2015年9月21日月曜日

英紙ガーディアン「安保法案可決、日本軍の海外派兵復活が可能に」


安全保障法案可決によって日本軍兵士らの海外戦闘がまたもや可能に

大規模な抗議行動に迎えられた法制変更は、第二次世界大戦終結以来、最大の外交・軍事政策転換を決定づける

1945年以来はじめて軍部隊の海外における戦闘を許すことになる政策転換の道を開く安全保障法制を国会が採択したあと、拍手する参議院の自民党議員たち。Photograph: Toru Hanai/Reuters

東京発、ジャスティン・マッカリー Justin McCurry
2015918

第二次世界大戦後はじめて日本の軍部隊が海外で戦闘することを可能にし、論争の的になっていた安全保障法制は、幅広く拡散した有権者の反対と東京中心部における抗議行動にもかかわらずに可決された。

議会の場で揉みあい、引き延ばし戦術、熾烈な論戦で彩られた数日間にわたる高度に政治的なドラマのあと、参議院議員たちは9月29日未明、法案を採択した。

この新法は、同国の軍隊による集団的自衛活動の実施、あるいは日本に直接的な脅威が迫っていない場合でさえ、同盟軍を支援するために駆けつけることに対する憲法に基づく制約を実効的に緩和する。

19458月の敗戦以来、国の防衛態勢の最大の転換を図る、この動きは、大衆的なデモと法案採決引き延ばしをめざす反対派の国会議員らによる死にものぐるいの試みを駆りたてた。

民主党をはじめとする反対派5野党は、票決を遅らせるねらいから、安倍晋三首相、その他の自民党幹部に対する勝ち目のない一連の問責決議案を仕掛けた。

議事堂の外で大規模なデモが行われているなか、自民党とその与党はひたすら機が熟するのを待ち、参議院議席の数に物を言わせて法案を可決させた。さらに有力な衆議院はすでに6月、反対派議員が退席するなか、法案を可決していた。

日本軍に国際的な幅広い役割を与える安部首相の押しつけは、彼の在任3年間で最大の分断を招く政策であることがあらわになった。

平和志向の憲法第9条を常に見下してきた保守主義者である安部首相は、自己主張を強める中国、核武装した北朝鮮、国際テロリズムなど、新たで不明確な安全保障環境において、日本は対応する準備を充実しておかなくてはならないと信じている。

反対派は、日本が消耗するばかりの国際紛争に主たる同盟国の命令によって巻きこまれるかもしれないと警告している。

安部首相は在任初期に、憲法改訂に必要な両院議員の3分の2、国民投票の過半数を勝ち取るのに苦戦すると判明したおり、その計画を放棄した。安倍はそれに代えて、憲法の解釈変更によって集団的自衛を可能にする新規法制を導入する選択をした。

批判勢力は、法案が違憲であると幅広い国民が反対し、世評の高い学者たちが警告しているにもかかわらず、安部首相とその同調者らが議会多数派の立場を濫用して憲法解釈変更を強行しようとしていると非難した。

慶応大学の添谷芳秀教授は、「彼らは民主主義の制度と手続きを利用しているが、その利用方法は民主主義から恐ろしく外れている」と語った。

米国は、南シナ海における中国の軍事力増強の抑制を図ろうとしており、同盟国に対して、これまで以上に積極的な役割を安全保障協力関係において担うように求めているおりから、日本の軍事態勢の積極化を歓迎するだろう。

しかし、中国は参議院における票決に数時間先立って、同国が「挑発的」な日本に対応できると警告した。

環球時報の論は、「中国には日本の選択に影響を与える力はない。わが国が唯一できるのは、日本の挑発に抵抗するために、さらに強力な軍事力を整備することである」と書いた。

中国の外交部は、中国政府が法案反対派に共感を覚えていると表明した。外交部の洪磊(こう・らい)報道官は918日の記者会見で、「わが国は、日本側が国の内外両方からの正しい訴えに耳を傾け、過去の教訓に学び、平和的発展の道を大切にするように求める」と語った。

票決に先立って、参議院本会議に送られる前に法案が審議される特別法制委員会の会議場で大混乱した光景が繰り広げられた。

委員長が瞬時の告知のみで票決を宣言すると見るや、反対派議員らが委員長席に突進し、非難を浴びせかけた。テレビ映像は、反対派の政治家たちが評決の完了を阻止しようとしたあげく、議員たちが押し合いへし合いしている光景を見せている。

反対派の山本太郎議員は18日の安部首相に対する問責決議案評決のさい、議場の自席から演台まで「牛歩」を演じて、議事進行を妨げようとした。山本氏は黒の礼装を着用におよび、まるで葬式に出席しているかのごとく、数珠を手に仏教式の祈りを捧げた。

安部首相は、19日の土曜日に5連休の初日を迎える前に、参議院で法案を強行採決すると決心していた。

議会審議が週末まで長引けば、街頭に繰りだす人びとの抗議行動がさらに大規模になり、2012年末に首相に就任して以来、支持率が最低に落ちている安部首相に対する国民の反感が浮き彫りになっていたことだろう。

今週の朝日新聞による世論調査によれば、有権者の54%が法案に反対しており、68%が927日に終わる今国会中に法制を通す必要がないと答えている。

その世論調査は、安倍内閣の支持率が先月より2ポイント下落して36%になったことを明らかにしている。安全保障専門家たちは、この変更によって、日本が国際舞台における自国の役割を規定しようとするさい、この国の冒険的な時代が到来するという。

「この法案は、日本が専守防衛政策を理由として紛争に関与しない時代が終わったことを世界に告げる心理的なメッセージになる」と、東京の拓殖大学の武貞秀士教授は述べた。

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日本の政治中枢部の空を切り裂く声が、この国の反戦運動の古強者のものでないのは明らかだった。「安倍やめろ!」と甲高くコールするごとに、ピッタリ合わせて繰り返す――最初は普通のペースだが、やがてヒップホップから借用したリズムに乗って、純粋そのものの怒りにかられて。


【付録】

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