2015年9月2日水曜日

グリーンピース【プレスリリース】放射能リスクを矮小化し、科学をないがしろにするIAEAフクシマ報告







放射能リスクを矮小化し、科学をないがしろにする
IAEAフクシマ報告

プレスリリース 201591

201591日付け東京発】831日(月)に公表された国際原子力機関(IAEA)フクシマ報告は、フクシマ核惨事が環境および健康にいまもなお、もたらしている影響を矮小化している。グリーンピース・ジャパンによれば、同報告は進行中の核惨事を正常化するという安倍政権の政治的意図に迎合している。

IAEAは、フクシマ惨事の結果として、識別できる健康への影響は予想されないと結論づけていますが、放射線量と長期的影響の両方に関して、重要な不確実性が残ると認めています。災害勃発直後の日々に住民たちがどれほどの放射能に被曝したのか、だれにもわかりません。線量がわからずに、影響はないと結論することはできません。これに反したことを言えば、科学ではなく、政治的な発言になります」と、グリーンピース・ジャパンの世界エネルギー・キャンペーン担当幹部、ケンドラ・ウルリックは述べた。

「国際放射線防護委員会(ICRP)でさえも、放射能被曝に安全なレベルは存在しないと結論づけています。引き上げられた放射能レベルを核事故被害者たちに意図的に押し付けるのは、正当化できませんし、危機勃発後5年以上たってから、癌症例が増加したチェルノブイリの前例をわたしたちは見ていますので、なおさらのことです。

IAEA報告は、核事故のあと、ものごとが正常に回復すると思わせようとする安倍政権と世界核産業の政治的意図を積極的に支えています。しかし、被災者たちが戻るように促されても、暮らし向きにしろ、被曝線量率にしろ、正常なものはなにもありません。明らかなのは、原子力規制委員会が川内原発の核反応炉の再稼働を許可するために未解決の安全問題を無視していることからもわかるように、日本政府がフクシマ核事故の教訓をまったく学んでいないことです」と、ウルリックはIAEA報告の3ページに関連して語った。

日本政府は、次々に汚染レベルがより高くなる地域で、避難指示を組織的に解除しており、フクシマ被災者が被曝を余儀なくされている放射線許容限度なるものに対する一般人の受忍限度を高めようとしている。

たとえば、グリーンピース・ジャパンが今年7月に実施した調査によれば、福島県飯舘村の森林と土地における放射能汚染が、住民が安全に帰宅するのが不可能であるほどに、広範に拡がり、高レベルであることが判明している。除染作業はわずかな地域に限定されており、膨大に広がる汚染された森林と河川域に対応する意図すらない。元住民の多くが環境汚染のために以前の生業に就くのが叶わないことを考えると、IAEA報告がほのめかしているように、被災者の生活にとって所得の不足が許容できる「制約」であるというのは、笑止千万である。

グリーンピース・ジャパンは5月にIAEA報告要約版に対する分析論文を公表しており、これはいまだにIAEA報告完全版に対する当方の予備的査読として適用できる。グリーンピースは目下、フクシマ報告と併せて公表された複数の技術報告および付属文書を検証中である。

【メディア連絡先】

Kendra Ulrich, Senior Global Energy Campaigner, Greenpeace Japan, kendra.ulrich@greenpeace.org+81 80 5088 3351

Shaun Burnie, Nuclear Specialist, Greenpeace Germany, sburnie@greenpeace.org+44 7716 501238

Elena K. Johansson, Global Communications Associate, Greenpeace Japan, elena.johansson@greenpeace.org+81 90 6478 5408

Greenpeace International Press Desk, pressdesk.int@greenpeace.org, phone: +31 (0)20 718 2470(available 24 hours)

【脚注】

(1) “The Chernobyl Catastrophe: Consequences on Human Health” Greenpeace International. [グリーンピース・インターナショナル『チェルノブイリ惨事~人間の健康に対する影響』]2006.

(2) 放射線被曝によるリスクを計算するための国際的に認められたモデルである線形閾値なし(LNT)モデルは、放射線被曝に安全なレベルが存在しないと定めている。それに加えて、国際放射線防護委員会(ICRP)は2005年報告において、「…特定の体組織における放射線関連の癌の場合、低線量閾値の存在は考えられないようである一方、普遍的な閾値の存在を裏付ける証拠はない。LNT仮説は依然として、高線量の場合に推定されるDDREF(線量・線量率効果係数)の不明確さと併せて、低線量および低線量率の場合における放射線防護の堅実な基礎である」。参照:Low-dose Extrapolation of Radiation-related Cancer Risk.”[『放射線関連の癌のリスクに関する低線量外挿法』] ICRP Publication 99. Ann. ICRP 35 (4), 2005. Publication 99.

(3) “The IAEA Fukushima Daiichi Accident Summary Report: A preliminary analysis.” Greenpeace Japan[グリーンピース・ジャパン『IAEA福島第一原子力発電所事故報告要約版:予備的分析』]2015. [下記の【関連記事】「グリーンピースが読み解くIAEAフクシマ報告」参照] 

Categories nuclear


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グリーンピースが読み解くIAEAフクシマ報告


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