2015年9月16日水曜日

山下俊一ら、2000年論文「長崎とゴメリにおける児童甲状腺腫の比較」概要



 日本内分泌学会英文誌・Endocrine Journal 2001, 48 (5), 591-595

論文

子どもたちの尿中ヨウ素レベルと甲状腺疾患――
長崎とチェルノブイリの比較

KATSU ISHIGAKI*,***, HIROYUKI NAMBA*, NOBORU TAKAMURA(高村昇)**, HIROKAZU SAIWAI**, VLADIMIR PARSHIN**, TAKASHI KANEMATSU***, TOSHINORI OHASHI#,  AND SHUNICHI YAMASHITA(山下俊一)*,***
[訳注]311フクシマ核惨事後、福島県アドバイザー、福島医大副学長

*長崎大学大学院・医歯薬学総合研究科・原爆後障害医療研究所、〒852-8523長崎市
**同原爆後障害医療研究所・国際放射線保健部門・第2外科、〒852-8523長崎市
#日立化成株式会社・薬剤開発研究所、〒317-8555茨城県日立市

概要

われわれは、ヨウ素の豊富な地域(日本)と欠乏している地域(ベラルーシ)における甲状腺疾患を比較できるデータを収集する目的で、日本国長崎市、およびチェルノブイリ事故による甚大な放射能汚染をこうむったベラルーシ国ゴメリにおける小児甲状腺疾患症例と尿中ヨウ素レベルを評価した。

長崎において、マイクロプレート法による過硫酸アンモニウム摂取量にもとづく尿中ヨウ素レベルの中間値は、リッターあたり362.9ピコグラムだった。
[訳注]ピコ=11,000,000,0001兆)

日本国内における地理的な差異を評価する目的で、浜松市と北海道南茅部町で別の試料を採取したところ、中間値はそれぞれ208.4 pg/L1015.5 pg/Lであった。

さらにまた、長崎市において甲状腺の超音波検査を実施したところ、甲状腺腫が認められたのは4症例(1.6)だけであり、嚢胞様変性および単一嚢胞が認められたのは2症例(0.8)だった。超音波検査によって甲状腺結節が検出された証拠はなかった。

ゴメリにおける尿中ヨウ素レベルの中間値は対照的に、41.3 pg/Lだった。

ゴメリにおける甲状腺腫症例(13.6)および音波診断による異状検出(1.74)は長崎市におけるものよりずっと高率であり、チェルノブイリ周辺における小児甲状腺異常の増加には、ヨウ素不足が決定的に寄与していることが示唆されている。

チェルノブイリ事故の直後に放出された放射性ヨウ素が、ヨウ素欠乏地域に居住する子どもたちに主として影響した可能性がある。

われわれの研究結果は、平常時における学校児童に対する甲状腺一斉検査による管理が、今後に予想される研究の観点から、放射性ヨウ素の悪影響を監視するうえで有益であることを示唆している。

キーワード:尿中ヨウ素、単純マイクロプレート法、ヨウ素予防法、チェルノブイリ事故

 (Endocrine Journal 48: 591-595, 2001)
受付:2001423日 受理:2001726

連絡先:山下俊一・医学博士、教授、部門長
長崎大学医学部・原爆後障害医療研究所・国際放射線保健部門
852-8523 長崎県長崎市坂本1-12-4



0 件のコメント:

コメントを投稿