOI)の上席科学者であり、專門分野は海洋における天然および人為放射性核種の研究。研究対象は、大気圏内核兵器実験によるフォールアウト、黒海におけるチェルノブイリ災害の影響評価、福島第一原子力発電所に由来する太平洋の放射性汚染物質の調査などである。経歴として、WHOIの海洋化学・地球化学部の部長、米国合同地球海洋流計画およびデータ管理事務局の幹部科学者を務め、2年間は全米科学財団、化学海洋学プログラムの提携プログラム役員として働いた。2009年、アメリカ地球物理ユニオンのフェローに選ばれ、タイムズ高等教育によって2000年から2010年までの10年間における海洋科学者の第一人者とされた。現在、WHOIの海洋・環境放射能センター(Center for Marine and Environmental Radioactivity)の所長である。詳細情報を得るには、彼の研究室「カフェ・トリウム」サイト(Café Thorium)を訪問のこと。
資金調達:「われらが海の放射能」プログラム(ourradioactiveocean.org/)における市民モニタリング活動のための資金は、400人近い個人、そしてアラスカ海洋観測システム、アラスカ海洋助成基金、バムフィールド海洋科学センター、クック湾キーパーズ、デイヴィッド・スズキ財団、ディアブルック慈善トラスト、ドミニカ不動産、フクシマ対応キャンペーン、ゴードン&ベティ・モーア財団、グアイ・ハアナス国立公園リザーヴ、パークス・カナダ、フンボルト州立大学海洋研究所、アメリカ原子力学会アイダホ支部、統合フクシマ海洋放射性核種モニタリング(InFORM)ネットワーク、国際メドコム、KUSPサンタクルーズ、ラッシュ化粧品、ノートン健全経済開発株式会社、ナクサーク・ネイション、オンセット・コンピュータ、太平洋ブルー財団、ピースルーツ同盟、ピクチャーファーム社、ポイント・ブルー保全科学、プリンス・ウィリアム健全科学センター、レザレクション湾保全同盟、サンルイス・オビスポ平和をめざす母たち、サンタバーバラ海峡キーパー、命にイエス!スウィムスLLC、スクリップス海洋学研究所、南西アラスカ登録&モニタリング・プログラム国立公園サービス、セントメアリー校、グアカモール基金、生物学・生態学構築研究所、ティラムク河口共同行動、ウクルエレト水族館、ウンプクア土壌&水保全区、カリフォルニア大学デイヴィス海洋汚染研究所、ハワイ大学、ウッズホール海洋学研究所など、支援団体(SUPPORTERS)が拠出している。
ウッズホール海洋学研究所は、マサチューセッツ州ケープコッドの私立・独立組織であり、海洋研究、工学、高等教育に従事している。アメリカ科学アカデミーの勧告にもとづいて1930年に設立され、海洋、およびその地球全体との相互作用を解明し、変化しつつある地球環境における海洋の役割に関する基本的な知識を伝えることを本来の任務としている。詳細情報を得るには、研究所サイト(www.whoi.edu)を訪問のこと。
初出:20141110
728日から84日までの海水温(色調で表示)と海流方向(白い矢印)の衛生測定図は、フクシマからの放射性核種が運ばれる場所を示すのに役立つ。規模の大きな海流が太平洋を横断して海水を西方向に運ぶ。夏季における北米西岸沿いの上昇流が低温の底層水を海表面に運び、海水を沖合に押し出す。丸印は海水試料の採取箇所を示す。白丸は、セシウム137が不検出だった箇所である。青丸は低レベルのセシウム134が検出された箇所。セシウム137は、海岸沿いではまだ検出されていないが、沖合では低レベルで検出されている。(Woods Hole Oceanographic Institution
【参考図】

ウッズホール海洋学研究所作成のポスターより…




 
今週、報告された放射能は、8月、アラスカ州ダッチ・ハーバーとカリフォルニア州ユリーカの間を航海した研究船ポイント・スールに乗り組んでいたボランティア・グループが採取し、分析のためにビューセラー研究室に送られた海水試料から検出されたものである。これらの結果は、20142月にホノルルで開催された学会において、ノヴァスコシア州ダートマスのカナダ水産海洋省に所属する科学者、ジョン・スミスが報告した先行データを追認するものであり、彼は先に実施されたカナダ沖合の研究航海で同様なレベルの調査結果を認めていた。(Courtesy of Curtis Colins
今年初め、ブリティシュ・コロンビア州ヴァンクーヴァーにて、海水試料を採取するラッシュ化粧品のボランティア2人を手伝うWHOI海洋化学者、ケン・ビューセラー(左)。Courtesy of Kevin Griffin
アラスカから南カリフォルニアまで、沿岸地域の人びとが、WHOI海洋化学者、ケン・ビューセラーの海洋放射能レベル・モニタリングを手伝ってくださった。上の図は、カリフォルニア州サンタクルーズのプレジャー・ポイントで海水試料を採取するサーファーたち。(Courtesy of Robin Brune
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