2015年9月4日金曜日

エコノミスト誌【エンブレムが使えない】難局の東京オリピックにまた逆風

The Economist





エンブレムが使えない

窮地の東京オリンピックにまた逆風

難局に一々、つまずく…

201593日 Asia


東京2020年オリンピック大会を取り巻くムードをさらに湿らせると思えるものといえば、400メートル・トラック直下の地震だけしか残っていない。他の大きな難局はすでにすべて起こっている。恥ずかしい事態の最新版は91日に到来した。日本の若手グラフィック・アーティスト、佐野研二郎氏が作成した図案を巡って、盗用疑惑騒ぎが渦巻き、日本はオリンピック大会の新しいロゴを撤回した。日本政府は2か月前には、イラク出身で英国在住の建設家、ザハ・ハディド氏が制作し、オリンピック大会の東京誘致を勝ち取るのに役立ったものの、コストが21億ドル[2500億円]に跳ねあがり、当初見積もりの倍近くになった、華やかな印象の競技場の設計案を捨て去っていた。

別のロゴを案出するのに時間はかからないはずだが、東京競技場の建設は(まだ設計が決まっておらず)、スケジュールより1年遅れている。建設は2016年まで始まらず、もうひとつのスポーツ・イベント、ラグビーの2019年ワールドカップに間に合わない。日本政府のオリンピック担当閣僚、遠藤利明大臣は、オリンピック大会開催のための建設そのものの締め切りが間近に迫っており、国際オリンピック委員会(IOC)が定めた公的な期限、20201月には間に合わないと認めた。

オリンピックのロゴが7月に公表されてから間もなく、IOCによる佐野氏制作のロゴの使用差し止めを求めて提訴したのが、ベルギーのデザイナー、オリヴィエ・ドビ氏である。確かなところでは、日本のインターネット・ユーザーが佐野氏の作品とドビ氏によるベルギーのリエージュ劇場のロゴ・デザインの驚くほどの類似に気づいた。それでも、佐野氏は盗用はないという姿勢を維持し、委員会による今週の決定の公的な理由説明は、国民の支持を取り戻すためというものだった。日本のオリンピック組織委員会は当初、佐野氏の会社による初期図案を公開することによって、ロゴを守ろうとしたが、その初期案もまた他人のデザイン(伝説的なドイツの書体デザイナー、故ヤン・チヒョルトの展示会ポスター)に似ていた。佐野氏はまた、日本の名古屋市の動物園のために制作したデザインに、コスタリカの国立博物館のエンブレムの特定要素を使っていたという疑惑にも直面していた。

日本の建設家らが、二輪車のヘルメットだとか、「列島の水没を待つ」巨大な亀など、さまざまに比較したオリンピック競技場の型にはまらないデザインを借用したとしても、少なくともハディド氏をだれも責められなかった。ハディド氏はその後、日本のツキに見放されたオリンピック組織委員会に反論している。彼女は、建設コストがこれほどの高額にふくれあがったのは、不注意な組織委員会が、仕事の発注前にではなく、発注後にコスト見積の提出を契約業者に要請したからであると書いた。東京において、またまさしく日本全域で建設費が急騰しており、コスト削減のためには、入札が不可欠だった。

東京が2年前にオリンピック大会の誘致合戦に勝ち抜くために、華やかなスポーツの祭典の「実現の保証」を約束し、イスタンブールとマドリッドを制して、東京の勝利を達成し、絶賛を浴びた安倍晋三首相にとって、これはまったく面白くないニュースである。だが、少なくとも一人の政治家、東京都の舛添要一知事は例によって歯に衣着せず、オリンピックの前試合を立派に戦っている。舛添氏は盗作疑惑について、ロゴが撤回されるという知らせが届く直前に、佐野氏に裏切られた感じがすると言い切った。知事はしばらくのあいだ、政府に楯突きさえし、大幅に予算超過したハディド氏の設計案に東京都民の税金を使うのを拒否した。政府による当時の再確認は、情勢が破局に向かっていたときでさえ、勝っていると言い張っていた大日本帝国の陸軍みたいだと彼はいった。舛添氏は主導権を握る人物になれるのだろうか?

本稿は、公益・教育目的の日本語訳。

【関連記事】

201594
BBC【ニュース】東京2020年オリンピックのロゴ、盗作疑惑で撤回


競技場の設計原案は、ふくれあがるコストが騒ぎになって廃棄された。AFP

【付録】

0 件のコメント:

コメントを投稿