2015年9月27日日曜日

【論文紹介】魚の内蔵や貝類を食すれば、海洋ゴミの断片を食することになる





命の輪 CIRCLE OF LIFE

貝類を食すれば、海ゴミ断片を食することになると警告する研究


ダニエール・ウィナー=ブロナー Danielle Wiener-Bronner
2015925

わたしたち人間が排出した汚染物質を魚が食べ、その魚をわたしたちが食べて、ゴミの不幸な因果応報サイクルが成立する。

カリフォルニア大学(UC)デイヴィス校の研究者らは、このほどサイエンティフィック・リポーツ誌に掲載された研究で、インドネシアで76点、カリフォルニアで64点の食用に漁獲された魚を検査した。その結果、両グループともに、約4分の1の試料の内蔵に人工のゴミが見つかった。

人為的――または人工――海洋汚染物質の種類は、ビニール袋から、ビン類、缶類、一般ゴミまで広範におよんでいるが、この研究の場合、研究者らが見つけたものは、インドネシアの個体群からプラスチック、アメリカのものからプラスチックと織物繊維だった。

研究者らは、この違いは両国の廃棄物管理方法の違いによると推測している。UCデイヴィス校が公表したプレスリリースの説明によれば――

インドネシアでは、埋め立て処分、廃棄物収集、リサイクルがほとんど実施されておらず、その結果、大量のプラスチックが海岸に捨てられ、海洋に流出する。さらに浄化処理飲用水が不足しており、住民がボトル詰め飲料水の消費を余儀なくされているので、問題が悪化している。

筆頭著者、チェルシー・ロックマンは、「各々の場所で問題を軽減するためには、地元の排出源と廃棄物管理戦略の違いについて考えることが有益である」と言い加えた

魚類および貝類の体内のプラスチック片の種別

Scientific Reports

これが人にとってなにを意味するのか、完全にわかっていないが、繊維やプラスチックを摂食するのは、おそらくよくないだろう。によれば――

人為的排出物断片は、毒性の物理的および化学的両面のメカニズムを通じて生体反応を引き起こしうる。人為的排出物の細片が胃腸管(GI)組織の細胞壊死、炎症、裂創の原因になる物理的損傷を引き起こすことが判明している。そういうわけで、断片が海産食品(たとえば、丸干しイワシ、ムラサキイガイ、カキ)を通して摂取されると、人為的排出物断片が人に身体的危害をおよぼす可能性がある。

丸ごと摂食することが多い貝類は、特に心配である。科学者たちは、米国で採取した貝類試料の3分の1が海洋ゴミを摂取していたことを認めた。

しかし、ロックマンは、わたしたち自身が繊維の細片を接触している可能性もあると州都公共ラジオ(サクラメント市)のニュース番組で語った。彼女は、「わたしたちが動物の体内で見つけている断片を、ある場合には、わたしたち自身が摂食している可能性が大いにあるとわたしは考えています」といった。もっとも、彼女は、「これが危険なことかどうか、本当のところはまったくわかっていないのです」と付け加えた。

いずれにしても、おそらくわたしたちはゴミの海洋投棄をやめるべきだろう。



州都サクラメント公共ラジオ



プラスチック:これが食卓に


アミー・クィントン Amy Quinton
2015924日 カリフォルニア州サクラメント


このほど公開された研究が、カリフォルニアとインドネシアの市場で販売されている魚の4匹のうち1匹近くがプラスチックまたは繊維の断片を体内に含んでいることを明らかにしました。この研究は人の健康に懸念を抱かせています。

UCデイヴィス校の研究者たちは、インドネシア産とカリフォルニア産の魚類と貝類を試料に用いました。研究者らは、カリフォルニアとインドネシアのリサイクルと廃水処理の違いから、結果が大幅に異なることになるだろうと考えました。

ところが、排出物断片の量は同じでした。しかし、インドネシアでは、断片の大半はプラスチックですが、カリフォルニアでは、それが繊維でした。その繊維は、洗濯機の廃水に由来する微小プラスチックまたは合成繊維である可能性があります。

カリフォルニア大学デイヴィス校・獣医学大学院のチェルシー・ロックマンさんが、この研究の筆頭著者を務めています。彼女は、この繊維を摂取すると、害になるかどうか、はっきり断定できないと話しています――

「わたしたちがそれを摂食して、それが体内を素通りする可能性が大きいですが、素通りしない可能性もあります。ある場合には、わたしたちが動物の体内で見つけている断片を、わたしたち自身が摂食している可能性が大いにあるとわたしは考えていますが、それが危険なことかどうか、本当のところはまったくわかっていないのです」

研究者らは、人が丸ごと食べることのできる魚介類、イワシ、カタクチイワシ、ムラサキイガイ、カキなどを試料に用いました。ロックマンさんは、次のように話しています――

「それをやめようと思えば、やめられるのも事実ですので、わたしたちは心配するべきだとわたしは考えています。

「洗濯機の排水側にフィルターを設置するのも容易いですし、洗濯する度毎にそのフィルターと乾燥機を掃除しなければならないでしょう」


この研究は、サイエンティフィック・リポーツに掲載されました。

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ARTICLE | OPEN

海産食品の人為排出物細片:
海産物市場の魚類および貝類の体内のプラスチック断片および織物繊維

オンライン公開日:2015924

概要

数多くの野生動物種の体内に人為排出物細片の存在が普遍的に認められること、およびそれにともなう化学物質の毒性が、海産食品中の人為排出物細片の存在に対する懸念の声が上げられはじめている。

われわれは、食用に販売されている魚類および貝類の体内における人為排出物細片の存在を評価した。われわれは、インドネシアのマカッサルならびに米国カリフォルニア州の市場で試料を調達した。すべての魚類と貝類の種別は、可能な限り特定された。

水酸化カリウム10%溶液を用いて、魚類の消化管および貝類の全身から人為排出物細片を抽出し、解剖顕微鏡で観察して、それを定量化した。

インドネシアの場合、魚類個体の28%、魚類全種別の55%に人為排出物細片が認められた。米国の場合も同様に、魚類個体の25%、魚類全種別の67%に人為排出物細片が認められた。試料に用いた貝類個体の場合もまた、33%に人為排出物細片が認められた。

インドネシアの魚類から回収された人為排出物細片のすべては、プラスチックである一方、米国の魚類から回収された人為排出物細片は、主として繊維類であった。排出物種別の差異は、おそらく排出源および廃棄物管理戦略における両国間の違いを反映しているのだろう。

われわれは、人の食用にそのまま販売され、人の健康におよぼす影響が懸念されている魚類の体内プラスチック細片に関する最初の知見の一部を報告する。

【クレジット】

FUSION, “Study finds eating shellfish could mean eating ocean debris” by Danielle Wiener-Bronner
Capital public radio, “Plastic: It's What's For Dinner” by Amy Quinton
http://www.capradio.org/57813
本稿は、公益・教育目的の日本語訳

SCIENTIFIC REPORT, “Anthropogenic debris in seafood: Plastic debris and fibers from textiles in fish and bivalves sold for human consumption,” Rochman et al., 2015
本稿は、クリエイティブ・コモンズ継承4.0国際ライセンスCreative Commons Attribution 4.0 International License

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