2014年11月5日水曜日

アーニー・ガンダーセン「日本は原発を再稼働しても大丈夫なのか~海岸沿いの冷却ポンプをどうするのか?」




アーニー・ガンダーセンの当記事の初出は、The Mark News (read the original here)であり、すでに100を超えるニュース・サイトに転載されている。
日本は原発を再稼働しても大丈夫なのか?
Should Japan Restart Its Nuclear Reactors?
アーニー・ガンダーセン 2014821
The Mark News: 防護服とマスクを着用し、Jヴィレッジのビルの前で送迎車両を待つ作業員たち。このサッカー練習施設はいま、日本の核惨事と戦うための作業基地になっている。20111111日、福島県で。(AP Photo/David Guttenfelder, Pool

原子力の技術的な破綻を克服し、放射能による国の破壊を食い止めたのは、運と、日本の太平洋沿岸に並ぶ14基の原子炉立地点における真の勇気だけだった。
日本が、福島第一原発における3基の使用済燃料プールの炎上と福島第二原発における原子炉4基のメルトダウンのどれほどの瀬戸際にあったのかは、2011311日の物語の語られなかった部分のひとつである。
太平洋岸沖合で発生したマグニチュード9.0の地震衝撃波が北日本全域に響きわたったとき、日本の原発は計画通りに自動停止し、連鎖反応の進展を食い止めた。
自動停止がそれぞれの原子炉の内部で続行する熱の発生を止めるわけではないので、そこに原子力の致命的な欠陥が潜んでいる。
ウラニウム原子が割れる(核分裂過程)とき、破片が生成するのと同時に、膨大なエネルギーを放出する。連鎖反応が止まっても、高レベル放射性の破片が崩壊熱を放出し、それが何年もつづく。自動停止は、新たな核分裂が起こらないことを意味するだけである。
地震と原発停止のちょうど45分後、津波が日本西岸の福島第一原発を襲い、原子炉6基のすべてに損害を与え、海岸に並ぶ緊急冷却ポンプを破壊した。
津波は福島第一原発の緊急ディーゼル発電機を呑みこんだ。ディーゼル電源がなければ、原発が冷却不能になるので、これが三重メルトダウンの原因とされている。
一部の人たちはディーゼル発電機を津波の到達しない高みに移動すべきだと提案したが、これは間違った問題の間違った答えである。
津波が襲ったとき、海岸に並ぶ冷却設備は捻じ曲げられた金属のスクラップ置き場さながらになった。仮にディーゼル発電機が冠水しなかったとしても、稼働可能な海岸沿いポンプがなければ、炉心の冷却が不可能であり、失敗する定めにあった。現実として、海岸沿いポンプの完全な破壊が福島第一原発の三重メルトダウンの原因になった。
訳者による作図(Google earth 2011518日空撮)
津波はまた他にも、福島第二、女川、東海原発にある原子炉8基の冷却ポンプを破壊した。
原子炉を合計で14基抱える4か所の原発に配備された37機の緊急ディーゼンル発電機のうち、24機が津波のあいだに機能を失った。使えなくなった24機のうち、津波にやられたものは9機(福島第一の8機、福島第二の1機)だけだった。他の15機は水没しなかったが、津波が海岸沿いの冷却ポンプを破壊したので、役立たずになった。
2011311日の日没時、日本の状況は切迫していた。福島第一では、原子炉3基がメルトダウンし、3基の使用済み核燃料プールに冷却不能による発火の恐れがあった。福島第二の原子炉4基の状態もやはり悪化しつつあった。
日本とその国民をもっとひどい悲劇的な破局から救ったのは、幸運と思い切った勇気だった。
第一に、風が内陸方向ではなく、海方向に吹いていた。フクシマの空中放射性排出物の80パーセントが海方向に流れ、20パーセントだけが内陸に吹き流されたと専門家らは認めている。風向きが逆であれば、放射能被曝量は5倍に悪化し、東京から避難しなければならなかっただろう。
幸運なことに、津波を伴う地震は通常勤務の日中に起こり、福島第一でほぼ1000人、福島第二では、さらに数千人が勤務していた。施設内で窮地に陥った作業員らは拡大する破局的事態を和らげるために果敢に戦った。彼らの尽力がなければ、10基もの原子炉がメルトダウンし、使用済み燃料の同時多発発火にいたっていただろう。
地震と津波が夜間に発生していれば、フクシマ第一と第二にたかだか200人の作業員が勤務しているだけだっただろう。道路や橋が破壊され、必要人員が職場に戻れなかっただろう。
福島第一惨事から3年以上たった今、海岸沿いの冷却ポンプは――日本を含め――世界中に残っており、水没やテロ攻撃に無防備なままである。
日本は地震・津波多発地帯である。日本の原発を再稼働するのは、国民と国土を危険にさらすだけの価値があることだろうか?
ただ一つの自然現象のせいで原子炉14基で同時多発して技術的機能不全が起こったことは、原子力を構想し、設計した核工学者たちが想定外を想定できなかったことを示している。
核産業は残念なことに、原子力をより安全にできると広言しつづけている。フクシマ、そしてその前にチェルノブイリは、核テクノロジーがいつでも一瞬のうちに国家構造を破壊することでできることをわたしたちに見せてくれたのだ。


フェアーウィンズのアーニー・ガンダーセン(Arnie Gundersen)は、核関連企業の元副社長。栄えある原子力委員会特別奨学生資格を得て、核工学修士号を取得。

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