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IAEA、フクシマ最終報告を公表
2015年9月3日
ティルディ・ベイアー Tildy Bayar
IAEAの天野之弥事務局長は報告の巻頭言で、この報告は「人的、組織的、技術的要因を考察したうえで、なにが起こったのか、なぜ起こったのか、理解する素材を提示しており、世界各国の政府、規制機関、核発電事業者が行動の指針にできる必要な教訓を提示しております」と述べている。
IAEAは報告で、施設の脆弱性は単なる技術にとどまらないと指摘する。報告は、「人、組織、技術のあいだの複雑な相互作用を考慮に入れた統合的な手法が要請されている」ことを強調している。
この線にそって、反応炉が自然災害時に備えて設計され、安全性が評価された実状を考察するとともに、報告はまた、事故当時の安全管理手段、日本の核規制要項の実効性、人的および組織的要因、全般的な安全文化を考察している。
報告は、判明したことのひとつとして、外的な危険に対する福島第一原発の脆弱性が「系統的・統合的な形で再評価されることが、稼働期間を通してなく」、核発電事業者、東京電力株式会社が「津波に起因する複数電源喪失および冷却停止に完全な備えをしていなかった」と指摘している。
施設の運転員らは、「したがって、適切な訓練を受けたこともなく、関連するはずの過酷事故演習に参加したこともなかった」し、事故のあと、「運転員らが使えた設備は、悪化した施設の状況では、使い物にならなかった」。
IAEAは、「核緊急事態と自然災害の同時発生に対処するために連携して行動できるような備え」がなかったと指摘し、「どの組織に責任があるのか、どの当局が遅滞なく安全問題に対処するための拘束力ある指示を発するのか、完全に明確になっていなかった」と論じる。
報告の技術書によれば、建設に向けた事前調査は、建設用地が「地震活動の少ない地域」にあると結論づけていた。それでも、地震防護対策は実施されていた。報告は、3月11日の地震は「(苛酷さの)最高レベルの基準に合致する」ものであり、実施されていた安全対策は「制御室の状況の点検、構造、システム、構成要素の点検および施設全域巡視の実施の責任」、その他を求めるものだったと記す。
報告によれば、追加的な安全対策も実施されていた。自動減圧機能が「最近」2~6号炉に追加されていた(1号炉はすでに2基の高圧炉新冷却システムを備えていたので、追加されなかった)。冷却水を圧力容器に注入するための接続線と電動弁が設置されていた。過剰加圧による反応炉格納容器の破損と放射性物質の放出を防ぐために、新たなベント経路が設置されていた。隣り合う反応炉(1号炉と2号炉、3号炉と4号炉、5号炉と6号炉)のあいだに電源相互連結線が設置され、全電源喪失のさいに互いに電力を供給できるようにしていた。また、2007年の新潟・中越沖地震の教訓にもとづき、免震建屋のなかにガスタービン発電機を備えた独立電源設備が建造されていた。
しかしながら、津波による冠水が現場の電源を破壊したあと、これら緊急時システムの多くが作動しなくなり、運転員らには、機能不全の装置が残されただけであり、監視技術も機能しなかった。「交流および直流の全電源の喪失に備えた対策がなく」、施設の運転員らは「このような状況下で、現場全電源喪失に対処する方策に関して、具体的な指示を持ちあわせてはいなかった」と報告はいう。
1000ページを超える技術書と併せて発行される報告は、42か国の核専門家180名によってまとめられた。報告は9月中旬に開催されるIAEAの次回年次総会に提出される。
【資料】
【PEi記事】
2015年4月21日火曜日
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