2014年11月1日土曜日

【海外報道】サンディエゴ連邦地裁の地元紙が伝える「オペレーション・トモダチ水兵たちの集団代表訴訟」

ORANGE COUNTY REGISTER
訴訟: フクシマ惨事による米海軍兵らの健康被害
Lawsuit: Fukushima disaster poisoned U.S. sailors
米空母ロナルド・レーガン乗組員らは、2011年の津波災害救援活動中、日本の電力会社が放射能汚染リスクの警告を怠ったために、過剰被曝、疾患を招いたと訴える。
専従コラムニスト、テリ・スフォルザ TERI SFORZA
初出:201446日 更新:201449
フクシマ近海で展開中のオペレーション・トモダチを支える支援物資を積み込む米航空母艦ロナルド・レーガン乗組の米海軍兵らと海兵隊員たち。79名の乗組員とその近親者のために提訴された集団代表訴訟は、福島第一原子力発電所の事業者が米海軍に対して放射能による危険の規模に関する情報を隠蔽したとして、東京電力株式会社に10億ドルの支払いを求めている。
SEAMAN NICHOLAS A. GROESCH, COURTESY OF THE U.S. NAVY
米艦ロナルド・レーガンは緊張をはらんだ朝鮮半島の沖合の洋上で、かねてより長く計画されてきた軍事演習の準備をしながら、作戦行動に就いていた。原子力推進「超大型空母」――海軍で最新鋭、技術的に最先端をゆく――同艦を維持するのに5,500人の乗員を要した。海軍は、同艦が「世界で最も効率的で用途が広い戦闘艦である」と豪語していた。
201312月、コロナド(カリフォルニア州)沖を航行する米航空母艦ロナルド・レーガン
MASS COMMUNICATION SPECIALIST 2ND CLASS DAVID HOOPER, COURTESY OF THE U.S. NAVY

2011311日午後246分、マグニチュード9.0の地震が東京から北東の地殻を打ち、高さ9メートルの海水の壁を放った。壁は日本の沿岸に突入し、建物を呑みこみ、避難路を分断し、何千もの人びとを押し流して命を奪った。
津波はまた福島第一原子力発電所に殺到し、電源を遮断して、非常用発電機の機能を奪った。
レーガンの任務は素早く変更になった。同艦は日本へと急行し、オペレーション・トモダチ――「友だち作戦」――の一環として、災難にあった住民に緊急援助を提供することになった。同艦は川内の沖合に配置され、救援任務で飛行する日本のヘリコプターのための浮かぶ給油ステーションや他の用途に使われた。
「米艦ロナルド・レーガンおよび第7空母攻撃軍が沖合2マイル海域に到着する前に、福島第一原発1号機が爆発した」と、水兵らのために提出された連邦裁判訴状は述べる。「次いで3号機が爆発し、水素ガスのプルームを放出し、それが共有排気管を移動して、4号機の収納建屋を破壊して、使用済燃料プールを外気に露出させた。2号機がそれにつづいて破壊された」。
発着甲板のうえにいた水兵らは、暖気の突風を感じ、次いで突然の吹雪に見舞われたといった。放射性の蒸気である。太平洋の冷気で氷結したのだ。それが艦体を包んだ。
彼らは、「川内の近郊における災害救援任務から米艦ロナルド・レーガンに帰艦したヘリコプター3機の搭乗員らを念のために放射線測定したところ、航空搭乗員17名から(無視できない)放射能レベルが検出され」、海軍が空母にフクシマ降下物からもっと離れた海域に位置を変えるように命じるまでの2日間、その場にとどまっていた。
その時点で、乗組員らは大量の放射線量に見舞われていたと訴状は主張する。
空母に乗り組んでいた海軍要員が撮影した写真が、箒(ほうき)やブラシと泡立てクレンザーを使って発着甲板を除染している乗組員らの――作業着、フードやスキー帽を着用し、多くは顔面を露出した――姿を伝えている。
20113月、想定される放射能を除染するために甲板を磨く米空母ロナルド・レーガン乗組水兵たち。同艦は地震と津波の被災者に救援を提供したが、福島第一原発も被災し、メルトダウン事故を起こした。
MASS COMMUNICATION SPECIALIST NICHOLAS A. GROESCH, COURTESY OF THE U.S. NAVY
2011323日、想定される放射能汚染をすべて除去するために発着甲板を磨き上げる米空母ロナルド・レーガン乗組の水兵たち。
KEVIN GRAY/U.S. NAVY, COURTESY OF KEVIN GRAY/U.S. NAVY
その後の3年間、癌を発症した乗組員は数十人にのぼり、少なくとも一人は先天性異常を抱えた子どもを出産し、全員が「いまや、避けられたはずであり、避けるべきであった放射能汚染と被害の生涯を絶えなければならなくなった」と訴状は記す。
フクシマの事業者、東京電力株式会社は、原発が全面的なメルトダウンを起こしていると当初から知りながら、口から出まかせの嘘をついたと訴状は強調する。
「(東京電力は)123号炉の核燃料の大半は無傷であると発表した。核燃料は無傷ではなかった」と訴状は述べる。「真相は、123号炉の核燃料が溶融して塊になり、破壊された原子炉の底から漏れ落ちていたということだった。そのうえ東京電力は、こうした事実を隠し、取り繕い、怠慢にも秘匿し、米国海軍に対して虚偽を事実として説明した。東京電力による怠慢行為の結果、提訴人らは害をこうむり、傷つき、命にかかわる疾病に苦しみ、苦しみ続けている」。
乗組員79名のためにサンディエゴの連邦地方裁判所に申し立てられた集団代表訴訟は東京電力に対して、損害賠償金および弁護士費用とともに、10億ドルの支払いを求めている。
「誠実さと公正な態度は、計り知れない価値を有する必需品と同じく、最も貴重な資産である。提訴人らと米国海軍は、『オペレーション・トモダチ』の期間中に直面していた実情を知る権利を有していた。…東京電力は提訴人らを弱体化し、その身体を毒で汚染した」
憲法上の制約
レーガンの水兵らが提訴を試みるのは、これで2度めである。これは極めて厄介な法的手続きであり、米国の連邦裁判所に依頼し、米軍の意思決定過程に首を突っ込んで、非常に奇妙でイライラする質問をしてもらわなければならない――
「レーガンが――米海軍で最新鋭の原子力航空母艦であるのに――大規模線量の放射能を浴びていることを知らないというのは、ほんとうにありうるのか?」
東京電力は先週の反論書で、「何千人もの人員を配下に抱え、世界最新鋭の装備を駆使する軍司令官が外国の電力会社の広報と公式発表だけを頼りにしていると考えるのは――(提訴人側が)主張しない(そして、主張できない)追加的な事実がない場合――まったく信じがたいことである」と述べた。
東京電力を訴える水兵らの最初の企ては、日本政府が欺瞞を共謀していたと主張しており、昨年遅く、ジャニス・S・サンマーティノ連邦判事に却下された。判事は、日本政府がアメリカ政府に対して欺瞞行為を犯したか否かを判断するのは当法廷の権限を超えている――だが、当法廷は水兵らによる再提訴の門戸を開けておく――と述べた。修正訴状は日本政府との共同謀議に関する主張を取り下げている。
だが、それでも不十分だと東京電力はいう。訴訟は恒久的に却下されるべきである。
海軍がオペレーション・トモダチ参加者の被曝放射線量を検査し、「報告によれば、艦隊配属人員の被曝線量は、健康への悪影響に結びつく線量レベルより少なくとも一桁は低い」と結論づけたと東京電力側の弁護士は陳述した。
東京電力は、さらにまた、水兵らの主張は「消防士ルール」によって全面的に否定されており、「これは、緊急事態類型に対応した当人が、それに伴う危険に関連して提訴することを一般的に禁じている」と述べた。
また、訴えたい主張があるなら、アメリカの裁判所ではなく、東京電力が本拠を置く日本の裁判所で実行するべきであると東京電力は論じた。
海軍は被曝線量が「低レベル」であるという
目下、サンディエゴに駐留するレーガンがいまだに高レベル放射能で汚染されており、沈没させるべきであるというエコロジー戦線の評論家もいる。レーガンはフクシマ人道援助任務が終了したあと、同艦のドック入りを許可する太平洋沿岸国がなく、太平洋を周回していた。
海軍は放射能被曝は極端なものでなかったと主張している。アメリカ国防総省脅威削減局はその証拠として、『オペレーション・トモダチにおける艦隊配属人員の放射線量評価』と標題される167ページの調査報告書を作成した。
「オペレーション・トモダチを支えた資産はすべて放射能を厳密に監視され、放射能汚染を抑制し、その安全を確保するためにフクシマから適正な距離を保たれた」と、海軍広報官、グレッグ・D・ラエルソン大尉の声明はいう。
「オペレーション・トモダチに参加した米国海軍艦船および航空機は、放射能汚染を削減し、排除し、抑制するように装備されていた」と大尉はつづけた。「船舶の乗組たちは放射能を含む区域を特定するために感度のよい機器を使い、放射能の拡散を抑制するための措置を実施し、放射能を含む船舶の部位を洗浄し、浄化した。オペレーション・トモダチを支えた米国軍要員で、長期にわたる健康作用の発現につながるレベルの放射線被曝をこうむったものはいない」。
「低レベルの放射能汚染物質が確かに換気システムに入り込み、おびただしい数の接近不能区域の放射能調査と除染の実施が困難になった。しかしながら、船舶の乗組たちは拡散抑制措置を実施し、いまだに残留している最低レベルの放射能がなんらかの健康悪化の懸念を招いている徴候はない。換気システムのメンテナンス作業および空き時間を活用して、残留汚染の調査、抑制、除去をおこなうことによって、放射能制御は当を得たものになっている」と、ラエルソン大尉はいった。
水兵らは、もちろんぶつくさ言うだろう。米国軍は、船舶と乗組員たちが観察していたビキニ環礁における核兵器の爆発から、2008年にサンフランシスコの宝島で検査官がラジウム片を発見し、近接区域にいる人間の被曝量が1時間あたりで核関連事業所作業員の年間最大許容被曝量の5倍にも余裕で達する放射線量を認めたと報告した事例における、おざなりな除染措置まで、米国軍が人びとに強いたリスクに関して常に積極的であったわけではない。
しかしながら、乗組員らは事件に関して米国政府を訴えることができない。軍隊の構成員らは危険な状況で上陸することを期待されるのであり、訴訟は一般的に禁じられている。本紙では、この新訴訟における判事の采配および東京電力の棄却を求める動きについて逐次にお伝えする。なお、レーガンは今年、新たな母港に配属される予定である。新母港は日本である。
Contact the writer: tsforza@ocregister.com or Twitter: @ocwatchdog
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