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CBS 60 MINUTES |
チェルノブイリ:終わりのない大惨事
Chernobyl: The catastrophe that never ended
Chernobyl: The catastrophe that never ended
爆発から30年近く、ボブ・サイモンがウクライナを訪問し、原子炉に殺傷力が残っているのを確認する。
2014年11月23日 ボブ・サイモン Bob Simon
2014年11月23日放送の『チェルノブイリ』をテキストにして掲載する。取材はボブ・サイモン。プロデュースはマイケル・ガヴションおよびデイヴィッド・レヴィン。
終わることのない悲劇というものはある。人に核災害をひとつ挙げてくださいとたずねると、たいがい日本で3年前に勃発したフクシマと答えるだろう。ウクライナのチェルノブイリ核メルトダウンは30年前のできごとだが、危機は今日でもまだわたしたちと共にある。それは、放射能が死滅することが実質的にありえないからだ。ソ連は1986年に爆発したあと、損壊した原子炉を覆う墓標、初歩的な石棺を建造した。だが、長期にわたる耐用は期待できず、じっさいにそうだった。技術者らは、今も広範囲におよぶ汚染を引き起こしうるだけの放射性物質が内部にたっぷり残っているという。5年前から、原子炉を恒久的に封じこめるための巨大規模プロジェクトが進行中である。だが、この事業は資金が7億5000万ドル(888億円)不足しており、完工期日が繰り返し先延ばしされている。30年後のいまでも、チェルノブイリの廃炉は殺傷力を保っている。
「ゾーン」と呼ばれる地帯に入域することは、境界をわたり、地球上指折りの汚染地に行くことである。20マイル圏内無人地帯は30年前、避難区域になった。今日、ゾーンの中心部に向かって車を走らせると、異界の地に現れたように思える巨大な構造物が見えてくる。それは、世界に類を見たこともないような工学事業である。40か国以上から資金を得て、1400人の作業員らが損傷炉をテーブル料理蓋のように覆うための巨大なアーチを建造している。それは――地球上最大の可動式構造物で――自由の女神像より高く、ヤンキー・スタジアムより幅広くなるはずだ。ニコラス・カイルはアーチ建築工事の監督である。
ボブ・サイモン:あなたにはこの巨大な事業が進行中だとわかっておられる。作業員のみなさんもそうです。30年前のある1日のせいで、何十億規模のドルが使われています。
ニコラス・カイル:はい、はい、そうです。あれは核産業最大の災害でした。
災害は大爆発とともに勃発し、チェルノブイリ4号炉の屋根を吹き飛ばし、大気中の放射能の塵芥を放出した。
ソ連は50万人を超える兵員を召集し、鎮火と核燃料断片の除去にあたらせた。何千人もが放射線被曝による深刻な疾患にかかった。30年後の今日、除染がまだ続いている。
だが、この最新ビデオが示すように、原子炉にはまだ毒物が詰まっている。ねじれた鋼材やコンクリート、核燃料の溶融物の堆積が固まって、「象の足」と呼ばれる密度の高い塊になっているのだ。
今でも非常に高レベルの放射線が原子炉から発散されているので、作業員たちは300メートル近く離れ、巨大なコンクリート壁で遮蔽されて、アーチを建設しなければならない。完成すると、アーチは石棺の周りの場所へと横滑りし、次いで封印されることになる。
ニコラス・カイル:一思いに押していくことになっていまして、平均速度は時速10メートルほどです。まあ、カタツムリ程度のスピードですね。
ボブ・サイモン:なるほど。でも、こいつのサイズを考えると、とても急ピッチだ。
ニコラス・カイル:はい、そのとおりです。
だが、建設工事そのものはもっと急いで進めなければならない。古ぼけた原発と石棺は崩壊しつつある。ちょうど2年前、吹雪のために建屋のひとつの屋根が崩壊し、作業員らは避難を余儀なくされ、さらなる汚染の恐れが高まった。
「恐ろしい光景でした。100、200メートル先、距離を置いた落日のように見えました」
放射能に通常の生死のルールは通用しない。実質的に永続するのだ。カイルがわたしたちの施設視察を引率したとき、自分がどれほど被曝したのかを知るための線量計を身につけさせられた。聞きたくもないのに、突然鳴る音。
ボブ・サイモン:ねえ、ビープ音が鳴りそうだ。
ニコラス・カイル:いや、鳴らない。大丈夫だ。
ボブ・サイモン:間違いないか?
ニコラス・カイル:えぇ、きっぱり大丈夫だ。
ニコラス・カイル:チェルノブイリでビープ音は嫌だ。あの音は好きになれない。
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